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リーダーシップは人それぞれ!-リーダーシップの定義-

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なぜ、リーダーシップは語られ続けるのか?

leadesrship

 「リーダーシップ」という言葉があります。

 なんとも聞き慣れた言葉ですが、「この言葉を聞いてどう思うか」は、人それぞれですね。リーダーシップに自信のある人は、肯定的にこの言葉をとらえれます。反対に、日頃から「もっとリーダーシップを発揮しろ」などと上の人間から小言を言われている人にとっては、あまり目にしたくない否定的な意味をもった言葉かもしれません。

 日本では、どちらかといえば、後者の人が多いのではないでしょうか。

 「リーダーシップ」という言葉を否定的にとらえるさらなる原因として、その意味の曖昧さがあります。「リーダーシップ」の研究は米国が本場ですが、皮肉をこめて、こんな言われ方をします。

The most studied, but least understood area.
(最も多く研究され、最もわかっていることが少ない領域)

 米国にて1960年代から「リーダーシップ」研究は、本格的になりました。そして、現在まで、ハーバード大学で、スタンフォード大学で、いや、大学だけでなく、コサルティング会社を含めた世界中の様々な機関で「リーダーシップ」は、研究され続けてきました。

まっつん
まっつん

とてつもなく優秀な人たちが結集して、約60年もの歴史を積み重ねても「最もわかっていることが少ない領域」と言われるのですから、「どんだけ難しいんだ」と、つっこみを入れたくなります。

 例えば、ありがちなリーダーシップの定義で、こんなのはどうでしょう。

「部下の気持ちを理解し、モチベーションあげながら、目標に向かって意思統一をしてチームをまとめあげ、求められる成果をあげるのがリーダーシップ」

 会社で上司をされていれば、また、何らかの組織でチームまとめるリーダーの立場であれば、「なるほど、そうかな」と納得できる部分があると思います。

リーダーシップ論は、現実に追いつけない。

 でも、何か違和感があります。これほど「言うは易し、行うは難し」のものはないからですね。さらっと読むと、「なるほど」と思うけど、いざ、「実行しよう」としたら、「そんな簡単なものじゃない」と、抵抗感が生まれてきます。

例えば、「部下の気持ちを理解し」というが、どの程度、理解すればいいんだ。とその前に、そもそも部下の気持ちを理解すれば、「モチベーション」は本当にあがるのか。それに、モチーベーションがあがれば、成果につながるのか。だいたい、どういった状態が、モチベーションのあがっている状態なんだ……。

 などなど、そんな疑問が、フツフツとわいてきて、「リーダーシップの定義」をすっと飲みこめなくなります。それは、リーダーが現場で直面している「現実」と「リーダーシップ理論」の間には、大きなギャップがあるからです。

まっつん
まっつん

研究して一般化された「理論」は、「現実」に追いつきません。個人個人、個々の現場で起きている全ての「現実」に対応する理論など、この世に存在しないのが、それこそ「現実」ですね。どんな時にも常に例外があります。ですので、リーダーシップの定義は聞いたり読んだりすると、その時は「そうだよね」と思うのですが、いざ実行しようと思うと、違和感・抵抗感が出てくるため、結局、「総論賛成・各論反対」となりがちです。

理論は現実に追いつけないのイメージ図

 特に、現場で成果をあげてきた経営者やリーダーたちかすると、「リーダーシップ」は、「机上の空論」にしか思えず、「そんなごたくを並べて、何になるんだ」「学者たちの言葉遊びであって、役に立つものではない」と力を込めて批判することになります。

なぜ、リーダーシップは語られる続けるのか?

 でも、不思議ではありませんか?

 では、なぜ、今もハーバード大で、スタフォード大で、ボストンコンサルティングで、マッキンゼーで、その他、世界中の多様な機関で「リーダーシップ」は語られ続けるのでしょうか?

 「机上の空論」「ごたく」「役に立たない」など、そういった痛烈な批判を受けながら、研究は続けられ、論文は書かれ、本は出版され、セミナーが開催され、企業ではリーダー研修が行われ続けています。

 なぜでしょう?その理由はとても簡単ですね。

多くの人たちが「リーダーシップ」を求めているから…。

 居酒屋でサラリーマンが言う。「日本の政治家はもっとリーダシップを発揮してアジア諸国をまとめるべきだ…」。中間管理職たちが会議の後に愚痴る。「うちの経営陣にリーダーシップが足りてないから、ダメなんだよ…」。若手社員が嘆く。「うちの部課長には、ビジョンもなければ、戦略もないで、あれでよくリーダーシップをとろうなんて思うよな…」。

 このように、「リーダーシップ」が日常会話に登場する時、とかくネガティブな文脈で登場します。はっきりいって、それは「悪口」です。「悪口」は、そこに「問題」があるから発生します。と同時に、「問題解決」を望んでいるから「悪口」は生まれるものです。

 多くの人たちが、政治家や経営陣や中間管理職(その他、リーダーと呼ばれる人たちに)の「悪口」を言うのは、リーダーシップを発揮して、解決してもらいたいことが、たくさんあるからですよね。

 この事実は、この社会で働き・暮らす多くの人が、「リーダーシップ」を求めていることを意味します。

多くの人がリーダーッシプを求めている画像
まっつん
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社会が運営されるために組織(行政機関、民間企業など)を必要とし、組織がリーダー(首相、大臣、政治家、上級官僚、社長、上司など)を必要とし、そこに、「リーダー」(導く人)と「フォロワー」(ついていく人)という関係が存在する限り、「リーダーシップ」への要望は、決してなくなることがありません。

 「リーダーシップ」を求める人たちが常にいるので、それに答えようとして「リーダーシップ」は語られ続けます。例え、「机上の空論」「ごたく」「役に立たない」と言われ続けても、です。


研究者によるリーダーシップの定義!

