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リーダーシップのアイオワ研究

リーダーシップのアイオワ研究

 リーダーシップ理論に「アイオワ研究」と呼ばれる実験があります。社会心理学者クルト・レヴィンの指導のもとアイオワ大学の研究生であったロナルド・リピット(Ronald Lippitt)とラルフ・ホワイト(Ralph K. White)が行った実験です。

 子どもたち(グループ)に課題を行わせ、それを監督するリーダーのリーダーシップ・スタイルを変えることで、子どもたちの反応や課題の成果を計測するのです。

 リーダーシップ・スタイルは「専制(独裁)型」「民主型」「放任型」の3つでした。この3つの違いによって子どもたち(グループ)の様子はどうなるのでしょう。

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まっつん

 実験がアメリカのアイオワ大学のメンバーで行われたので「リーダーシップのアイオワ研究」と呼ばれ、広く知られています。「リーダーシップのアイオワ研究」と書くと長くなるので、ここから略して「アイオワ研究」とします。

 それでは…実験内容やその結果について、ちょっとお時間をいただきまして、お話ししていきます。

「アイオワ研究」が生まれた背景

 「アイオワ研究」を指導したクルト・レヴィン(Kurt Lewin 1890-1947)は「社会心理学の父」と呼ばれる有名な心理学者です。ドイツ(ベルリン大学)とアメリカ(アイオワ大学、マサーチューセッツ工科大学)で活躍しました。実験室や診療室に閉じ込められていた心理学を、社会に起きる現実の問題と結びつけ解決し、心理学の可能性をおし広げた人物として有名です。

クルト・レヴィン
クルト・レヴィン
(Kurt Lewin 1890―1947)

 レヴィンについて詳しくは、コラム57「クルト・レヴィンの功績」で書きましたので、参考になさってください。

 リーダーシップ・スタイルの「専制(独裁)型」「民主型」「放任型」「リーダシップのレヴィン類型」と言われることもあり、あたかもレヴィン自身が、この実験を考え出したかのように書いている文献もあります。

 でも、この研究の詳細を思いつき実験計画をまとめたのは、研究生のロナルド・リピット(Ronald Lippitt)です。『クルト・レヴィン』(A.J.マロー 誠信書房)を読むと、そのことがわかります。リピットは、こう言っています。

 私は彼(レヴィン)に自分が今まで観察して来て特に関心を深めたリーダーシップこのことや、さまざまな集団作業状況について話し、またいろいろな種類のリーダーシップの影響について研究する際の私の着想について話しました。

『クルト・レヴィン』(A.J.マロー 誠信書房)p214
※(レヴィン)は本コラム執筆者「松山」が追記

 リピットの提案を受けてレヴィンが乗り気になり、リピットが研究計画をたててアイオワ研究は進められることになったのです。当初、リピットの計画は3類型ではなく、2類型「専制(独裁)型」「民主型」だけでした。

 ですので最初の実験は、「専制(独裁)型」「民主型」の2類型のみです。リピットの実験が行われた後に、ラルフ・ホワイト(Ralph K. White)がアイオワ大学に特別研究員としてやってきます。

「放任型」は、偶然生まれた。

 ホワイトもリピットと同じような実験構想を持っていて、リピットの研究に強い興味を示しました。そのため、ホワイトも研究チームに参加することになったのです。

 ある時の実験で、ホワイトは「民主型」でグループを統率しようとしていました。しかい、ホワイトは「民主型」リーダーシップをうまく発揮できなかったのです。結果、それは「放任型」に近いものになりました。

 これを観察していたクルト・レヴィンは、「民主型」と「放任型」の違いに気づきました。子どもたちの反応が明らかに違うからです。レヴィンは「放任型」を実験のリーダーシップ・スタイルに加えるべきだと考えました。こうして「放任型」が加わり、2類型は「専制(独裁)型」「民主型」「放任型」の3類型になったのです。

https://www.earthship-c.com/wp/wp-content/uploads/2019/08/jun-face.jpg
まっつん

「失敗は発明の母」とはこのことです。ホワイトが失敗してくれたからこそ、後世に残るレヴィンのリーダーシップ3類型が生まれたのです。「失敗は無駄にならない」ですね!


