10/7 セミナー「逆境を乗り越える力を高めるフランクル心理学 7つの教え」

インテグラル理論 by ケン・ウィルバー

コラム129イングラル理論byケン・ウィルバー

 「インテグラル理論」とは、この世界に生じる現象の全てを包含し統合しようとする理論である。「四象限」(four quadrants)のフレームワークを活用し、「発達」のレベルを組み合わせ考察することで、人・組織・社会に関する知を統合し「万物の理論」(theory of everything)の創出を試みようとする。

 提唱者は、ケン・ウィルバー(Ken Wilber)。トランスパーソナル心理学者であり文明思想家である。広範な知を統合してきた業績から「意識研究のアインシュタイン」と呼ばれる。

 ウィルバーは、1949年、オクラホマ州に生を受け、1968年デューク大学の医学部に進学しています。そこで老子の思想に出会い、同大学を退学した後、ネブラスカ大学に入学し哲学に傾倒していく。

 ウィルバーは、「霊性」「魂」「覚醒」といった宗教的な超越した意識状態を考察対象とするため、日本で彼の思想を語るのは、一部の人間に限られていた。しかし、時代が彼の思想に追いついた。インテグラル理論をバックボーンとする『ティール組織』(フレデリック・ラルー 英知出版 初版2018年)が、世界でベストセラーになると、日本でケン・ウィルバーの思想が注目されるようになった。

 本コラムでは、「インテグラル理論」の中核概念である「発達」「四象限」に的を絞って解説する。 

 参考文献は、2019年に新訳で改訂出版された『インテグラル理論』(ケン・ウィルバー 監訳:加藤洋平 訳:門林奨 JMA-日本能率協会マネジメントセンター)である。

まっつん
まっつん

 コロナウイルスで大変な時です。本コラムの「転載・引用」に許可はいりません。お役に立ちそうであれば、どうぞ自由に使ってください。みんなで力をあわせて、乗り越えていきましょう!

インテグラル理論の目標

 インテグラル(integral)とは、「統合された」「完全な」を意味する形容詞です。「インテグラル理論」(integral theory)を直訳すれば「統合された(完全な)理論」となります。

 日本で出版された『インテグラル理論』の原題は『A THEORY OF EVERYTHIG』です。2000年にアメリカで出版されました。日本語で「万物の理論」。この世界に生じる全ての現象を包みこんで説明できるように「統合」するのが「万物の理論」です。


『インテグラル理論』(JMA)
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 それにしても、知を統合し「万物の理論」を創るとは、大胆です。「統合」という言葉は、とても大事ですので、ここでウイルバーの定義をおさえておきましょう。

統合とは何か?

 ウィルバーは、統合について、こう書いています。

「統合的という単語は、統合すること、ひとつにまとめること、一緒にすること、結びつけること、包みこむことを意味している。」(p36)

 つまり、インテグラル理論の目標とは、世界に存在するさまざまな知識を調べ上げ、それらを並べて比べて、「ひとつにまとめること」です。また、その理論を通して、現実の世界をも、実際にまとめていこうとするのです。

 「統合的ヴィジョン」──あるいは、本物の「万物の理論」とは、物質、身体、心、魂、スピリットの全てを、自己、文化、自然の全ての領域において包含しようとする試みである。

『インテグラル理論(ケン・ウィルバー JMA)p29

 上の文章でウイルバーは、「全ての領域を包含する」と書いていますが、実際、そんなことが可能なのでしょうか。あなたが、これを読んでいる、「今、この瞬間」にも、次から次に膨大な知識が生まれ、学会で発表されたり、ネットに書き込まれていたりします。その全てを、ひとつにまとめる(統合する)のは、不可能ではないでしょうか。

 そうです。実際には不可能です。ケン・ウイルバーも「そもそもこうした試みそのものが、本質的に、実行不可能な事柄なのだ」(p29)と認めています。では、彼は何に重きを置いているのでしょう。

 大切なポイントは「統合しようとすること」です。

 では、なぜ統合することが大切なのでしょうか?

なぜ統合することが大切なのか?

