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意味への意志(will to meaning)

意味への意志 アイキャッチ画像

 意味への意志(will to meaning)とは、「生きる意味」を求める人間の根源的な「こころ」の働き。心理学者V・E・フランクル(Viktor Emil Frankl )が「ロゴセラピー」(Logotherapy)の中で強調した概念。フロイトが「快楽への意志」でアドラーが「優越への意志」。フランクルは「意味への意志」を唱えることで自身の心理学「ロゴセラピー」の独自性を打ち出した。

意味への意志

 フランクルは、人間は意味への意志(will to meaning)をもつ存在であり、「生きる意味」を満たすことが「生きる力」になると考えました。

 フランクルは『意味による癒し』(春秋社)の中で、こう書いています。

『意味による癒し』 (V・E・フランクル 春秋社)の表紙画像
『意味による癒し』(春秋社)
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「人間が意味を求めることは人間の生命の内にある根源的な力であって、決して本能的衝動の「二次合理化」などではありません。この意味は各人にとって唯一かつ独自なものであり、まさにその人によって充たされねばならず、またその人だけが充たすことのできるものなのです。」

『意味による癒し』(ヴィクトール・フランクル[著]、山田邦男 [監訳] 春秋社)p5-6

 フランクルが確立した心理学は「ロゴセラピー」(Logotherapy)です。

 「ロゴセラピー」の「ロゴ」は「意味」のこと。

 人間は、人生に意味を求める「意味への意志」をもつ存在です。「生きる意味」が感じられなくなると「生きる力」を失っていきます。

 その証拠に、経済的に豊かで、社会的に地位のある成功者たちが、「生きる意味」の欠落感から深く苦悩することがあります。

「生きていても虚してく仕方がない」
「自分の人生に何の意味も感じられない」

 「虚しさ(空虚感)」「無意味感」「無価値観」は、静かに人の心を苦しめ続けます。社会的成功が、必ずしも「生きる意味」を満たしてくれるわけではないのです。

 そんな苦悩する人に、対話を通して「生きる意味」を再発見できるようにサポートしていくのが「ロゴセラピー」です。「ロゴセラピー」は、「意味による治療」(therapy through meaning)であり、「意味による癒し」(healing through meaning)ともいえます。


 「どんな人のどんな人生にも、意味がある」

 フランクルが残したメッセージは、心理学の範疇を超えて、「人生論」「人生哲学」として、今も悩める人を救い続けています。

 仕事でひどい失敗をしたり、家庭や職場での人間関係がうまくいかなくなったり、不運が続くと「何やってるんだろう」と、虚しさがこみ上げてきます。

 不運の時期が長引き、何をやっても空回りしている状態に落ち込んでしまうと、「こんな人生に意味があるのか」と、つい自分に問いかけることがあります。

 「生きる意味があるか」と自分に問いかけても、答えはすぐに返ってこないでしょう。

 「生きる意味」を問いかけるような精神状態ですから、自分で答えてみても、その答えはやはり虚しく、悲観的になりがちです。

生きる意味を問わなくていい

 そこで、フランクルは「生きる意味」に苦しむ人を、次のようなメッセージで励まし続けました。

 人生に「生きる意味」があるかないかと、問うことはない。
 人間は、人生の意味を問う存在ではなく、人生からその意味を問われている存在なんだ。
 だから、人生から差し出された問いに、ひたすら答えていけばいい。
 そうすれば、「生きる意味」は自ずから満たされていく。

 ここにコペルニクス的転回があります。

人は「生きる意味」を「問う」存在ではなく、
人は「生きる意味」を「問われている」存在である。

 フランクルは精神科医として、この「人が問う」のではなく「人は問わている」という人生に対する見方を180度変える考え方を説きました。その思考法を知っただけで、生きる苦しみが軽くなった人たちが、たくさんいたのです。

『生きがい喪失の悩み』(V・E・フランクル 講談社)の表紙画像
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 意味への意志(will to meaning)について、フランクルは『生きがい喪失の悩み』(講談社)では、次のように書いています。

「人間には、私が意味への意志と呼んでいるものが、もっとずっと深くに根ざしています。すなわち、自分の現存在の意味をできるかぎり成就しようとする人間の格闘であります

『生きがい喪失の悩み』(ヴィクトール・フランクル[著]、講談社)p117

 最後に「格闘」とあります。時に人間は不運に巻き込まれ、「生きること」がまるで苦しい「格闘」のように感じられることがあります。

 ただ、「人生の格闘」の最中で、「意味への意志」が強く働き、よりよい「生きる意味」を求め、人はさらに成長していきます。

 そう考えると、「意味への意志」は、「生きる羅針盤」であり、私たちの「心の味方」なのです。

(文:松山 淳


【参考文献】

『意味による癒し』(ヴィクトール・フランクル[著]、山田邦男 [監訳] 春秋社)

『生きがい喪失の悩み』(ヴィクトール・フランクル[著]、講談社)

V・E・フランクル
フランクルとは

ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl 1905〜1997)ロゴセラピーの創始者。オーストリア出身の精神科医、心理学者。世界三大心理学者(フロイト、ユング、アドラー)につぐ「第4の巨頭」。第2次世界大戦中のナチス強制収容所から生還する。その体験を記した『夜と霧』は世界的ベストラーとなる。「生きる意味」を探求するロゴセラピー(Logotherapy)という独自の心理学を確立し、世界に大きな影響を与えた。享年92歳。著書:『夜と霧』(みすず書房)『それでも人生にイエスと言う』(春秋社)『意味による癒し』(春秋社)ほか。


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