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松下幸之助の言葉

松下幸之助の言葉

松下幸之助 略歴
松下電器産業(現パナソニック)創業者。明治27(1894)年、生まれ。大正7(1918)年、松下電気器具製作所を創業。昭和21(1946)年、出版社の「PHP研究所」を創設。本を通した啓蒙活動を行う。昭和54(1979)年、松下政経塾を設立。政治家の育成にも力を注いだ。平成元(1989)年に94歳で没。「経営者の神様」の異名をもつ。名経営者として、その教えに今も多くの人が耳を傾けている。

一日一日の進歩が信用に

『人生と仕事について知っておいてほしいこと』
(松下幸之助 PHP研究所)
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松下幸之助の言葉
その日その日を大事にしていく商売、
その日その日を大事にしていくところの仕事というものが
積み重ねってまいりますと、
そこに一歩一歩の進歩というものが必ず積み上げられる。
それがついに大きな仕事ともなり、大きな信用ともなり、
またお得意先に喜んでもらえる
立派な仕事ともなってくるんやないかという感じがいたします。

『人生と仕事について知っておいてほしいこと』(松下幸之助 PHP研究所)p74

 「小事は大事」と言います。1日、1日が大切です。1日、1日の積み重ねが大事です。1日1日の丁寧な仕事が積み重なって「大きな仕事」「大きな信用」になります。

 「棚からぼた餅」で、降って湧いてくる幸運が無いわけではありません。「偶然の成功」は確かにあります。でも、偶然をあてにしていると、結局、努力の質が落ちていきます。1日、1日、ひとつひとつ積み上げていき、その積み上げたものが、私たちに「大きな信用」をもたらしてくれるのです。

 二宮尊徳の言葉に「積小為大」があります。「小さい事を積み重ねた結果が、大きな事になるのだから、小さい事をおろそかにしてはいけない」。そんな戒めの言葉です。小さな仕事を大切にすることで、仕事の質は高まり、「信用」も高まるのです。 

 1日、1日、コツコツ。「信用」を積み上げるには時間がかかります。でも失うのは一瞬です。

 お客様に対する失礼な一言で、取引が停止になることがあります。打ち合わせの時間に1分遅れただけで「君の会社は信用できない」と出入り禁止になることがあります。世の中にはとても厳しい人がいます。でも、その厳しい人が私たちの「弱点」を教えてくれているのです。

 「失った信用」を取り戻すのには労力と時間がかかります。何度も足を運んで謝罪し、頭を下げて許してもらうのです。ただ、「失った信用」を取り戻す労力と時間は、少なくすることができます。「信用が失われる」ことから守ってくれるものがあるのです。何だと思いますか…。

 それは「信用」です。日頃から「信用」を積み上げておけば、その信用が「信用の喪失」から私たちを守ってくれるのです。例えば、こんな言葉をお客様から頂くことがあります。

お客様
お客様

「いつもちゃんとやってくれてますから、次から気をつけてくださいよ。信用してるんですから、これからもお願いします」

 そんなお客様からの「寛大な言葉」を聞くことができるのは、日頃から積み上げた信用があればこそです。

 ですから松下幸之助さんが言うように、1日1日、一歩一歩、ひとつひとつ、小さな仕事も、大事にしていきましょう。


真剣だから人は失敗の恐れを抱く

『松下幸之助一事一言』(大久光 文春文庫)
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松下幸之助の言葉
転んでもただでは起きない。
意地きたないのではない。
真剣なのである。
失敗することを恐れるよりも、
真剣でないことを恐れたほうがよい。
真剣ならば、たとえ失敗しても、
そこから何かをつかむものである。

『松下幸之助一事一言』(大久光 文春文庫)p286

 失敗はするのは恐いものですね。

 失敗すると、批判はされるし、悪口は言われるし、周囲からの評価も下がります。でも、だからこそ失敗しないように、人は「真剣」になることができます。失敗とは真剣になるための「苦い薬」のようなものです。

 闇があれば光あるように、物事には、ふたつの側面があり、失敗という一見、ネガティブに思えるものにも、必ず、ポジティブに働く要素があります。

 だから、仕事をしていて、失敗への恐れを感じた時には、それをうまく活用するために、こう思えばいいいのです。

「失敗への恐れがある。恐い。でも、それだけ自分は真剣になっているのだ」

 そもそも「真剣」でない不真面目な人間は、結果や成果に対してコミットしていないですから、「恐れ」そのものが無いのです。「どうでもいいや」と思っている人は途中で仕事を投げ出してしまいますから…。

 ですから、失敗への恐れを跳ねのける、というよりも、失敗への恐れを感じる自分を肯定的にとらえるのです。

 「恐れを感じている自分は今、真剣になっている証拠だ。だからこの恐れを否定することはないんだ」

 そんな風に恐れを拒絶せず受け入れてくほうが、うまくいきます。だから、失敗の恐れはあってOK!恐れ感じる自分を、しっかりと認めましょう!


感謝の心は幸福の安全弁

『松下幸之助「一日一話」』(PHP総合研究所)
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松下幸之助の言葉
感謝の心が高まれば高まるほど、
それに正比例して幸福感が高まっていく。
つまり、幸福の安全弁とも言えるものが感謝の心とも言えるわけです。
その安全弁を失ってしまったら、幸福の姿は、
瞬時のうちにこわれ去ってしまうと言っていいほど、
人間にとって感謝の心は大切なものだと思うのです。

『松下幸之助「一日一話」』(PHP文庫)p67

 かつて文化庁長官も務めた心理療法家の河合隼雄さんが、ある本で、こんなことを書いていました。

カウンセリングが進んでいき、終了となった時に、「ありがとうございます」と、しっかり感謝できる人と、できない人がいる。どちらの人が、心がしっかり育っているのかと考えると、これはもう間違いなく「感謝できる人」である。

 心理療法家というのは、人間の美しい面も見ますが、醜い面も見ます。いわば「人間の真実」にいつも直面している人です。だから、河合隼雄さんの言葉には、人間の真実が含まれていると思います。

 感謝をできる人のほうが、心は成長している。 

 感謝のできない人は、「心が強い」のではなく「弱い」のです。それは心の「弱さ」「未熟さ」のあらわれなのです。

 そんなことから松下幸之助さんの言葉をもう一度、読み直してみると、「なるほど!」と納得できます。

感謝の心は幸福の安全弁。

 心が成長していればいるほど、幸福を感じやすいのが人の心です。心が成長している人ほど、他者の幸福にも責任を持つようになります。なぜならば、心が成長するとは、「心が広く」なることだからです。心の狭い人は、自分のことばかり考えていて、結果的に、幸福が逃げていきます。

 ですので、松下幸之助さんの言う通りです。人間にとって感謝の心は大事です。日頃からお世話になっている人たちに、しっかりと感謝をしましょう。そして、感謝を通して、私たちは人間を磨き、人格を高めていくことができます。

 「ありがとうございます」

いつも、どんな時でも、この言葉を忘れないでいましょう。

(文:松山 淳)


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