 ここで「統合」という言葉を、もっと身近な例で考えてみます。

 統合とは、「ひとつにまとめること」でした。では、学校でもいいですし、職場でもいいですし、スポーツのチームでもいいでしょう、そこにいる人たちが「ひとつにまとまっている」状態をイメージしてみてください。

 リーダーが「バラバラじゃダメだ、ひとつにまとまろう」と言います。学校の先生が「私のクラスはひとつにまとまっていて、とてもいい」と口にします。

 「ひとつにまとまる」。つまり、統合されている状態は、そこにいる人たちにとって「好ましい状態」です。

「統合」の反対語は、「分割」「分裂」

 「メンバーが対立し、チームが分裂状態になった」。そう表現することがありますね。これは、「好ましくない状態」です。

 トランプ大統領の政権下、「ふたつに分断されたアメリカ」という言葉をよく耳にしました。ならば、バイデン大統領の使命は、「アメリカをひとつにまとめていくこと」です。

 「分裂」「分断」ではなく、「統合」には「好ましい状態」をつくりだす、大きなメリットがあるのです。

ラグビー日本代表の「ワーン・チーム」(One Team)

 2019年、日本でラグビーのワールドカップが開催されました。その時、ラグビー日本代表チームのスローガンは「ワン・チーム」(One Team)でした。その年の「新語・流行語大賞」にも選ばれました。

 代表チームには、日本人選手だけでなく、多くの海外選手が在籍していました。アジア系もいれば西欧系もいました。日本人選手と海外選手では、価値観が違います。多様な価値観の違いから選手が対立し、分裂したらチームは弱くなります。

 そうではなく、「違うこと」(多様性)を受け入れ、その中にある「共通項」を探し出し、その「共通項」を「絆」として、「ひとつにまとまっていく」ことなら、可能なはずです。

 ウイルバーは、「統合」について、こう書いています。

 豊かな差異と一緒に見出されるさまざまな共通性を大切にするという意味であり、多様性の中にある統一性を尊重するという意味なのだ。

『インテグラル理論(ケン・ウィルバー JMA)p36

 「ワン・チーム」(One Team)とは、「みんなが同じ」なることではありません。全員が日本人選手でも、まとまらないチームは、まとまりません。

 「チームをひとつにする」とは、それぞれの豊かな個性、つまり「違い」(差異)を認めつつ、多様性を受け入れることで、「ひとつにまとまっていく」ことです。その結果、チームが強くなり、ゲームに勝利すれば、それはとても「好ましい状態」です。

 バラバラに分裂されたものが、「ひとつまとまる」(統合する)ことで、この世界に肯定的なインパクを与え、「好ましい状態」をつくり出すことができます。

 コロナウイルスの影響によって、世界が「分断」されています。

 日本でも、「マスクをする人、しない人」「飲みにいく人、いかない人」などと、価値観の違いから対立が生まれ「分断」が起きています。世界がバラバラになろうとしている今、「統合」(ひとつにまとめる)をキーコンセプトにする「インテグラル理論」は、ますます注目されていくでしょう。

 では、次から「インテグラル理論」の中核にある「発達」「四象限」について、お話ししてきます。まず「発達」からです。


「発達」について

 「インテグラル理論」での「発達」の知識に関するバックボーンは、「発達心理学」です。それは人間の「心・意識・知性の発達」に関する研究です。この世に生を受け、人は幼児期〜青年期〜成人期〜中年期〜老年期と、年齢を重ねていく中で、心(意識・知性)を発達させていきます。その発達は、段階的であり、人それぞれレベルが違います。

まっつん
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 つまり、15歳の青年と、50歳の中年が、同じ「意識の発達」段階にいることもあり得るわけです。小学生でも中学生でも、やけに「大人びている子ども」もがいるかと思えば、職場を見渡すと「大人気ない大人」がいるものです。この事実は、人の意識に「発達の段階」があることを証明しています。

 ケン・ウィルバーは、これまで研究されてきた多様な「発達心理学」を調べ、比較し、統合してきました。100名を超える研究者の「発達心理学」を研究したところ、その特性に多くの共通性を見い出しました。冒頭に書いた通り、彼は「意識研究のアインシュタイン」と呼ばれます。

 書籍『インテグラル理論(JMA)では、アメリカの心理学者クレア・グレイブス(1914-1986)の「スパイラル・ダイナミクス」が、紹介されています。 

発達モデル(スパイラル・ダイナミクス)のイメージ
『インテグラル理論(ケン・ウィルバー JMA)の掲載図を元に作成

 ケン・ウィルバーは、上のような意識発達に関する「段階表」を、比喩を使って「地図」と表現しています。地図があれば迷いが少なくなりますね。

 ここでは、「発達心理学」には、各段階があって、それぞれの段階に特性があり、こうした意識の発達にはより高次の段階があることを理解してもらえれば十分です。暗記して覚えることもありません。

