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心の超越機能について《ユング心理学》

心の超越機能〈ユング心理学〉のアイキャッチ画像

 ユング心理学の超越機能(transcendent function)とは、人格を発展させるために意識と無意識が統合していく心の働き(システム)のことである。ユングは、意識と無意識は互いに補い合う「相補的」な関係にあると考えた。意識が偏った時には無意識がその偏りを正し、心全体のバランスを保とうとする。意識が、無意識の偏りを整えようとすることもある。心に超越機能があるため、意識と無意識の要素が補完し合い統合され、より高次の全体性を目指して心は成熟していくことができる。

 ユングは心理療法の目的を「意識と無意識の統合」にあると考えた。よって心の超越機能はユング心理学のキーになる概念である。ユングが提唱した「心の超越機能」について解説していく。

意識と無意識の相補性

 ユングは、心の全体を3つの領域に分けて考えました。「意識」「個人的無意識」「集合的無意識」です。2つの無意識は、意識と相補性の関係にあります。相補性とは、互いに補い合う関係のことです。

 つまり、意識と無意識は、相互作用を起こし補償しあいなが働いているのです。

 これをユング心理学で「補償理論」といいます。

意識と無識の補償作用のイメージ図

 補償作用が起きていればバランスが保たれ心は健やかな状態を維持できます。

相補性の4つの理由

 ユングは『創造する無意識』(C.G.ユンン 平凡社)の中(p114)で、意識と無意識が補償的・補完的に働く4つの理由をあげています。

  1. 無意識内容はある閾値を持っていて、あまりに微弱な要素は無意識内に取り残されるから。
  2. 意識はその方向を持った諸機能のために、不適当な素材を抑止するから。不適当とされた要素は無意識に沈んでいく。
  3. 意識がそのときどきの適応のプロセスであるのに対して、無識は個人の過去の忘れられた要素のすべてと、人間精神に受け継がれてきた構造的な機能の痕跡を含んでいるから。
  4. 無意識の中には閾値に達していない空想の混合物があって、時間が経過し条件が整うと意識の中に浮かび上がってくるから。

 「閾値」(いきち)とは、ある反応が起きるポイント(値)・境目のことです。例えば、ある物質Aが「50度になると溶け出す」とすると、「物質Aの溶け出す閾値は50度である」と表現できます。

 つまり、無意識に「閾値」があるとは、意識と無意識が互いに補償し合うには「条件がある」ということです。条件が合わない時には、意識に偏りが起きてバランスが崩れていきます。

心のバランスが崩れる理由

 バランスが崩れる代表的なものが上の4つの理由の中にある「❷意識が不適当な素材を抑止する」です。

 意識には、自分の方向性に合ったものは取り入れ、不適当と判断したものは排除しようとする傾向があります。

 例えば、自分の性格は「明るい」と考えていて、その「明るさ」に自信のある人は、その反対である「明るくない」ことを否定しがちです。この否定することが「抑止する」ということです。性格的に暗い人とは、仲良くなろうとしないのは、そのひとつです。

 ですが、誰にだって「明るい」面もあれば「暗い」面があるものです。24時間いつでも明るくしていられる人はいません。友人知人の前で「明るく」ても、独りになると「暗い」人は多いものです。明るさと暗さの二つがあって「心のバランス」がとれます。

人の心は偏る運命にある

 意識には、適当と判断するものを取り入れ、不適当を排除しようとする傾向があるため、生きていると人間はどうしても偏(かたよ)っていきます。偏る運命にあるとさへいえます。

まっつん
まっつん

 偏るとは、全体のバランスが崩れることです。意識が「頭でっかち」になればなるほど、無意識と距離がとれ補償作用が働くなります。

 「牛肉」が好きだからといって「牛肉」ばかり食べていたらどうなるでしょう。鶏肉や魚や野菜(サラダ)など、その他のものも食べてバランスが取れます。偏食が不健康につながるように、心の偏りが「心の不健康」を招くのです。

 ユングは『創造する無意識』(C.G.ユンン 平凡社)に、こう書いています。

『創造する無意識』(平凡社)
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 われわれの文明生活は、意識の集中し、方向づけられた活動を人に要求するから、それだけ無意識と完全に切り離されてしまう危険も生ずる。しかし、方向づけられた諸機能によって、無意識から遠ざかれば遠ざかるほど、それだけ意識の反対の要素は強められ、ひとたび噴出するや好ましくない結果をもたらしかねないほどになる。

『創造する無意識』(C.G.ユング 平凡社)p118

 意識と無意識が離れていくことで、心に「好ましくない結果」もたらされます。「好ましくない結果」とは、心が疲れて生きる気力を失ってしまったり、「心の病」にかかってしまったりすることが一例です。