「アイオワ研究」の実際

実験スペースの模様。

 心理学の本『パブロフの犬:実験でたどる心理学の歴史』(アダム・ハート=デイヴィス 創元社)に、「アイオワ研究」の実験スペース図が掲載されていました。

リーダーシップのアイオワ研究の実験スペースの図
リーダーシップのアイオワ研究の実験スペース・レイアウト図
『パブロフの犬:実験でたどる心理学の歴史』(創元社)p043掲載図を元に作成

 『パブロフの犬』(創元社)によると、この実験スペースは「屋根裏部屋」に作られたそうです。それにしても大きな屋根裏部屋ですね。

 レヴィンの論文「社会的空間における実験」(1939年)にある記述を参考に、最初の研究計画をまとめると、ざっとこんな感じです。

 

アイオワ研究概要
🔸対象者:10〜11歳の少年少女
🔸回数:11回
🔸グループ数:2グループ
🔸参加テーマ:「お面づくりクラブ」への参加
🔸グループ課題:お面づくり など
🔸リーダー役:成人学生
🔸対象者の関係性:少年少女はモレノ・テストによってリーダーシップの度合や対人関係の質を均等にした。
🔸実験条件:子どもたちは各類型のリーダーを体験する
『社会的葛藤の解決―グループ・ダイナミックス論文集 (1954年)』 (クルト・レヴィン 訳:末永現代社会科学叢書)p99

 子どもたちは、自分たちが「お面づくりクラブ」に参加すると思って集まっています。上にある「モレノ・テスト」は、グループの人間関係を明らかにする心理テストです。リーダーシップを率先してとる「気の強い子」もいれば、「引っ込み思案な子」もいます。あの子は好き、あの子は嫌い。そんな人の好き嫌いもありますね。子どもたちの性格や関係性は、実験に大きな影響を与えます。ですので心理テストを行い、条件を均等にしようとしたのです。

 実験の課題は、「お面づくり」と書きましたが、その他、「家具の製作」「クラブルームの装飾」「石鹸や木材を材料した彫刻」「模型飛行機づくり」などが行われました。

「専制(独裁)型」民主型」「放任型」の違い

 さて、実験のスペースと子どもたちは、そろいましたので、では、続いて、「専制(独裁)型」民主型」「放任型」がどんな風にふるまったかですね。これも『パブロフの犬』(創元社)がわかりやいので、そちらを参考にまとめてみます。

レヴィンのリーダーシップ3類型
  1. 専制(独裁)型
     姿はスーツにネクタイ。子どもたちに作業場所、作業のやり方など明確な指示を出し、作業を進めさせる。子どもたちの輪に入らない。
  2. 民主型
     「何をするか」は、作業前に子どもたちと全体ミーディングを開き決める。役割分担も子どもたちが決める。リーダーは作業に参加する。ジャケットは脱ぎ、腕まくりをしている。
  3. 放任型
     静かに座っていて、子どもたちに作業を任せる。干渉はほとんどしない。

 3類型には、明らかな違いがありますね。さてさて、この3類型のリーダーによって率いられた子どもたちはどうなったのでしょうか。

 それでは、「専制(独裁)型」から順番に、その結果をお話ししていきます。

「専制(独裁)型」の結果

 「専制(独裁)型」のリーダーに率いられたグループの最大の特徴は、人間関係が悪化したことです。レヴィンは、次のように論文で書いています。

 民主制に較べて専制では約30倍もの敵対的支配行動がみられ、他人の注意をひこうとする要求が強く、敵意ある批評が多かった。

『社会的葛藤の解決―グループ・ダイナミックス論文集 (1954年)』
(クルト・レヴィン訳:末永現代社会科学叢書)p102

 子どもたちは「専制(独裁)型リーダー」が強い口調で何もかも決めてしまうので、ストレス状態に陥ります。不平不満がたまるもののリーダーには言えません。たまったストレスを子ども同士でぶつけあうことになります。結果、人間関係は悪化し、雰囲気もギスギスしたものになります。

 子どもたちは攻撃的になり、自己中心的で、遊び道具を破壊したり、取り組む課題に「無関心」になりました。

 さらに、「いじめ」が発生しました。「クラブをやめたい」という者が4人現れ、実際に4人がやめてしまいました。「民主型」「放任型」で、「クラブをやめたい」という子どもは出ませんでした。