 なぜなら、意識発達の「地図」(段階表)を「知る」だけでも、それは意識に作用し始めるからです。ケン・ウィルバーは、こう言っています。

 こうした統合的な地図 ── 全象限、全レベル、全ラインの地図 ── に関わることによって、私たちの第二層の能力は鍛え上げられ、その働きが促進されるのだ。なぜなら、こうした地図は、私たちの知性を開き、そしてそのことによって私たちの心を開き、コスモスおよびその中に暮らす全ての生命を、今よりもさらに包括的に、さらに慈悲を持って抱擁できるようにしてくれるからである。

『インテグラル理論(JMA)p259

 ちなみに、上の図で、色の部分、例えばイエロー(ティール)と2種類の色が書かれています。これは、「イエロー」がクレア・グレイブス「スパイラル・ダイナミクス」の色で、(ティール)が、ケン・ウィルバーの「インテグラル理論」で使われる色を意味します。

 では、上の図にあるそれぞれの段階を、『インテグラル理論(JMA)の記述から引用しつつ、簡単に説明していきます。


「スパイラル・ダイナミクス」の各段階

 これから「成人発達理論」に関する段階を説明していきます。ここで事前に、強調しておきたいことがあります。それは、「高い段階にいくほど価値が高く、成功できる」というものではないこと、つまり「それぞれの各段階に価値がある」と認めることです。

 これをお読みのあなたは、かなり「高次の段階」に達していることでしょう。すると、「1」から始まる、下位の記述を読むと「価値がない」ように感じます。しかし、それでは、インテグラル理論が提唱する「統合する」(ひとつにまとめる)ことの足を引っ張ることになります。

 成人発達理論には、次の重要なキーワードがあります。

「超えて含む」(Transcend and include)

 私たち人間は、それぞれの段階をくぐり抜けて、現在の段階に到達していきます。くぐり抜けるとは、その段階を超えていくことです。「1段階」から「2段階」へ、「2段階」から「3段階」へと、順番に発達していきます。飛び級のように「1段階」から「4段階」へ発達することはありません。

 「4段階」に到達した時には、「1」「2」「3」段階の要素を「含んでいる」のです。それが「超えて含む」ということです。

 自分の中にあるのですから、それは価値あるもの、統合すべき対象として尊重すべきものです。ケン・ウイルバーは、こういっています。

 発達研究の核心にあるのは、人々を固定した枠に押し込むことでもなければ、人々の優劣を判定することでもないのだ。そうではなく、発達研究とは、ひとつの指針であり、どんな潜在的能力が未だ活用されていないのかを明らかにしてくれるものなのである。

『インテグラル理論(ケン・ウィルバー JMA)p248

 上の文章で、特に「人々の優劣を判定することでもない」が重要です。ウイルバーのこの言葉を胸に秘めて、各段階に価値があることを認めつつ、では、各段階の説明に移ります。

1.ベージュ「古代的-本能的」段階

 基本的な生存活動の段階です。知性の発達していない「原始人」や「生まれたばかりの赤ちゃん」などが、「古代的ー本能的」段階です。

 食べること、寝ることなど、本能の欲求に従った行動が優先され、生命を維持すること、生き残ることに、意識の焦点が合います。


2.パープル「呪術的-アニミズム的」段階

 「アニミズム」(animism)とは、海、山、川、空、石など、人間以外の様々ものにも魂や精霊が宿っていると考える宗教的思想のひとつです。イギリスの人類学者E・B・タイラーが提唱した言葉です。

 世界で近代文明にふれない未開人たちが、部族集団形成しています。これらの部族は、神を信じ、ジャングルに住む精霊を恐れ、「アニミズム」の精神文化をベースに、今も、生活しています。

 アニミズの精神は、先進国にも残っています。「バチが当たる」と、日常会話でさらっという時、そこに「神の存在」があります。お盆に「ご先祖様が帰ってくる」と、お墓参りをしたり、仏壇を綺麗にしたりするのは、「死んだ人の霊」が、前提になります。神社など「パワースポット」を訪れ、「開運」を願うのは、アニミズ的行動といえます。

