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タイプ論 8つのタイプついて(ユング心理学)

タイプ論 8つのタイプについて

 ユングは20年にわたる臨床経験と研究からタイプ論(心理学的類型論)を生み出した。1921年、スイスで出版された『心理学的類型(Psychplogical Types)』に詳しく書かれてある。ユングのタイプ論では、「一般的態度」(外向・内向)「心理機能」(感覚・直観・思考・感情)を組み合わせて、8つのタイプとなる。

 8つのタイプは、「外向思考」「外向感情」「外向感覚」「外向直感」「内向思考」「内向感情」「内向感覚」「内向直感」である。

一般的態度
外向内向
心理機能感覚外向感覚内向感覚
直観外向直観内向直観
思考外向思考内向思考
感情外向感情内向感情

 「一般的態度」(外向・内向)「心理機能」(感覚・直観・思考・感情)が、どのような「心のメカニズム」なのかについては、「タイプ論 外向/内向 感覚/直観 思考/感情について」にまとめた。

 本稿では主に「8つのタイプ」の特徴について述べていく。その際、参考文献から文を選択し、箇条書きをしていく。参考文献は次の通りである。(以下、敬称略)

【参考文献】
『タイプ論』(訳 林義道 みすず書房)
『ユング心理学概説4 個性化の過程』(C.Aマイヤー 創元社)
『ユングのタイプ論―フォン・フランツによる劣等機能/ヒルマンによる感情機能』(F.フランツ、J.ヒルマン 創元社)
『ユング心理学入門』(河合隼雄 培風館)
『心のしくみを探る―ユング心理学入門〈2〉 』(林義道 PHP 電子書籍)

 まず、タイプ分類のキーとなる「主要機能」(優越機能)「劣等機能」について説明し、その後に、「8つのタイプ」の特徴について述べていく。「8つのタイプ」は、❶「外向思考」→❷「外向感情」❸「外向感覚」❹「外向直感」❺「内向思考」❻「内向感情」❼「内向感覚」❽「内向直感」の順で説明していく。

主要機能と劣等機能とは

 「8つのタイプ」の説明に入る前に、「主要機能」(優越機能)「劣等機能」について述べていきます。この2つの機能の定義があって「8つのタイプ」が生まれてきます。

 ユングは、「主要機能」(優越機能)に関連して、こう書いています。

『タイプ論』(みすず書房)
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ユングの言葉

優越機能が最も意識化され、意識の制御や意識的な意図に従っているのに対して、未分化な機能はどれもあまり意識的でなく、その一部は無意識的であり、意識の自由になることがほとんどない。優越機能がつねに意識的な人格を表しその意図・その意志・その行為・を反映するのに対して、未分化な機能はその人にとって降ってわいたように現れるのである」

『タイプ論』(訳 林義道 みすず書房)p366

 例えば、「外向」が「内向」よりも優越しているタイプは「外向タイプ」です。「外向タイプ」の人も、もちろん「内向」することがあります。そこで「外向タイプ」は、「外向」が「内向」よりも意識化されていて、「内向」の働きが「外向」に比べたら「未分化」になっているのだ、と考えます。

タイプとは「分化」「意識化」の結果

まっつん
まっつん

 「分化」とは生物学でよく使われる用語ですが、ここでは「心の要素が無意識から区別されて意識化され発達していく過程とその程度」を意味します。

 赤ちゃんの心は「無意識」の状態です。成長するにつれて「無意識」から「意識」「分化」してきて「自我」が生み出されてきます。「自我」が生まれることで、「私」(自分)という存在を意識できるようになります。「ものごころがついた」といわれる状態ですね。

赤ちゃんのイメージ写真

 ですので、赤ちゃんの時は、「意識が完全に未分化になっている」と表現できますね。「未分化」とは、意識化がされておらず発達していない状態と、その程度のことです。

 ユングのタイプ論(心理学的類型論)では、2つの「一般的態度」(外向↔︎内向)と4つの「心の機能」(思考↔︎感情・感覚↔︎直観)を組み合わせて「8つのタイプ」が生み出されてきます。 

 2つの「心的態度」(外向↔︎内向)のうちどちらかが、4つの「心の機能」(思考↔︎感情・感覚↔︎直観)のうちいずれかが、優越して分化し発達し、その人の「タイプ」をつくりあげていきます。それぞれのタイプが生まれるのは、「分化」「意識化」の結果だといえます。

