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逆境を乗り越える人たちに共通する3つのこと

 とても厳しい逆境に追い込まれながら、心の折れない人がいます。何度も不運に見舞われて、その度に、落ち込みふさぎこみはするものの、再び、たくましく立ち上がってくる人たちがいます。

 過酷な環境に置かれ時、再起・回復する心の力を「レジリエンス」と言います。この「レジリエンス」を研究する心理学が「レジリエンス心理学」です。

 あなたがこれから読むことは、「レジリエンス心理学」に関することであり、逆境を乗り越える人たちに共通する特性についてです。

逆境に負けないレジリエンスの高い人

 本稿を書くにあたって参考にしたのは2冊の本、『「逆境に負けない人」の条件』(フォレスト出版)『凹まない人の秘密』(ディスカヴァー21)です。

『「逆境に負けない人」の条件』(アル・シーバート フォレスト出版)
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(アル・シーバート フォレスト出版)

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レジリエンス研究の大家アル・シーバート博士

 2つの本の著者アル・シーバート博士(Al siebert)は、逆境を生き抜いた人に焦点をあて、40年以上にわたり研究してきた人物です。主に、戦争や災害から生還した「サバイバー」(Survivor)を研究対象にしていました。ミシガン大学で臨床心理学の博士号を取得し、ポートランド州立大学で教鞭をとっています。

アル・シーバート博士(Al siebert)
アル・シーバート博士(Al siebert)
photo of Al Siebert, an American author and educator

 かつてシーバート博士は、落下傘部隊に所属する隊員でした。その時の教官たちは太平洋戦争の激戦を生き延びた精鋭たちです。朝鮮戦争の時には、10人に1人しか生き残れなかった戦闘をくぐり抜けています。シーバート博士は、とんでもない「鬼教官」を想像してましたが、そうではありませんでした。

 シバート博士は、教官たちをこう表現しています。

シーバート博士
シーバート博士

 彼らは、自己中心の、弱肉強食的なところはまったく持っていなかった。むしろその逆。自分自身にホントの自信を持っていたので、意地悪をしたり強がったりする必要はまったくないようだった。「いざ」となれば何ができるかがわかっていたので、誰かに自分を「証明」する必要がなかったのだ。
 つまり彼らは、戦場で行動を共にしたい、と思わせる人たちだったのだ。

『「逆境に負けない人」の条件』(アル・シーバート フォレスト出版)p18

 日本でも「弱い犬ほどよく吠える」と言います。レジリエンスの高い教官たちは、自信があるので、とても落ち着いていて、しかし、何か変化があると、それにすぐに気づき、機敏に動く人たちでした。

 博士は、教官たちのことを「リラックスしていると同時に、鋭かった」と書いています。

 落下傘部隊での体験が、博士のキャリアを決定づけます。博士は大学で心理学を学んでいましたので、疑問をもつのです。どうして、教官のような逆境に負けない「レジリエンスの高い人」と、その反対の「低い人」がいるのか。この問いに答えようと、40年以上におよぶ研究が始まります。

まっつん
まっつん

 博士が2冊の本で述べていることは、もちろん、とても書ききれませんので、ここでは、博士の考える「逆境を乗り越える人の特性」を3つに整理して、他の心理学の知識を交えながら、できるだけわかりやすくお話ししていこうと思います。

 まず、このコラムで解説する3つの特性をご覧ください。

逆境を乗り越える人たちに共通する3つのこと
  1. 全ては学びだと考える
     どんな辛い経験から学ぶことができ、自分を成長させてくれると信じている
  2. 矛盾する性格をもつ
     「楽観的でありながら悲観的である」といった矛盾する性格をあわせもっている
  3. 運命は自分で決める
     自分の置かれた環境に働きかけて自分の力で自分の運命を変えられると考えている

『「逆境に負けない人」の条件』(フォレスト出版)『凹まない人の秘密』(ディスカヴァー21)を元に整理

 いかがでしょうか。恐らく、このページにたどり着き、わざわざ時間を割いて読んでいる勉強家のあなたであれば、「自分にも当てはまるな」と感じるものがあるのではないでしょうか。

 他にも、「セレンディピティ」「シナジ一」「ユーモア」などの興味深いキーワードがあるのですが、それらは別の機会に譲ることにして、ここから3つの特性について、ひとつひとつ説明していきます。