 社会生活を営むために「リーダーシップ」を求める声、常に発生し続けるので、「リーダーシップ」を「求める人」と「求められる人」が生まれます。

 「求める人」は、リーダーシップという言葉を漠然と使っていても、「なんとなく」意味が通ってしまうので問題ないでしょう。でも、「求められる人」、つまり、リーダーシップを発揮するリーダーは、その「なんとなく」を「はっきり」にできるといいですね。

 そこで、ここでは大胆に、かといって学術的には決して的外れでない言葉で、リーダーシップを一言で表現して、頭に入れてしまいましょう!

「リーダーシップとは◯◯力である。」

 この◯◯に漢字二文字を入れるとしたら、何が入るでしょうか?

 「指導力」「統率力」「決断力」…などなどいろいろと考えられますが、答えはこちらです。

影響力

 「リーダーシップとは人が人に影響を及ぼす力」です。

 では、5つの文献から「影響」の含まれた、リーダーシップの定義をピックアップしてみましょう。

リーダーシップの定義

by 産業心理学者ゲーリー・ユクル/ニューヨーク州立大学教授

「リーダーシップとは、集団もしくは組織における諸活動や諸関係を導き、形づくり、促進するように、あるひとによって、他の人びとに対して意図的に影響力が行使される過程からなっているという過程がそれだ」[Yukl,Gary(1988) Leadership in Organization 4thed. Upper Saddle River, NJ:Prentice Hall,p3]『リーダーシップ入門』(金井壽宏 日本経済新聞社)p61

by 組織心理学者マーティン.Mチェマーズ/カリフォルニア大学教授

リーダーシップの定義とは、「ある共通の課題の達成に関してある人が他者の援助と支持を得ることを可能にする社会的影響過程」というものである。

『リーダーシップの統合理論』(M.Mチェマーズ 北王路書房)p1

by SL(Situational Leadership)の提唱者 ハーシー&ブランチャード

リーダーシップは、何らかの理由から、他人やグループに影響を及ぼそうとする試みである。影響力とリーダーシップは、互換性のある同意語として使える。

『行動科学の展開』(P・ハーシィ K・H・ブランチャード  生産性出版)p141

by PM理論の提唱者 日本のリーダーシップ研究の大家 三隅二不二

一人の人間が、他者に対して働きかけ、指示したり、支配したりして他者に一定の影響を及ぼす過程がリーダーシップである。

『新しいリーダーシップ』(三隅二不二 タイヤモンド社)p19

by 金井壽宏/神戸大学大学院経営学研究科教授

「リーダーシップとは、フォロワーが目的に向かって自発的に動き出すのに影響を与えるプロセスである」

『サーバント・リーダーシップ入門』(金井壽宏 かんき出版)p22-23

 いかがでしょうか。ユクル教授とチェマーズ教授の定義は、なんだか、一読しても、すっと頭に入ってきませんね。

 でも、ここでポイントとなるのは、リーダーシップ定義の細部にこだわることではなく、「リーダーシップ」は「影響力のこと」と、一言で言えるようにすっきりさせておいて、後はもう、リーダーシップの実践に重きを置くことです。

 ただ、もしもう一言、付け加えるとしたら「対人」という言葉です。

リーダーシップとは対人影響力のこと

 なぜ「対人」を付け加えるのかといいますと、「社会情勢」「時代の空気」「自然環境」など、様々な要素から人は、影響を受けるからです。

 人が人に与える影響力がリーダーシップです。

 そう考えると、当たり前ですが、リーダーシップとは、「人のコト」です。「人のコト」を考えるのが、リーダーシップです。

 ですから、「どのようにすれば、人に影響を与えられる人間になるのか」と考えることが、リーダーシップを磨きあげる基本になります。

 そして、リーダーシップが「人のコト」だとするならば、人の数だけリーダーシップの「かたち」があるということです。

 どのように影響力を発揮するのかは、その人の「個性」が深く関わってきますので、その人が、その人なりに自分で身につけたリーダーシップが正解だということになります。

 そこで、こう言えるのです。

リーダーシップに関する唯一無二の絶対的な正解はない。

 あなたには、あなたらではの、隣の課の山本課長には、山本課長ならではの、田中部長には、田中部長ならではのリーダーシップの「正解」があります。

 ですから、リーダーシップの定義にはこだわるのは、ほどほどにして、自分なりのリーダーシップに関する「持論」をつくりあげていくこと、そういった意識を強く持つことが、実は、あなたのリーダーシップを強化します。

 ハーバードだスタンフォードだと右往左往することはありません。そこで語られる数々の理論は、リーダーシップの自分なりの「持論」を形成していく時の指針になります。これは理論の有意義な点です。

 とはいっても、リーダーシップで大切なことは、何が語られているかではなく、自分がどう考え、どう動くかですね。

 リーダーシップは、人それぞれ。それぞれだから、リーダーシップは誰にでも発揮できる力なのです。

(文:松山淳)


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