まっつん
まっつん

 タイプがつくられていく時、最も、優越して分化(意識化)され発達していくのが「主要機能」(優越機能)となります。反対に、最も未分化のままになっているのが「劣等機能」です。

 そこで、「優越機能」「劣等機能」は次のように定義できます。

主要(優越)機能とは、そのタイプで最も分化(意識化)されている機能のこと。
劣等機能とは、そのタイプで最も未分化の(意識化されていない)機能のこと。

 ユングは、劣等機能を定義する箇所で「心の発達」とからめて、こう書いています。

ユング画像
心理学者C.Gユング
(Carl Gustav Jung)
ユングの言葉

「私は劣等機能を分化過程において取り残された機能と理解する。すなわち経験によると、自らの心的機能を同時にすべて発達させることは、ーすべての条件が整うものではないのでーほとんど不可能である。人間は生まれつき最も得意とする機能、あるいは自らが社会的に成功するために最も有効な手段となるような機能をまっさきに一番よく発達させることを余儀なくさせられる」

『タイプ論』(訳 林義道 みすず書房)p484-485

主要機能と劣等機能の関係図

 下の図は、「4つの心理機能」で、主要機能(優越機能)劣等機能を表した図です。円の上の領域が「意識」の領域で、下に行けばいくほど「無意識」の領域となります。「意識」の領域に近いものほど、分化され意識化されていて、無意識の領域にあるものは未分化の状態と考えます。

主要機能と劣等機能のイメージ図
『ユング心理学入門』(河合隼雄 培風館)
P59掲載「図3」を参考に作成

 上の図の例だと、「直観機能」が主要機能(優越機能)となっている「直観タイプ」ですね。8つのタイプの枠組みで考えると、これに「外向」「内向」のどちらかが組み合わさりますので、「外向直観タイプ」か「内向直観タイプ」ともいえます。

 4つの心理機能は、次の通り「対」になって分類されています。

〈4つの心理機能〉
 :感覚↔︎直観(知覚機能/非合理機能)
 :思考↔︎感情(判断機能/合理機能)

 感覚と直観は「知覚機能」で対なり、思考と感情は「判断機能」で対になります。

 図の例だと「直観」が「主要機能」(優越機能)になっていますので、「劣等機能」は、その対となる「感覚」になります。もし、「思考」が「主要機能」(優越機能)」になるなら「感情」が「劣等機能」になります。これがタイプ論のルールです。

全てが同時に発達することはない

 ユングが「心的機能を同時にすべて発達させることはほとんど不可能である」と書く通り、全ての心理機能が同時に発達することではありません。何らかの事情がなければ、優越機能から先に分化され発達していきます。そう考えるのが、ユングのタイプ論です。

まっつん
まっつん

 また「人間は生まれつき最も得意とする機能」とありますので、優越機能がどれになるかは、生まれつき決まっているとユングは考えています。

 ただその後に、「社会的に成功するために最も有効な手段となるような機能をまっさきに一番よく発達させる」と書いています。つまり、生まれた後の環境によって、優越機能より他の機能が先に、分化・意識化されていく可能性があるということです。

 例えば、「外向タイプ」の両親のもとに生まれた「内向タイプ」の子が、幼い頃から「内向」することを否定され、両親から外向することを過度に求めらるような場合です。このケースだと、「内向タイプ」のこの子は、両親との関係を成功させるために最も有効な手段が、つまり親から叱られず傷つけられないための手段が、「内向」より「外向」になるので、「外向」をまっさきに一番よく発達させる可能性があるというわけです。

 この例のように、「生まれた後の生育環境がどのようであるか」も影響しますし、2つの「一般的態度」(外向↔︎内向)と4つの「心の機能」(思考↔︎感情・感覚↔︎直観)は、相互作用しながら性格タイプは形にづくられていきますので、実際は、とても複雑なものになるのです。

タイプ論とは人間理解のための「心の羅針盤」

 本に書かれた「タイプの特徴」は、あくまでも、典型的な例のひとつに過ぎませんので、タイプの知識で「人を決めつけない」ことが大切です。

 あのユングでも「ある人がどのタイプに入っているのかを明らかにすることはしばしばきわめてむずかしく、それが自分自身のことになるととくにむずかしいのである」(『タイプ論』みすず書房p10)といっているほどです。