 しかし、現代文明を囲まれ暮らす私たちにとって、それは「時折」することであり、生活や人生の全てではありません。


3.レッド「呪術-神話的」(力のある神々)の段階

 「力と栄光に基づく封建的帝国の基礎にある段階」(p52)です。神やドラゴンなど「神話的存在」を認めていて、帝国を司どる「王」のような存在が、「民」を支配しようとします。「征服すること、相手を出し抜くこと、支配することを好む」特性を見せます。

 現代で言えば、宗教を信仰するギャング集団のリーダーがそうです。宗教の考えに基づくテロリスト集団も、レッドの段階といえます。こうした勢力は、世界的に見れば、数は少ないものの、確かに存在し、世界に影響を及ぼしています。

 現代でも、監督、コーチによる選手への「暴力」、上司の部下に対する「パワハラ」が常態化しているブラックな組織があれば、それはレッドの段階です。


5.ブルー「神話的秩序」の段階

 「古代国家の基礎にある段階。厳格な社会階層が存在し、父権主義的であり、あらゆることを「唯一の正しい考え」に基づいて考える」(p53)。

 古くは、宗教が人生の規範として機能していた時代の意識であり、清教徒時代のアメリカや儒教時代の中国が代表例となります。日本では「武士道」に従った武家社会です。「切腹」を潔しとする侍たちの精神がそれです。

 日本で暮らしていると想像しにくいですが、世界には、神の存在を信じ、宗教の戒律を守り生活する人たちが、多く存在します。成人人口の40%が、ブルーの段階です。

 会社でもスポーツチームに、カリスマー的なリーダーがいたとします。そのリーダーの言うことが「絶対命令」「絶体ルール」となり、従い続けているとしたら、その組織はブルーの「神話的秩序」の段階にあるといえます。

 社長や部長の「鶴の一声」で、何もかもが決まってしまう職場は、確かに存在しています。


5. オレンジ「合理的」(科学的達成)の段階

 「法人国家の基礎にある段階」です。「世界とは、自然法則に基づいて円滑に動く合理的な機械である」と考え、「政治も、経済も、人間社会の諸々の出来事も科学の諸法則によって規定されている」(p54)とみなします。

 4までの段階が、人智を超える「神話的」存在を前提としているとしたら、5「合理的」段階は、科学的、合理的なルールを前提とします。

 成人であれば、現在の日本人の多くが、この段階に到達しているはずです。国語、算数、理解、社会など、広範囲な知識を幼い頃から教育され、科学的、合理的な「考え方」の基礎ができています。

 学校教育が充実した世界の先進国の人たちが同じ段階にあり、成人人口の30%に達すると考えられています。

 企業が戦略を立て、資源を配分し、売上・利益を生み出していく合理的なシステムは、オレンジ「合理的」段階にある「知性」の産物です。


6. グリーン「多元的」(感受性豊かな自己)の段階

「価値の共同体(共通の感受性をもっていることを基準として自由に結ばれる連帯関係)の基礎にある段階」です。

 「多様性を重視し、多文化主義の立場」をとることが多く、「精神性・霊性を新たな形でよみがえらせ、世界に調和をもたらし、人間の潜在的可能性を拡張」していきます。「温かな感情、思いやり、気遣いにあふれており、これらは地球とそこに暮らす全ての生命に向けられ」(p55)ています。

 1980年代から90年に起きた世界的な「エコロジー・ムーブメン」に賛同しアクションを起こした人や、国際的な環境問題、人道支援活動に携わっている人は、グリーン「多元的」(感受性豊かな自己)の段階といえます。

 そして、ケン・ウイルーバー思想に興味を持ち、このコラムをここまで読み進めてきた「あなた」は、恐らく、グリーンの意識に到達していることでしょう。

 グリーン段階の成人人口は、全世界の10%です「あなた」は、その10%に入る稀有な存在です。世界に調和をもたらす益々の活躍を期待せずにいられません。


7. イエロー「統合的な段階」

 6グリーン「多元的」段階までが「第一層」で、7イエロー「統合的段階」から「第二層」に入ります。

 「第二層」から、インテグラ理論にある「統合的」な思考法を、意識的にも無意識的にも、実践できている段階といえます。

 「差異や多元性は統合され、自然な流れをつくり、さまざまな流れが相互に異依存し合っている」「世界が現在の姿になっているのは、現実とはさまざまな段階から構成されており、人々が発達のダイナミックな螺旋を上下に運動することは避けられないから」(p59)と考えます。

