ガンジーのサーバント・リーダーシップ

ガンジーのサーバント・リーダーシップ

ガンジーのリーダーシップ・スタイル

 世界を変えた偉大なリーダーとしてガンジー(1869〜1948)を外せません。イギリス(大英帝国)に支配されていたインドを、独立へと導いた功績は、燦然と歴史に輝きます。

 「非暴力・不服従」というガンジーの思想は、圧政と戦う後の運動家に大きな影響を与えました。マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、マンデラ大統領、ダライ・ラマ14世など、ガンジーの教えは後世のリーダーに継承され今も息づいています。

 インド独立の偉業で知られるガンジーですが、運動家としての原点は南アフリカにあります。顧問弁護士の仕事で24歳の時に、南アフリカへ渡ります。

 当時、南アフリカもインドと同じよう大英帝国の植民地であり、白人優位の人種差別社会でした。ここでガンジーは、数々の酷い仕打ちを受けます。この苦い経験が、運動家マハトマ・ガンジーを生む出すのです。南アフリカでの人権闘争運動は22年に及んでいます。

『ガンジー』(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)
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 巨匠リチャード・アッテンボロー監督の映画『ガンジー』(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)は、南アでの活躍からインドで暗殺されるまでのガンジーを描きます。

 死を覚悟した断食を行い、暴徒化した民衆を鎮めた史実には胸を打たれます。自らの命を捧げて民衆を導く奉仕を軸にするガンジーのリーダーシップ・スタイルは、サーバント・リーダーシップのお手本と言えます。

 サーバント・リーダーシップは、日本で着実に広まっています。一般のビジネスマンでも興味を持つ人が増えていることを実感します。

 そこで、ガンジーの言動を参考にしてサーバント・リーダーシップについて述べていきます。


サーバント・リーダーシップとは?

 リーダーシップという言葉から想起するのは、「有能なリーダーが先頭にたって力強くフォロワーを導く」というものです。

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まっつん

 これはカリスマ型リーダーシップと言えるもので、私たちがリーダーシップという言葉に持つ一般的なイメージです。

 こうしたカリスマ型に対するアンチテーゼとして、1970年代に「リーダーが奉仕者となりフォロワーを導く」というサーバント・リーダーシップの考え方が米国で生まれました。

 提唱者はAT&T(アメリカ電話電信会社)の社員だったロバート・K・グリーンリーフ(Robert K. Greenleaf)です。

ロバート・K・グリーンリーフ(1904-1990)
ロバート・K・グリーンリーフ
(1904-1990)

 グリーンリーフは、『サーバントであれ』(英知出版)で、こう書いています。

「サーバントリーダーは、第一にサーバント(奉仕者)である。はじめに、奉仕したいという気持ちが自然に湧き起こる。次いで、意識的に行う選択によって、導きたいと強く望むようになる」
『サーバントであれ』(英知出版)

ガンジーが受けた屈辱的な差別

 ガンジーは南アフリカを移動中に列車から放り出されるという経験をしています。1等車に乗車していたところ、白人がクレームをつけたのです。

「有色人種がなぜ1等車に乗っているのだ!」と。

 駅員が貨物列車に移るように命じますが、ガンジーは拒否します。すると警官が来て、荷物を列車に残されたままガンジーは強制的に列車から降ろされてしまうのです。時刻は夜の9時頃で、次の列車はありませんでした。

 こうした非人間的な扱いを受け、差別なき社会の実現に我が身を捧げたいという「奉仕の精神」が、ガンジーの心に湧き起こってきます。

 有色人種の中にはそう考える人もいたわけですが、圧力に負けず、民衆を導く行動を実際にとったのが、ガンジーの違うのところです。


奉仕の精神

 サーバントには、「使用人」「召使」という意味があります。また無宗教者の多い日本では、「奉仕」と聞くと、奉仕(ボランティア)活動が連想されて、サーバント・リーダーシップは、厳しい競争を勝ち抜くビジネスの現場にはマッチしないという印象をもたれがちです。

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まっつん

 ただ、私が行うリーダー研修でのことです。様々なリーダーシップ理論を紹介しディスカッションを通して、最後に「リーダーとしての哲学」を個人発表していただくと、サーバント・リーダーシップを取り上げる人が多いのも事実です。

 サーバント・リーダーシップについて、こんな好意的な感想をよく耳にします。

「自分はリーダータイプではないと悩んでいたので、奉仕をよしとするリーダー論に出会って精神的に助かりました。明日からやっていけそうです」

 リーダー研修では、コーチングやロジカルシンキングなどの「スキルセット」とリーダーとしての心構えや哲学にあたる「マインドセット」の開発が課題となります。

 リーダーとして悩んでいたその人は、サーバント・リーダーシップを知り「マインドセット」の部分に「拠り所」を発見したと言えます。

 「奉仕」を辞書で引くとこうあります。

奉仕とは
「真心や愛情を示して相手に尽くす」
「自分の持つすべてを惜しみなくある対象につぎこむ」

(デジタル大辞泉)

 ガンジーは命をかけた断食を何度も行い、インドに今も根強く残る身分制度(カースト)を気にかけず、全ての人と対等に接しようしました。暗殺の危険が高まるものの、民衆の前に出ることを厭いませんでした。

 まさに愛情を示して差別のない世界を実現するために尽くし続けたのです。ガンジーは辞書にあるような「奉仕の精神」を体現したリーダーといえます。


奉仕とリーダーシップ

  2020年、東京オリンピックの開催まで1年を切りました。滝川クリステルさんの発言で流行語のようになった「おもてなし」の精神を発揮できるのか、いよいよ本番が迫っています。

 「おもてなし」は、丁寧語の「お」と、意味を強調する接頭語「もて」と、成し遂げるの「成し」が結合した言葉です。相手に心地よい時間を過ごしてもらう。そのことを成し遂げるための特別な気持ちと行為が「おもてなし」です。献身的に相手に尽くす奉仕の精神が「おもてなし」にはセットされています。

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まっつん

 知り合いの家を訪問し、素敵な「おもてなし」を受けたら、どう感じるでしょうか?恐らく「自分のためにそこまでしてくれたのか」と感動し、「おもてなし」をしてくれた人に対して強い「信頼感」を抱くことでしょう。

リーダーシップの源泉は「信頼」です。

 「信頼」があるから人は、そのリーダーについていきます。そう考えると、「信頼」を生み出す「奉仕」の行為が効果的なリーダーシップにつながるのは当然のことと言えます。

 今、サーバント・リーダーシップが急速に広まっているのは、日本特有の文化である「おもてなし」とサーバント・リーダーシップの共通性に多くの人が気づき始めているからだと思います。

 「慈悲を与えずして慈悲は求められない」

 映画『ガンジー』でのガンジーのセリフです。求めるならばまず与えよ、まず与えることで、求めることが与えられる。

 「奉仕の精神」の考え方は、古くから日本にもあります。

 「おもてなし」の精神を、自然と受け入れている日本人は、サーバント・リーダーシッップを発揮しやすいタイプ多いと言えるでしょう。

(文:松山 淳)

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