日本時間2021年11月19日(米国18日)、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手がア・リーグのMVP(最優秀選手賞)を受賞しました。イチロー選手以来で、日本人として2人目、20年ぶりの快挙です。成績は、投手として9勝2敗を記録。打者としては46本塁打、100打点をマークしました。「二桁勝利・二桁本塁打」を達成したらベーブ・ルース以来、103年ぶりの記録でした。が、あと一歩、及びませんでした。でも、あと一歩まで行くことが歴史的なことですし、MVP(最優秀選手賞)の受賞が素晴らしい快挙です。
大谷選手のMVP受賞を記念して、大谷選手が残した名言をお届けします。
目次
「大事にいくというより、思い切っていく」
『ナンバー』(1035 文藝春秋 2021/9/24)より
深い言葉です。「大事に行く」というと、その言葉には「慎重さ」が含まれます。
もちろん「慎重であること」は、大事なことです。
でも、大きな目標に取り組んだり、スランプや不調など、閉塞した状況を突破したりする時には、マインドセットとして「思い切っていく」という言葉のほうがフィット感があります。
なぜなら「大胆さ」「勇気」「積極性」というポジティブさを感じとり勢いづくからです。
「思い切って行く」
自分を勇気づける大きな力になります。
必ずよくなると思ってやってきたので、不安はありましたけど、焦りはなかったですかね。
「日本記者クラブ」記者会見(2021.11.15)より
2021年11月15日、MVPが発表される前に行われた日本記者クラブ会見での言葉です。手術をしたケガについて質問され、それに対して答えました。
「必ずよくなる」と信じること。
これ、大事ですね。辛い状況に陥った時に、希望を失うと心が折れてしまいます。時間が解決してくれることもあります。ケガは特にそうですね。
時間のかかることには、時間をかけること。
このマインドセットは、焦りそうになった時、自分にかける言葉として有効です。
そして、「今の状況がよくなるのか?」と不安になったら、不安が起きることは「当たり前」「普通のこと」と、受け入れていくに限ります。
あの大谷選手だって不安にはなったのです。
だから、不安を受け入れて「必ずよくなる」と信じることが、ケガやスランプなど、人生の逆境を乗り越えていく時のちょっとしたコツですね。
「好きなことを、より一層頑張れたら毎日良い1日になるんじゃないかなと思っています」
もし、自分の好きなことを毎日できたら、それは素晴らしいことです。でも、多くの人は、必ずしも「好きなことを毎日できる」わけじゃありませんね。
時には、嫌なことも辛いことも、しなければならないのが人生です。
でも、そうして嫌なことに必死に取り組んでいくことで、「嫌いなこと」が「好きになる」こともあります。そこで必要なのが「好きになる努力」です。
「好きになる努力」をする時に、大事なことが2つあります。
ひとつ目は、自分の感情を意識し過ぎないこと。
好きとか嫌いとか、感情にとらわれると、うまくいかなくなりがちです。
ふたつ目が「無我夢中」になることです。
無我夢中の「無我」とは、「我が無い」と書きますね。人が何か集中し、無我夢中になる時、「私が、私が」と自分のことを考えたり、意識することはありません。自分のやるべきことを、ただひたすらしているだけです。そ
この「無我」の感覚で取り組んでいる時、人は最高の心理状態にあると言われます。心理学では「フロー体験」といい、スポーツ心理学では「ゾーンに入る」ともいいます。
今していることに無我になれている時、好きとか嫌いの感情を意識することはありません。ですので、「自分の感情を意識し過ぎないこと」と「無我夢中」はリンクしています。
「好きになる努力」を重ねて、よい1日を過ごしたいものです。
「引退したときに振り返って、感傷に浸るのか、あるいは悔しがるのか、そのときになって何かを感じればいいのかなと……それまでは何も考えずに1年1年、出し切っていきたいと思っています」
インタビュアーに、ホームラン王と二刀流としてベーブルスの記録に並ぶ10勝に届かないことについて質問んされての、大谷選手の言葉です。
大谷選手は10勝に関しては、「10勝に関しては、何とも思ってないですね。そこにこだわりはない」と言っています。ただ、ホームラン王に関しては、「自分がどれだけ打っても誰かがそれよりたくさん打っちゃえば獲れないわけで、そういう意味では獲ってみたかった」と答えています。
こだわりのない面と悔しい面の双方がありつつ、でも大谷選手が最終的に意識しているのは、過去ではなく「未来」です。未来でありベストを尽くすことです。
「何も考えずに1年1年、出し切っていきたい」
「何も考えず」は、もちろん、本当に何も考えないことではないでしょう。それは「私欲にとらわれない精神」のことを言っていて、「記録、記録と考え過ぎて」こだわりが強くなると、逆に、うまくいかなくなることをわかっているのわけですね。
「日々、もてる力を出し切っていく」
大谷選手の言葉から学びたい生きる姿勢です。

Author:Erik Drost
「反骨心みたいなのは正直なかったですし、本当に純粋に自分がどこまでうまくなれるのかなっていうのを頑張れたところがよかったのかなと思います。」
大谷選手に二刀流に対して、これまで数々の批判がありました。「二刀流なんてうまくいかないよ」「打者か投手のどっちかに絞ったほうがいい成績が残せる」などと…。
そうした批判に対して、「反骨心みたいなのは正直なかった」と答えています。
それより、「純粋に自分がどこまでうまくなれるのか」を意識して、「頑張れたところがよかった」と言います。
イチロー選手も、記録は結果に過ぎなものであって、純粋に「野球がどこまでうまくなるのか」にこだわっていました。それで引退をささやかれながらも、現役を続行していました。
成績や記録という結果は、もちろん大事です。それは私たちのモチベーションを高めるひとつの要因になります。
でも、結果ばかりでなく、自分の取り組んでいることに対して、「もっと上手になりたい」「もっと、うまくできるようになりたい」というより高いレベルを志向する純粋なマインドが、厳しい競争を勝ち抜く時の力になります。
「反骨心」より「純粋に自分がどこまでうまくなれるのか」。
大谷選手の言葉に耳を傾けて、純粋な向上心を力にして、より高みへと飛躍していきましょう。
(文:松山 淳 アイキャッチ画像写真:Scott U – Shohei Ohtani)