まっつん
まっつん

 例えば、同じタイプの人が10人、集まったとします。その時「本当に同じタイプですか?」といいたくなるほど、自分とは違うタイプに見えることが、実際にはあるわけです。

 ユングのタイプ論の知識は、自己理解し他者理解し、人間を理解するための「心の羅針盤」です。性格を理解するための指針として活用するものであって、人の性格を「決めつける」ための知識ではないことを、忘れないでおきましょう。

 ユングは「彼らが求めている真理は、彼らの視野を狭くするものではなく広くするような真理、暗くするのではなく明るくするような真理です」(『黄金の華の秘密』人文書院)といっています。人のタイプを「決めつける」ことは、人の視野を狭め、暗くする考え方です。その点に関しては、「タイプ論の目的と経緯」に書きましたので、参考になさってください。

 さて、「優越機能」と「劣等機能」のパートは、これぐらいにしまして、では次に、「8つのタイプ」の特徴について、述べていきます。

「8つのタイプ」について

 ここから冒頭にあげた参考文献から、8つのタイプに関する記述をご紹介していきます。最後に引用した文からキーワードをピックアップします。参考文献は次のものです。(以下、敬称略)

【参考文献】
(ユング)は、『タイプ論』(訳 林義道 みすず書房)から。
(マイヤー)は、『ユング心理学概説4 個性化の過程』(C.Aマイヤー 創元社)から。
(フランツ)は、『ユングのタイプ論―フォン・フランツによる劣等機能/ヒルマンによる感情機能』(F.フランツ、J.ヒルマン 創元社)から。
(河合)は、『ユング心理学入門』(河合隼雄 培風館)から。
(林)は、『心のしくみを探る―ユング心理学入門〈2〉 』(林義道 PHP 電子書籍)から。

 C.Aマイヤーは、ユングが最も信頼していたといわれるユング研究所の初代所長です。
 フランツ(マリー=ルイズ・フォン・フランツ)は、ユングと30年以上、共に研究を重ねた女性です。
 河合隼雄は、日本におけるユング心理学の第一人者です。
 林義道は、ユング研究家であり数多くのユングの著書を翻訳しています。『タイプ論』(みすず書房)も林による翻訳です。

 

まっつん
まっつん

 ここから書いてあることは、ユングあるいはユング心理学に精通した専門家たちが数多くの言葉を費やした詳細な説明の「一部分」に過ぎません。詳しくは上の参考文献にあたってください。

 タイプ論の知識で「タイプを決めつける」ことはせず、人間理解を深め、建設的な人間関係を育くむための「心の羅針盤」としてご活用していきましょう。

 では、❶「外向思考」→❷「外向感情」❸「外向感覚」❹「外向直感」❺「内向思考」❻「内向感情」❼「内向感覚」❽「内向直感」の順番で書いていきます。

❶外向思考タイプ

「外向的な思考は純粋に具象的な事実に則った思考である必要はまったくなく、純粋な理念に則った思考であっても、理念を用いて思考するさいに外から借りてきた度合いが強いことが、すなわち伝統・教育・学歴によって伝達されたものであることが証明されさえすれば、それも外向的思考である」(ユング p367-368)

「古典的な外向的思考タイプにとっては、すべてが知的な判断にかかっている。その際彼は、外的対象から導き出された公式ないし原理に従っている。この原理があらゆる事柄を結びつけ、ついには一つの法則にまで至る。しかしそこで、それは誰ににとってもあてはまるものとして説明される」(マイヤー p35)

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「外向的思考タイプは、明確な立場を打ち出したり、こう言い切ることで秩序を確立する。「私が言うことは、言葉通りの意味であり言外の意味はない」。彼らは、明確な秩序を外的状況に持ち込む。商談の場では「基礎的な真実を突き止めてから、どうやって取りかかるかを考えねばならない」などと述べる」(フランツ p69-70)

「外向的思考型のひとは、自分の生活を知性の与える結論に従わせようと努めている。そして、その考えの方向づけは客観的な事実によってなされる。このようなひとが内的なこと、哲学や宗教を問題にしているときも、結局は周囲のひとびとの考えを基にしたり、取り入れたりしている場合が多い」(河合 p50)