無意識を理解することで超越機能が働く

 そうした「好ましくない結果」が起きないように、人間の心は「意識と無意識が互いに補い合う超越機能」を備えているのです。

まっつん
まっつん

 意識と無意識が補償し合う超越機能が働くことで崩れた心のバランスを取り戻せます。そのためには、無意識の状態を理解し、無意識から送られているメッセージを受け取ることです。

 「無意識が何をいおうとしているのか?」

 その「声」を明確にして理解し聞き入れることを「無意識の意識化」といいます。

 必要なのは無意識内容の意識化なのである。われわれの行為の内に現に流入しつつある無意識を意識化することであって、無意識に知らず知らずのうちに左右されたり、そのため望ましくない結果を来したりすることを防げるのである。

『創造する無意識』(C.G.ユング 平凡社)p135

 つまり超越機能を働かせるには、無意識を理解することです。

 「あなたは今、偏っているから直した方がいい」

 そう無意識からメッセージが来たら、それを受け入れ意識的に自らの意志で努力と工夫を重ねて「生き方」「考え方」=「生きる態度」を改めることです。

「夢」は超越機能の鍵になる

 では、どうやって無意識からのメッセージを受け取ればいいのでしょうか。

 その答えのひとつが「夢分析」です。ユングはこう書いています。

 超越機能を働かせるには、どうしても無意識の素材がいる。そして無意識過程の表現として、差し当たり夢ほど手頃なものはない。夢はいわば混じり気のない無意識の産物なのである。

『創造する無意識』(C.G.ユング 平凡社)p131

 『創造する無意識』(C.G.ユング 平凡社)には、ユングの患者(女性)が見た夢の例が書かれています。この女性は未婚で、次の夢を見ました。

「誰かに古墳から掘り出される剣を手渡される」(p127)

 夢分析では、夢に出てきた要素を連想するのが王道です。彼女が夢の「剣」について連想した内容が以下のものです。

「剣」の連想

 父親の剣。父は昔この剣を、陽の光の中にかざして見せたことがあったが、それは彼女に強い印象を与えた。父はあらゆる点で行動力のある意志の強い男性で、気性は激しく、恋愛関係も華やかだった。ケルト人の青銅の剣。この患者はケルトであることを誇りに思っていた。ケルト人は気性が激しく、荒々しく情熱的である。

『創造する無意識』(C.G.ユング 平凡社)p127

 この女性は父親とは正反対の性格でした。性的な空想に耽(ふけ)る傾向があり、性格は消極的で自分の意志を持たず、流れに任せて生きているような人でした。

 彼女の人間としての「弱さ」に対して彼女の無意識は、夢を通して「父のように意志(剣)をもって戦え」とメッセージを送ってきたと考えられます。

まっつん
まっつん

 本には「患者(女性)のその後」についての説明はありませんが、もし、彼女が、この夢をきっかけとして生きる態度を変えていったのなら、彼女の心に「超越機能」が働いたといえます。

 偏った「生きる態度」が、無意識からの働きかけによって補償され、変わることができたのです。

 ユングは「夢の目的論」を提唱した人物です。人間が寝ている時に見る夢には何らかの目的があるのです。その目的のひとつは、失われた心のバランスを取り戻すことです。つまり、補償作用を働かせること、超越機能を作動させる鍵の役割が、夢にはあるのです。

困難を経た心の成長が本物

『ユング 夢分析論』(みすず書房)
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 ユングは、『ユング 夢分析論』(みすず書房)で、こう書いています。

「こころとは自己調整を行うシステムであり、体という生がそうするのと同じようにしてバランスをとっています。行き過ぎた過程に対しては、それが何であれ直ちに、そして確実に補償が始まります。この補償を抜きにしては、正常な新陳代謝も正常な心もありえません。」

『ユング 夢分析論』(C.G.ユング みすず書房)P6

 剣の夢は勇気を与えてくれます。しかし、その後の「生きる態度」を改めるプロセスは、決して楽な道ではなく、痛みを伴う困難の多い日々となるかもしれません。

まっつん
まっつん

 困難を通して変わった「心」は本物であり、本物の自己成長がそこにあります。

 超越機能が働くには、心の痛みを引き受ける覚悟が求められます。意識と無意識の対決から発生する「痛み」です。対決という困難を覚悟して行動を継続するなら、意識と無意識が統合され、その困難に見合った「心の成長」がもたらされることでしょう。

 人間の心は本来、困難に負けない豊かさと強さと働きをもっているものです。

 その働きが超越機能です。

 最後に困難な道を歩む人々を応援するユングの名言を記して、この論を終えます。

ユングの名言

人間はむしろ困難を必要とする。困難は人間の健康にとって欠かすことができない。

『創造する無意識』(C.G.ユング 平凡社)p127

(文:松山 淳


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