 これぞまさに「インテグラル理論」の基本です。もし、この記述が、胸に響くものであったり、「その考え方は、日頃から意識していること」と感じたなら、あなたはすでにイエロー「統合的な段階」に達しているのかもしれません。


8. ターコイズ「全体的」(ホリスティックな段階)

 「ホリスティック」(Holistic)は、「全体」「つながり」を含む意味あいがあり、「全体論的」と訳されます。

 例えば、「ホリスティック医学」という言葉があります。

 医学では、主に「体」を治療や研究の対象とします。しかし、「ホリスティック医学」では、「体」だけを診るのではなく、目に見えない霊性を含め「体ー心ー魂」(body-Mind-Spirit)など、人間にまつわる多様な視点を含ませながら、つまり「全体論的」(ホリスティック)な観点から治療・研究にあたります。

 近代合理主義の「知性」は、過度に「目に見えないものを」を切り捨ててきました。霊性を研究対象とすることを避けてきました。それはホリスティックな思考ではなく、医学を分断している部分的思考と考えられるのです。

 マインドフルネス瞑想の広がりとともに、科学的、医学的研究が進み、瞑想状態における変性意識下では、超越的な特殊な意識現象の起きることが、繰り返し確認されています。それは「霊性の知」を含めないと、説明がつかないものです。

 「8全体的(ホリスティック段階)」に到達した人の特徴は、次のように記述されています。

「発達の螺旋全体を踏まえて思考し、多種多様なレベルの相互作用が存在することを認識する。どんな組織の中にも、調和を見出し、神秘的な力を感知し、フロー状態が遍満していることを見抜く」

『インテグラル理論(ケン・ウィルバー JMA)p60

 この段階は、成人人口の0.1%です。言葉で説明されても、実際にどんな意識状態なのかを、イメージするのが難しい段階です。具体例として「マハトマ・ガンジー」と「ネルソン・マンデラ」の名が挙げられています。

 ふたりの歴史的偉人は「インテグラル理論」を知っていてそうなったのではなく、多くの人が不可能とあきらめる「大いなる使命」の遂行を通して、「8全体的(ホリスティック段階)」に到達したのでしょう。


 さて、「1」段階から「8」段階までを、急いで、お話ししてきました。最後にお伝えしておかなければならいのは、「8」段階が、「最終段階ではない」ということです。

まっつん
まっつん

 スマホが生まれ、A Iが誕生し、民間企業のロケットが打ち上げられています。そうして日々、科学が進歩を遂げていくように、人間の「心・意識・知性」もまた、進化をしています。

 未来の可能性に対して、決して目をつぶらないことが「イングラル」(統合的)な思考を行う上で、大切なことですね。

 では続いて、「インテグラル理論」では、「発達」に並ぶ重要な概念である「四象限」について、お話ししてきます。かなり長くなりましたので「四象限」は、簡単に…。


インテグラル理論の「四象限」

 「四象限」は、フレームワーク思考の一種です。4つの象限を設定して、この世界で起きている多様な現象や知識を、その中におさめていきます。

 社会のことでも、人間のことでも、経営のことでも、科学のことでも、芸術のことでも、霊性に関することでも…「四象限」におさめていくのです。

マネジメントの四象限

 『インテグラル理論を体感する 統合的成長のためのマインドフルネス論』(ケン・ウイルバー コスモスライブラリー)に、わかりやすい事例がありましたので、そちらを参考にします。企業組織における「マネジメント」を「四象限」に整理したものです。下の図がその「四象限」です。

『インテグラル理論を体感する』
(コスモスライブラリー)p248掲載図を元に作成

 上の図にある「X理論・Y理論」は、経営学者ダグラス・ マクレガーが提唱した「モチベーション理論」のひとつです。

 「X理論」では、人間は本来、怠ける存在だから「アメとムチ」(報酬と罰)によって厳しく律する必要があると考えます。反対に「Y理論」は、人間は本来、自己実現しようと自ら動く存在だから、目標を設定して、その人の自発的な行動を信頼すべきと考えます。

 X理論は「性悪説」で、Y理論は「性善説」です。

「個人の内面」「個人の外面」「集団の内面」「集団の外面」

 上の2つの象限は、どちらも「個人」に関することです。左上は、その人の自発的な意志と深く関連し「個人の内面」のことです。右上は、目標や報酬や罰ををどうするかです。これらは、個人の外から与えられるものなので「個人の外面」のことです。