「こういう人はたいてい公式をもっている。その公式は自分が作ったものではなく、外から来た公式である。(中略)これは外向的思考型の思考様式で、外から与えられた公式をそのまま信じていて、世の中はその通りになると思っている」(林)

公式が十分な幅をもったものである場合には、このタイプは改革者として、すなわち不正を公然と糾弾し人々の良心を洗い浄る者とか、重大な変革を訴えるものとして、社会生活にきわめて有益な役割を演じる」(ユング p373)

【外向思考タイプのキーワード】
知的な判断、公式、原理、法則、秩序、知性、客観的な事実、公式、外から来た、外から与えられた、改革者、変革

❷外向感情タイプ

「たとえば私(※外向感情タイプの人)が「美しい」とか「よい」といった述語を用いなければと感じる場合、それは私(※外向感情タイプの人)主観的な感情からその客体を「美しい」とか「よい」と思うからではなく、「美しい」とか「よい」と言う方がその場にふさわしいからであり、しかもこのその場にふさわしいとは、反対の判断を下すと皆の感情の場を何らかの形で乱すことなるという意味である」(ユング p381-382 ※外向感情タイプの人は追記)

「この人たちの集合的に正しい諸価値は、ちょうど快適な雰囲気を作り出す。同じ理由から、彼らはいつも快活で人をひきつけ親切であり、調和のとれた社交性を生み出す」(マイヤー p37)

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「外向的感情タイプの特徴は、主として外界の客体を評価したり、それと適切な関係を結んだりすることで適応していく点にある。それゆえ、このタイプはたやすく友達を作り、人への思い込みもほとんどない。友人の肯定的・否定的側面を的確に評価することもできる」(フランツ p78)

「外向的感情型のひとは、自分の気持ちに従ってそのまま生きているが、それは環境の要求するところと非常に一致しているので、スームスに行動してゆくことができる。ともかく、皆が「よい」と思い「すばらしい」と思うことは、このひとにとってもそうなのである」(河合 p52)

「外向感情型の人というのは、感情の持ち方やエネルギーが外に向いている。「みんなと仲良くしよう」「みんなに気に入られよう」と、まわりのみんなに合わせるのである。みんなが「今日はいい天気ね。すがすがしいね」と言うと、「まあ、ほんとにすばらしい、いい天気ね」と言う。そして、みんな気持ちを巧みにリードしていって、「今日はいい天気ですね。だからハイキングに行きましょうよ」というふうに、気持ちよくまわりに働きかけるのである」(林)

【外向感情タイプのキーワード】
主観的感情、その場にふさわしい、皆の感情、快適な雰囲気、調和、適切な関係、環境おん要求、皆が「よい」、みんなに合わせる、気持ちを巧みにリード、気持ちよくまわりに働きかける

❸外向感覚タイプ

「彼の動機はつねに、客体を感じとろう感覚を得よう、そしてできれば享楽を得ようというのである。彼はけっして無愛想な人間ではなく、反対に彼はしばしば人に好感を与える生き生きとした享楽能力を持っており、陽気な仲間であったり、品のよい趣味人であったりする」(ユング p392)

「外向感覚タイプは、いつも明日に対して今日を守ることになる。しかし明日が来れば、再び新しい明日に対抗する。当然のこととして、くり返しつねに与えられた新しい状況に合わせるのである。その際、問題性は自動的に消滅する」(マイヤー p30)

「外向的感覚タイプは、才能や得意とする機能が感覚に向き、外界の客体と具体的・実際的に関わるといった人である。こういった人は、何一つ見逃すことなく、あらゆるものに嗅覚を働かせており、入るなり部屋に何人いるのかを見て取る。何某夫人はそこにいて、どんな服を着ていたか、後々まで覚えていたりする」(フランツ p43)

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「外向的感覚型のひとは、まさにリアリストそのものである。客観的事実を、事実そのままに受け取って、その経験を集積してゆく。これに思考や感情の助けがあまり加わらぬときは、このひとは気楽な、そのとその場の現実の享受者となる」(河合 p54)

「「外向的感覚型」というのは、外からの刺激をそのまま受け取るタイプである。外からの刺激というのは、たとば見たものをそのまま受け取って、記憶にとどめる。また食べ物を口にしたとき、「これはどんな味だな」というのを感じ取るのである」(林)