「民主型」の結果

 「民主型」のリーダーに率いられた子どもたちには、意思決定権がありました。リーダーは、できるだけ子どもたちに話し合わせ、何をするのかを子どもたちに決めさせました。

 その結果、子どもたちは互いによく協力しあいました。作業への満足度も成果も高く、クラブルーム全体を使って作業をしていました。

 実験を主導したリピットは、こう言っています。

 独裁的に指導された集団でいがみあいがずっと多くまた敵意が強かった。それに対して民主的に指導された集団ではずっと友好的であって仲間意識が強かった。

『クルト・レヴィン』(A.J.マロー 誠信書房)p218

 「民主型リーダー」のグループでは、「われわれ感情」(“we” feeling)が、「専制型」の2倍ほど頻繁に起きたと、レヴィンは論文に書いています。

 「われわれ感情」(“we” feeling)について、詳しい説明がないのですが、これは、リピットのいう「仲間意識」のことだと考えられます。「私たちはみんな仲間」であるという「仲間意識」「チーム意識」が強ければ、互いに協力しあいますし、助け合おうとしますね。

 リーダーがチームをいかにつくるか。これは「チーム・ビルディング」にもつながる話です。

 4つの集団(グループ)で実験した時、20人中19人の子どもが、民主型リーダーシップ・スタイルが「よい」と答えています。

「放任型」の結果

 「放任型」リーダーに統率されたグループでの子どもたちは、攻撃的にはなりませんでしたが、課題に取り組もうとせず、部屋の中をうろつき回っていました。

  『クルト・レヴィン』( 誠信書房)の著者A.J.マロー は、「放任型」について、こう書いています。

放任の雰囲気では、仕事本位の行動や、メンバー相互の話し合いが、他のふたつのリーダーシップのいずれの場合よりも少なかった。独裁的な集団から放任にそれに移ってきた少年のいくたりかはびっくりしてしまい、どうしてよいかわからなかった。

『クルト・レヴィン』(A.J.マロー 誠信書房)p218

 それはそうですね。「あれやれ、これやれ」と指示命令されていていたのに、指示も何もされない「放任型」になったら、びっくりしますね。

 リーダーシップにおいて、「放任」=「ほったからしは」は、やはりよくなく、「関わり行動」が大切だということです。


まとめ リーダーシップは育成できる!

 クルト・レヴィンは、リーダーシップ・スタイルの違いによって、あまりに明白な違いが出たので、とても満足したそうです。

 レヴィンは、とても明るく話し好きで、外向的な性格でした。レヴィンのリーダーシップ・スタイルは、学生と話し合って多くを決めていく、まさに「民主型」でした。

 レヴィンはユダヤ人で、独裁政権ナチスの迫害から逃れてアメリカに渡ってきています。そしてアイオワ大学で「専制型」「民主型」を比較する実験を指導しました。この実験を行う際に、「専制型」にナチス政権を重ねあわせていたことでしょう。

 レヴィンは論文「社会的空間における実験」(1939年)にこう書いています。

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レヴィン

 「生命に溢れた、友好的な、開放的な、協力的な集団が、ものの半時間も経たないうちに積極性のない、かなり冷淡にみえる集まりに変わってしまったのである。専制から民主制への変化は民主制から専制への変化よりも幾らか時間がかかるように思われた。専制主義は個人に押しつけられるが民主主義は学習せねばならないのである。

『社会的葛藤の解決―グループ・ダイナミックス論文集 (1954年)』 (クルト・レヴィン訳:末永現代社会科学叢書)p108

「民主主義は学習せねばならないのである」

 最後の言葉が胸に響きます。

民主型リーダーシップを発揮し、メンバーの創造性や成果を高めるために、リーダーたちは「学び」続けなければなりません。「学び」続ければ、よりよいリーダーシップを発揮できるようになるのです。

 そうレヴィンが考えるのも、学生たちがトレーニングによって「専制(独裁)型」民主型」「放任型」を使い分けることができたからです。リーダーシップ・スタイルは変えられるし、「学ぶ」ことでで育成できるのです。

 後に、クルト・レヴィンはMTI(マサチューセッツ工科大学)に移り、「MIT集団力学研究センター」を創設することになります。これは、リーダーシップをトレー二ングする機関でもありました。

 その原点は、「リーダーシップのアイオワ研究」にあるといえるでしょう。

 リーダーシップ理論としては、もう「古典的研究」に分類されるものですが、とてもわかりやすいので、今も話題になる「アイオワ研究」です。3つの類型はとても覚えやすいですし、自分のリーダーシップ・スタイルをチェックするのにも使えますね。

 メンバーの力を引き出すために「民主型リーダー」を目指しましょう!

(文:松山淳)