「リフレーミング」の考え方を歌詞に込めて作った曲が『I will』です。YouTube「歌に学ぶ心理学」にアップしています。『I will』の歌詞に込めた心理学における「リフレーミング」について解説していきます。
歌『I will』を聴いてみたい、「リフレーミング」の解説を文で読むのではなく動画で見たい方は、YouTubeでご覧ください。
目次
リフレーミングとは
リフレーミング(Reframing)とは、自分の経験した出来事や状況、そこから生まれる思考や感情の「枠組み」つまり「フレーム」を、意図的に変えることで、それまでの自分とは異なるとらえ方や新しい意味を見い出していくこと。

ストレスや悩み、不安感や緊張感を軽くする技法として、「リフレーミング」は活用されています。上の文で「フレーム」のことを「思考や感情の枠組み」と書きました。心理学の概念でいうと「認知の枠組み」です。
人は、誰しも、日頃から意識的・無意識的に、「自分なりの見方」や「その人ならではの価値観」を通して、現実を認識しています。この「自分なりの見方」や「その人ならではの価値観」が、心理学でいう「認知の枠組み」であり、「フレーム」のことです。
例えば、半分の水の入ったコップがテーブルに置かれていたとします。ここにある日、喉のかわいたAさんがやってきます。Aさんは、コップを見るなり、「なんだ、コップに半分しか水が入ってなのか」と呟き、不機嫌になって、コップの水を飲み干します。その顔はとても不満足そうです。

次の日、まったく同じ状況で、Bさんがやってきます。半分の水の入ったコップを見るなり、Bさんは、「おっ!ラッキー、コップに半分も水が入っているよ」と、とても嬉しそうに水を飲みました。その顔は笑みがこぼれていて、とても満足そうです。
AさんにとってもBさんにとっても、「半分の水の入ったコップ」という状況はまったく同じです。

まったく同じ状況なのに、Aさんは不満足で、Bさんは満足しています。なぜ、そうなるのでしょうか?おわかりかと思います。なぜならば、ふたりの「認知の枠組み」、つまり「フレーム」が違うからですね。
リフレーミングの「Re」とは、「再び」を意味する「前置詞」です。自分の持っている「フレーム」を、再び柔軟に変化させることで、問題の解決や前向きな行動変容を促していくのが「リフレーミング」です。
『I will』の歌詞とリフレーミング
今回、聴いていただいた「I will」の歌詞の中で、どこが「リフレーミング」でしょうか?それは、サビの部分です。
These difficult days are pushing me forward.
この辛い日々が、私の背中を押してくれている
These sad days are nurturing my heart.
この悲しい日々が、私の心を育ててくれている
辛い日々は、人を苦しめます。「だからもう嫌だ」とネガティブにとらえるのは、人として、とても自然なことです。誰だってそうですね。すると、辛い日々=ネガティブな出来事と、とらえがちです。
では、その「辛い日々」をリフレーミングすると、どうなるでしょう。
辛い日々だからこそ、その日々から抜け出そうと、何か努力していることがないでしょうか。もし、努力していることが何かあれば、結果的に、辛い日々が、その人の背中を押していた、とポジティブにとらえ直すができます。
辛い日々は、人を成長させる日々でもあります。

同じように、悲しい日々は、ただ悲しくて、ただ嫌な運命だけではありません。自分が悲しみを知るから、他人の悲しみもわかるようになります。悲しみの日々は、人としてひとまわり大きくなれる可能性を秘めた日々でもあります。
その結果、それまで以上に人にも優しくなれる人間になれるでしょう。それは心が育まれたことを意味します。
「生きづらさ」という感覚は、本当に辛いものであり、人を苦しめます。
ただ、もし、「生きづらさ」を背負ったある人が、自分と同じようにひとりで「生きづらさ」に苦しんでいる人を、少しでも助けたいと思って、何かを始めたなら、その「生きづらさ」が、その人の背中を押したことになったと、いえます。
実際、わたしはそうした人を知っています。
リフレーミングのメリット・デメリット
もちろん、ここまでお話しは、ひとつの理論であり、とても教科書的なお話しです。「実際には、そんなにうまくいかないよ」と思っても、まったく無理はないかと思います。
なぜなら、リフレーミングをしたからといって、その場で、悩みがすぐに消えるわけではありませんし、自分を苦しめる問題が、たちまち解決されるわけでもないからです。
頭ではわかるけど、心がついていかない。
そんな感想のもれるのがリフレーミングの考え方です。
ただ、もし、自分の意志で、意識的に、日々、取り組んでいただけたなら、これまでの人生でつくりあげられた「心の癖」に、何らかの変化をもたらすことになるでしょう。
時間はかかるかもしれませんが、粘り強く取り組むことで、効果を確かに感じられるのが、リフレーミングのメリットです。
今回の歌のタイトルは「I will」でした。わたしはどうしたいのか、「わたしの意志」が、リフレーミングには欠かせません。
リフレーミング まとめ
リフレーミングは、物事の捉え方や見方を柔軟にすることで、人生に新たな可能性や希望をもたらす心理学的な技法です。
悩みに直面したとき、視点を変え新しいフレームで現実を捉える練習を重ねることで、より豊かで前向きな生き方が実現できます。自分で考え出した「ひとつの答えだけ」にこだわることなく、多様な視点つまり、いろいろな見方、価値観を受け入れる「心の姿勢」が、リフレーミングの真の力と言えます。
ここまでのお話で、もし、何か感じるものがあったのなら、日々の生活の中に、「リフレーミング」の考え方を取り入れてみてください。
(文:松山 淳)
ユングのタイプ論をベースに開発された性格検査MBTI®を活用した自己分析セッション
《MBTI受講者実績:2,141名》
国際的性格検査MBTI®を使用しての自己分析セッションです。MBTI®は、世界三大心理学者のひとりC.Gユングの理論がベースになっており、世界の企業が人材育成のために導入しています。その人の「生まれ持った性格」を浮きぼりにするのが特徴です。自分本来の「強み」を知ることができ、心理学の理論をもとに自己理解を深めることができます。

自己分析の個人セッションには「対面型」と「オンライン型」(Zoom)があります。