【外向感覚タイプのキーワード】
客体を感じとろう感覚を得よう享楽を得よう、新しい状況に合わせる、外界の客体と具体的・実際的に関わるリアリスト、事実そのままに受け取って、経験を集積、外からの刺激をそのまま受け取る

❹外向直観タイプ

「直観型の人が向かうのは、皆に認められるうような現実価値を見つけられる方角ではけっしてなく、つねに、可能性が依存する方角である。(中略)彼(※外向直観タイプ)はつねに新しい可能性を追い求めているため、安定した状況の中では息がつまりそうに思えるのである。彼はたしかに新しい対象や方法を手に入れるときは懸命に、時には異常なほど熱狂することもあるが、いったんその広がりが確定してもはやそれ以上の著しい発展が望まれないとなると、たちまち愛着をなくし、見たこともないようなふりをして冷たく見捨ててしまう」(ユング p392 ※外向直観タイプは追記)

「外向的直観人は、萌芽的なものや将来の見込みに対して見事なを働かせる。純粋に静的なものやただの存在は、彼らをほとんど窒息させてしまう」(マイヤー p39)

「直観は、事態の背景に潜んでいる、未だ目には見えない未来の可能性なり将来性なりを直観する能力なのだ。外向的直観タイプは、この能力を外界に応用するため、身近な外界がこの先どう移ろってゆくかを推測する能力に抜きん出ている」(フランツ p56)

『ユングのタイプ論』(著者 フォンフランツ 創元社)
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「外向的直観型のひとは、外的な物に対して、すべてのひとが認めている現実の価値ではなく、可能性を求めて行動する。(中略)この直観が思考や感情による判断によって補助されていないときは、この型のひとは、種はまくが、収穫を得られないひとになる危険性が高い」(河合 p56)

「「外向的直観型」というのは、外的なことがらについて、将来のことや物事の本質が見えてしまう人のことをいう。こういう人は、「これから世の中はどういうふうに動いていくだろうか」「何が値上がりするだろうか」「どんな商品が売れるだろうか」というのがパッと分かってしまう」(林)

【外向直観タイプのキーワード】
新しい可能性、新しい対象や方法、将来の見込み、勘、未来の可能性、未来の可能性、この先どう移ろってゆくかを推測する、可能性を求めて行動する、種はまくが収穫を得られない、将来のことや物事の本質

❺内向思考タイプ

「この思考は主体の中で始まり主体に戻るのである。したがってこの思考は新しい事実を提示するという点では主として間接的な価値かしかもっていない、とういうのはこれ(※内向思考)がまず第一に伝えるのは新しい見解であって、新しい事実に関する情報はほとんど伝えないからである。これは問題提起や理論を生み出し、展望や洞察を開くが、しかし事実に対しては冷淡な態度を示す」(ユング p392 ※内向思考は追記

「内向的思考人は、新しい事実というよりは、新しい見方を生み出す。事実はせいぜいのところ、説明として利用されるにすぎない。(中略)あらゆる場合に彼は本質を主張し、ことばにすることを好まない。」(マイヤー p48)

「内向的思考型の生活は、観念に支配されており、その際この観念は、(中略)「主体要因」から生じている、といってよい。しかし外向的な人とは逆に、この観念は応用されることがなく、他人とかかわったり気に入られようとすることもない。」(マイヤー p49)

「内向的思考型のひとは、新しい「事実」についての知識よりは、新しい「見解」を見出すことを得意とする。(中略)この種の人の思考の深さ、ときにまったく独創的な体系として輝きを発するが、また、ひとによってはまったく伝達不能のひとりよがりに堕してしまうこともある」(河合 p51)

「「内向的思考型」だが、これは心の中に基準を持っていて、理想や理念、あるいは道徳律という形をとっている。自分の中に基準があるから、それに従って自分の行動をいろいろと律したり、学問を導き出したりするのである。その典型例がカントである。カントは、「自分の心の中にある道徳律、これこそがいちばんすばらしいんだ。これは神の与えてくれたものであって、これに従っていればいいんだ」と、とても分かりやすい言葉を残している。」(林)

【内向思考タイプのキーワード】
思考は主体の中で始まり主体に戻る、新しい見解、問題提起や理論、展望や洞察、新しい見方、本質、観念、思考の深さ、独創的な体系、ひとりよがり、心の中に基準、理想や理念

