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自己効力感(セルフ・エフィカシー)とは

自己効力感とは

 「自己効力感」とは、自分が取り組むことに対する「できる」という感覚のこと。英語ではセルフ・エフィカシー(self-efficacy)という。提唱者はカナダ出身の心理学者アルバート・バンデューラ(Albert Bandura)。「自己効力感」の概念は、モチベーション理論に大きな影響を与え、今も、研究が続けられている。「自己効力感」について解説する。

まっつん
まっつん

 コロナウイルスで皆さん、大変な時です。本コラムの「転載・引用」に許可はいりません。お役に立ちそうであれば、どうぞ自由に使ってください。力を合わせて乗り越えましょう!

自己効力感とは何か?

『激動社会の中の自己効力』(アルバート バンデューラ 金子書房)
『激動社会の中の自己効力』
(アルバート バンデューラ 金子書房)
バンデューラ
バンデューラ

 自己効力感の強い人は、人間として成就することや個人のウェルビーングをいろいろな方法で強めていく。あることに関しての能力を確信している人は、困難な仕事を、避けるべき脅威としてではなく習得すべき挑戦と受けとめて進んでいく。

『激動社会の中の自己効力』 (アルバート バンデューラ 金子書房)

 「自己効力感」(セルフ・エフィカシー)の概念を提唱したバンデューラの言葉です。「自己効力感」とは「自分ならできる」と、自分の力を信じる「確信」度合いのことです。自己効力感が「強い」と「弱い」とでは、その人の行動に差が出ます。メンタルにも影響を及ぼします。その結果、「自己効力感」の強い人は、そうでない人に比べて、自分が取り組むことの成功確率をあげることができます。

 「自己効力感」とは「主観」です。「自分がどう感じているか」です。他の人から「どう見えるか」ではありません。他人から「自信の無さそうな人間だな」と見えていても、本人が「自分はできる」と感じていたら、その人は「自己効力感が強い」と考えます。

「期待」が人を行動に駆り立てる

アルバート バンデューラ(Albert Bandura)
アルバート バンデューラ(Albert Bandura)
Psychologist Albert Bandura in 2005
Author:bandura@stanford.edu – Albert Bandura

 さて、人が何らかの行動をとるのは、そこに「メリット」があるからです。ご飯を食べると食欲が満たされます。おいしいご飯を食べられたら、「満足感」「安心感」「幸福感」など、「よりよい感情」を味わえます。さらに、必要な栄養素をからだに取り入れるので、より「健康」になる可能性が高まります。

 勉強が嫌いで学校に行きたいくない小学生も、朝、しぶしぶ学校に行けば、「親に叱られない」というメリットがあります。勉強は嫌いでも、「友だちには会いたい」という理由で、校門をくぐる子もいるでしょう。

 「幸福感を味わえる」「健康になれる」「親に叱られない」「友だちに会える」などなど、「メリット」は人の心理に影響を与えます。

 そう考えると、「メリット」への「期待」があるから、「人は行動を起こす」と理解できます。「〜すれば、〜といった『イイこと』があるだろう」という「期待」が、人を行動へと駆り立てているのです。

 これは「モチベーション理論」における「期待理論」の基本的な考え方です。バンデューラは、この「期待」を「効力期待」「結果期待」の2つに分解して考えました。下の【図1】をご覧ください。

【図1】結果期待を効力期待(Bandura 1997)
【図1】結果期待を効力期待(Bandura 1997)
『モチベーションをまなぶ12の理論』(鹿毛雅治編 金剛出版)
p258掲載図を元に作成

「効力期待」と「結果期待」

 「効力期待」「結果期待」について、「禁煙」で考えてみます。

 禁煙すると様々な「イイこと」(メリット)があります。タバコ代が不要になり家計が助かります。お小遣いが増えるかもしれません。街中ではタバコを吸う場所が制限され喫煙場所を探すのに苦労する時代です。タバコをやめれば場所を探す心理的ストレスから解放されます。ポイ捨てして罪悪感を感じることもありません。さらに、ガンに罹患するリスクが低下したり健康にとても良い影響を与えます。

 以上、禁煙はたくさんの「イイこと」(メリット)「期待」できます。

 でも、愛煙家にとって禁煙はとても難しいことです。どれだけメリットを並べられても喫煙の誘惑に勝てません。禁煙しようと思っているけど、できないのです。禁煙に取り組んでみたけど、失敗してしまうのです。「わかっちゃいるけど、やめられない」状態ですね。