 では、下の象限は、どうでしょう。左下の「組織文化マネジメント論」は、「集団の内面」に関することです。組織文化は、その組織に所属するひとりひとりの「意識」によって形づくられていきます。

 右下の「システムマジメント論」では、組織をシステムととらえて客観的に分析しようとします。例えば、「働く環境」を考えるのもシステムマネジメント論のひとつです。

 社員(個人)は組織というシステムに所属し連携していて「環境」に左右され続けます。社員が使うビジネスツール(PC、ネット、Zommなど)から会議のシステム、オフィス環境を含め、「働きやすい環境」のアイディアは、「集団の外面」に関わることです。

 以上のように、「インテグラル理論」では、細かな事象を挙げながら、それらを抽象化し、「四象限」に統合していくことで、ホリスティックな思考法を目指していきます。

四象限に発達段階を加味する

 そして、上の図で表現していませんが、四象限を各エリアに「発達」の考え方を適応してきます。「個人の内面」を例にすると、わかりやすいですね。

 「Y理論」での人間観は、「その人の自発的な行動を信頼」する「性善説」でした。「性善説」だとしても、その人が、どれだけ発達しているかによって、マネジメント・スタイルは変化していくはずです。リーダーシップに「状況適合論」があるように、その人の発達状況に応じて、接するスタイルも変化していきます。 

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 「第一層」の「3.レッド「呪術-神話的」(力のある神々)」の段階にある社員であれば、接する時間を増やし、倫理観を育むような教育的なリーダーシップ・スタイルが求められるでしょう。

 「第一層」の7. イエロー「統合的な段階」に達している社員なら、「言われる前に動く」人材ですので、本人のやりやすいようにやらせる「委任型」のリーダーシップ・スタイルとなるでしょう。

 以上のように、四象限のコンセプトに、「発達」段階の指標を組み込み、思考を深め、さらによりよいマネジメント論へと統合していこうとするのが「インテグラル理論」です。

 この時、とかくやりがちなことが、「四象限」の中で、どれが正しくて、間違っているのかを判断しようとすることです。善悪の判断は、統合の質を劣化させます。「インテグラル理論」の「四象限」は、どれもが正しいと考えます。

 ケン・ウイルバーは、こう言っています。

 こうした4種類のマジメント論のうち、どれが正しいのでしょうか?インテグラル理論では、この全てが正しいと考えます。統合的なアプローチにおいては、これら4つの理論のうちどれが正しくてどれが間違っているのかを問うのではなく、その代わり、この現実世界をどのように捉えれば、これらの全ての理論を結びつけて、ひとつの包括的な全体へとまとめ上げることができるのかを問うのです。

『インテグラル理論を体感する』(ケン・ウイルバー コスモスライブラリー)p246

 


 「インテグラル理論」における「発達」と「四象限」について、簡単に説明しました。さらっと表層をなめただけですので、さらに深く味わうには、ぜひ、『インテグラル理論』(JMA)を始めとしたケン・ウイルバーの本を読んでみてください。


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 「インテグラル理論」の全体像を知るには、『インテグラル理論』(JMA)がオススメです。人の意識がどのように発達し、どんな意識状態が生まれてくるのか、高次の意識状態を詳しく知りたい方、また瞑想に興味があったり、日頃から実践されたりしている方は、『インテグラル理論を体感する』(コスモスライブラリー)をオススメします。

 50年前、携帯電話やスマホは夢のまた夢の産物でした。50年前「スマホを作る」といったら「バカも休み休みに言え」と、笑われて終わりだったでしょう。しかし、今、その夢のような産物は、目の前に出現し「当たり前の日常」をつくっています。

 世界は、進化を続けるのです。人間の意識も同じです。

まっつん
まっつん

 もしかすると、いつの日か、テレパシーで会話をできるようになるのかもれません。そうでなくとも、世界の多くの人が、「第2層」の意識に達すれば、「戦争のない世界」となり「美しい地球」が実現するはずです。それはとても素晴らしいことです。

 最後まで読まれたのでれば、あなたは恐らく、第二層に到達し始めている方ではないでしょうか。

 ケン・ウイルバー思想への学びを深め、この世界の「素晴らしい未来」の創り手として、さらなる発達を遂げていくことをお祈りいたします。

(文:松山淳)