❻内向感情タイプ

「真の動機はほとんどの場合隠されたままとなる。外に対しては協調的な控え目な態度好ましい落ち着いた物腰共感的に相手に合わせる態度・を示し、他人にあれこれ命令や影響を与えたり、他人に働きかけて変えようとするところがまったくない。こうした外見が際立ってくると、無関心で冷たいという軽い疑いをかけられてしまい、さらにこの疑いはひととの幸不幸などどうでもよいと思っているのではというところまで増幅することもある」(ユング p419)

「あらゆる熱狂に対しても好意的中立の態度をとる。彼らは激情を卑しむ「静かな水」である。(中略)彼の感情は拡張的でなく集中的である。人知れず親切で親しみ深く、そのために目立たないままでいる。この型には個人的な献身を伴う善行者が含まれる。」(マイヤー p30)

「彼らには高度に分化した価値尺度があるが、それを表に出すことはない。自分の内部で影響を受けているのである。内向的感情タイプの活躍の場となるのは、表舞台ではないものの「これこそ本物だ」と、彼らの内向的感情が声を上げるような、意義深く重要な出来事が生じているところである。(中略)価値基準を定めることで一般にポジティブな影響を周囲に及ぼす」(フランツ p43)

「内向的感情型の人は「静かな水は深い」という言葉がいちばんぴったりであると、ユングはいう。外から見ると控え目で、不親切、無感動のように見られるひとが、深い同情や、細やかな感情をもっていることがわかり、ひとを驚かすときがある。 (中略)もし自分の感情を表現し、伝えられるグループがあると、そのなかでは暖かい親切なひととして、不変の友情を楽しむことができる」(河合 p53)

「「他人と対立することを恐れて、無感情を装っている」のが特徴で、近寄りがたく、不可解で、冷たいという印象を与えてしまうことも多い。表情をなるべく出さないようにしているから、あまり笑ったり怒ったりしない。まわりの人には「この人、何を考えているんだろう。何を感じて生きているんだろう」と思われることもあるが、深く付き合ってみると、すばらしい感情生活をもっていたり、深く感ずる能力をもっていたり、人の感情をよく理解していたりする。」(林)

【内向思考タイプのキーワード】
 協調的な控え目な態度、共感的に相手に合わせる態度、ポジティブな影響を周囲に及ぼす、「静かな水は深い」、外から見ると控え目で不親切無感動のよう、暖かい親切なひと、他人と対立することを恐れ、深く感ずる能力、人の感情をよく理解

❼内向感覚タイプ

「内向的感覚とは物質界の表面よりはむしろその背景を捉えるものである。これが決定的なものとして感じ取るのは客体の現実ではなく主観的要因の現実、すなわちその全体をもって鏡のように心を映し出してくれる根源的なイメージである」(ユング p392)

「内向的感覚タイプでは、外的対象に代わって主体的な感覚が関与する(主体要因)。こうして主体は、客体において自分自身を経験する。彼にとって、すべての力点がこの主体的反応におかれる。(中略)同じ対象をまったく違う芸術家、たとえば印象派、表現派、シュールレアリストに描かせれば、この事情をいっそう具合的に理解することができる」(マイヤー p43-44)

「内向的感覚タイプは、あたかも高感度の写真感光紙のようなものであるということだった。誰かが部屋に入るとすると、内向的感覚タイプは、入る様子や、髪型や顔の表情、服装や歩く所作に注意が行き届くのだ。こうした諸々は、内向的感覚タイプに正確無比に記銘される。どんな些細なことも取り入れられるのだ。印象は客体から主体に向かう。」(フランツ p52)

「皆が美しい花畑と見るものが、このひとには恐ろしい燃え上がる火に見え、小さい一つの目の中に、広い海の深淵をのぞいたりする。そして、これらのひとは、その見たものを適切に表現することがむずかしいので、そのままにしておいて、一般には他人に従って生きている場合が多い」(河合 p54)

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「内向的感覚型というのは、外から刺激を受けると、それを自分の中で勝手に作り替えるという特徴がある。たとえば背の高いビルがあれば、それを自分の中のイメージに合わせて作り替えて、「巨大な怪人が立っている」というふうに見てしまう。」(林)