 「ニコンチン中毒なんだから仕方ない」という考え方もありますが、実際に、「禁煙」に成功する人はいますので、「中毒」だけが原因ではないはずです。

 「わかっちゃいるけど、やめられない」状態とは、メリットに対する「期待」がどれだけ大きくても、どれだけ「イイこと」が揃っていても、人の行動に与える影響は少ないと考えられます。

 そこで、バンデューラは、「家計が助かる」「場所探しのストレスから解放」「健康にいい」などは、よく考えると、行動した結果として受け取れるメリットだと考え、それらの「期待」を「結果期待」と定義しました。「お小遣いがあがる」のは、「禁煙に成功した、その結果」の話しですね。

まっつん
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 だとすると、人の行動の源泉になる「自信」は、どこに位置付けられるのでしょう。「自信がある」「自分にはできる」という「自己効力感」は、確かに存在し、行動をを引き起こし、その行動を持続させる力になっています。これは、行動する前の段階で、すでに備わっていることがあります。

 そう考えると、人には「結果期待」とは違う、「自分ならできるだろう」という、自分の「力」に対する「期待」があると考えられます。これをバンデューラは「効力期待」としました。ですので、「自己効力感」は、効力期待になります。

 『社会的学習理論』(バンデューラ 金子書房)では、「結果期待」を「結果予期」、「効力期待」を「可能予期」と表現していて、バンデューラはこう記しています。

『社会的学習理論』(バンデューラ 金子書房)昭和54年初版
『社会的学習理論』(バンデューラ 金子書房)
昭和54年初版
バンデューラ
バンデューラ

結果予期は、ここでは、ある行動がある結果に導くだろうという個人の推測として定義される。

可能予期とは、その結果が生ずるのに必要な行動をうまく行うことができる、という確信である。

『社会的学習理論』(バンデューラ 金子書房)昭和54年初版 p89

 新入社員の頃、人前で話すのが苦手だった人がいたとします。プレゼンがある日は「不安」だらけで胃が痛くなっていました。それが、プレゼン経験を重ねていく度に、自信がついてきて、「次もきっとうまくできるだろう」「不安」「確信」に変わっていきました。「自己効力感」が高まったわけですね。

「効力期待」と「結果期待」のマトリクス

 人の行動は必ず「結果」ともないますので、「結果期待」がモチベーションに与える影響はゼロではなく、「効力期待」と組み合わせて、バンデューラは次のようなマトリスクを提示しています。

効力期待と結果期待の高低の組合わせによる行動・感情への影響(Bandura 1997)
効力期待と結果期待の高低の組合わせによる行動・感情への影響(Bandura 1997)
『モチベーションをまなぶ12の理論』(鹿毛雅治 編 金剛出版)
p262掲載図を元に作成

Aエリア 「結果期待」「効力期待」双方とも高い

 Aエリアは、「結果期待」も「効力期待」も高い状態です。例えば「プレゼンがうまくいけば、数億円の取引を成立させることができる」という「結果期待」があり、と同時に、「自分ならプレゼンを成功させられる」という「自己効力感」(効力期待)もあります。これはモチベーションの高い状態です。

Bエリア 「結果期待」は高いが「効力期待」は低い

 Bエリアは 「結果期待」は高いが「効力期待」は低い状態です。取引の額は大きく、成功すれば会社からも高く評価されます。成果主義が導入されており賞与の額も大きく変わってきます。ですが、「自分にはとてもできない」と気落ちしている状態です。「どうせ自分なんか」と自己卑下し、劣等感に苦しめられることもあるでしょう。

Cエリア 「結果期待」は低いが「効力期待」は高い

 Bエリアは、「結果期待」は低いが「効力期待」は高い状態です。取引の額は大きく会社に大きな利益をもたしますが、人事システム上、それで評価されるわけでも、給与がよくなるわけではありません。「自分にはできる」と考えていますので、不平不満が多くなります。上司に抗議したり、環境を変えようと転職を考えたりするでしょう。

Dエリア 「結果期待」「効力期待」双方とも低い

 Cエリアは、「結果期待」「効力期待」双方とも低い状態です。会社に貢献しても期待できることはなく、また、貢献できるという確信もない状況です。例えば、ブラック上司のもとで、日々、大声で叱責され続け、伸びる力も伸ばすことができない才能を潰されてしまっている状況です。

 「こんな会社で働き続けても、何ひとついいことない」

 「期待」できることが少ないブラック職場で働いていると、人は無気力になり、あきらめの心境になっていきます。鬱病を発症することもあるでしょう。


 それでは、次から「自己効力感をどうやって高めていくのか?」について、お話していきます。

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