【内向感覚タイプのキーワード】
 主観的要因の現実、主体的な感覚が関与、正確無比に記銘、些細なことも取り入れられる自分の中で勝手に作り替える

❼内向直観タイプ

「内向的な構えにおける直観は、無意識の諸要素と呼んでもよいような、内的客体に向けられている。すわなちこの内的客体は、たしかに物質的な現実ではなく心的な現実であるが、意識に対して外的客体とまったく同じような関係をもっているのである。内的客体は直観的知覚に対して事物の主観的イメージの形で現れるが、この主観的イメージは外的経験の中に見出されるものではなく、無意識の・結局は集合的無意識の・内容をなしている」(ユング p430)

「彼らは薄明の高みに住んで、将来の心像を予見している。その際彼らは、現実や伝統を容赦なく無視することができる。しばしば彼らは革命家、改革者、指導者である」(マイヤー p57)

「内向的直観タイプは、外向的直観タイプと同じく、未来を嗅ぎわけたり、まだ見ぬ未来の可能性をずばりと言い当てたり、虫の知らせを感じることができたりする。(中略)内向直観タイプは、集合的無意識でじわじわ進行している過程や、元型的に変化していることに気づきを得て、社会に伝達するとでも言えようか」(フランツ p61)

「自分の内界のなかに可能性を求めて、心像の世界を歩きまわっているひと」(河合 p54)

「内面のイメージがインスピレーションのように」(林)

「この種の人間は、豊かで活気に満ちた世界やそこからあふれ出て人をうっとりさせるような生気が、外界だけでなく内面にも存在するという事実の、生き証人である。(中略)こうした構えをもった人間はそれなりに文化の促進者であり、教育者である。彼らは自らの生き方を通して、口で語る以上のことを教えてくれる」(ユング p436)

【内向感覚タイプのキーワード】
 直観は、無意識の諸要素、心的な現実主観的イメージ将来の心像を予見現実や伝統を無視、未来の可能性虫の知らせ内界のなかに可能性を求めてインスピレーション口で語る以上のことを教えてくれる

最後に…。

 ユングは『タイプ論』(訳 林義道 みすず書房)の中で、8タイプの説明を終えた箇所で、「私は以上の説明によって、これらのタイプが《実際に》このままの純粋な形でしばしば姿を現すかのような印象を与えることがけっしてないようにと願っている」(p735)と書いています。また、説明してきた内容は「極端に際立たせて」(p735)ともいっています。

 つまり、「現実には、タイプの説明が当てはまることもあるかもしれなけれど、必ずしも、そうではない」ということです。それはそうですよね。 「一般的態度」(外向・内向)「心理機能」(感覚・直観・思考・感情)を、私たちは全部もっていて、それらが複雑にからみいながら、人の性格タイプはつくりあげていくわけですから…。

 人の性格は、とても複雑で豊かなものです。

まっつん
まっつん

 タイプの説明が「正しい、間違っている」「あっている、あっていない」「当てはまる、当てはまらない」といった「診断」すための知識としてではなく、互いを理解し尊重するための「心の羅針盤」として活用していきたいものですね。

 ユングの論は、今から100年近く前のものです。性格タイプに関する研究も進んでいます。いろいろな観点がありますので、ここで述べたことをきっかけに、人間理解の視野を広げていきましょう。

よりよい人間関係のイメージ・イラスト

 それでは最後に『タイプ論』でユングが意図したことの書かれた箇所を紹介して、本稿を終えます。

「この基礎的な著書において著者(ユング)意図しているのは、心の構造や機能のあり方には一定の諸タイプがあることを明らかにし、それによって自分自身のためにも仲間のためにも人間理解を深めることである」

『タイプ論』(訳 林義道 みすず書房)p6
※(ユング)は加筆

【参考文献】
『タイプ論』(訳 林義道 みすず書房)
『ユング心理学概説4 個性化の過程』(C.Aマイヤー 創元社)
『ユングのタイプ論―フォン・フランツによる劣等機能/ヒルマンによる感情機能』(F.フランツ、J.ヒルマン 創元社)
『ユング心理学入門』(河合隼雄 培風館)
『心のしくみを探る―ユング心理学入門〈2〉 』(林義道 PHP 電子書籍)

 

(文:松山 淳


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