❶ 全ては学びだと考える

 一番目は、「全ては学びだと考える」です。

 シーバート博士は、戦争や災害など、厳しい状況を生き延びた人にインタビューをしたり文献を研究したりしています。

 ベトナム戦争で捕虜となったチャーリー・プラム少佐は、6年間、独房に拘置され日常的に激しい拷問を受けました。少佐は当時を振り返り「きっとあの6年間は、人生の中で一番価値のある月日だったと思う。苦境に置かれることで人間は学ぶものは大きい。これは何か意味があるはずだ」(『「逆境に負けない人」の条件』p22)と言っています。

 スコット・オグラーディ大尉は1995年、ボスニア上空で撃墜され、森の中をさまよい奇跡的に生還したパイロットです。大尉は「運が悪い時ってあるよね。ただ自分に与えられたこの条件で、僕はベストを尽くそうとしただけだ」(前掲同書p20)と述べました。

 この2人に共通するのは、神様を呪いたくなるような過酷な環境に突然、放り込まれたにもかかわらず、その体験をポジティブにとらえていることです。

 アルバート博士は、長年の研究を総括するように、こう言っています。

シーバート博士
シーバート博士

 僕たちが人生に向き合うその態度が、生き残れるか、さらには勝ち残れるかどうかを決めている

『「逆境に負けない人」の条件』(アル・シーバート フォレスト出版)p18

 博士の言葉にある「態度」とは、現実の「解釈」の仕方によって変化する「生きる姿勢」のことです。「解釈」が違えば、運命に向き合う態度が変わり、結果的に、逆境を乗り越えるか否かが決まるのです。

受けとめた方の違いが現実を変える

 同じ職場で同じ仕事をしていても、文句ばかり言っていつもしかめっ面しながら働く人がいる一方で、多少の不平不満があり、愚痴はこぼすことはあっても、基本的には元気に笑顔で働く人がいます。

まっつん
まっつん

 2人の環境は同じです。なぜ、違いが生まれるのしょうか。なぜならば、会社の存在や自分の取り組む仕事への「解釈」が違うからです。解釈とは、今ある現実を「どう受けとめ」「どう理解し」「どう考えるか」です。

 例えば、文句ばかり言う人は、会社とは社員の労働を搾取する「悪の権化」であり、仕事とは人を疲れさせる苦役でしかないと受けとめています。一方で、元気に働く人は、会社とは自分を成長させてくれる場であり、仕事とは仲間と切磋琢磨し人間性を高めてくれるチャンスの時間ととらえています。

 「レジリエンスの高い人」は、「どんな時にも意味がある」「この苦しい体験も、学びの時で、後で必ず役に立つ日がくる」と、自分の置かれた状況が後々、自分にとってプラスになると「考える癖」をもっています。

 ですので、逆境に強い人になるには、「全てのことは学び」であり「自分にプラスになる」と、そう「考える癖」をつけることが大事です。

学びとは

 博士の定義によると「学習」とは「経験することによって起こる、人間の行動の比較的恒久的な変化」のことです。

 人は学ぶことによって変化していきます。その変化には、マイナスの変化とプラスの変化があります。マイナスは、人間性がねじ曲がり、世の中を恨んで生きるようになる変化です。プラスは、人として成長し人格・人望が高まり、世のため人のために生きるようになる変化です。

 逆境を乗り越えていく「レジリエンスの高い人」は、自身の経験から何かを学ぼうとします。経験から教訓を引き出し、次に活かしていこうとします。「全ての経験が学びでありプラスになる」と考えることによって、折れそうになる心を支えているのです。

シーバート博士の名言
 苦境をバネに飛躍できるってのは、どういう人なんだろう?
 たとえばその苦境に動揺するが、「すぐに何とかなる」と前向きに考えることができる人だ。「今の状況をしっかりとつかもう」とか、「この状況では僕に何ができるか?」を自分に問いかけて、前向きに受け止めていくことができる人たちだ。

『「逆境に負けない人」の条件』(アル・シーバート フォレスト出版)p144

❷ 矛盾する性格をもつ

『凹まない人の秘密』(アル・シーバート ディスカヴァー21)
『凹まない人の秘密』
(アル・シーバート ディスカヴァー21)

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 シーバート博士は、逆境に強い人が、「矛盾する性格要素」を持ちあわせている、と強調します。「矛盾する性格要素」とは、こんなことです。

・独創的でありながら分析的
・真面目でありながらふざけている
・勤勉でありながら怠け者
・繊細でありながら図太い
・楽観的でいながら悲観的
・外向的でありながら内向的
『凹まない人の秘密』(アル・シーバート ディスカヴァー21)p106

 いかがでしょうか。「自分の中に違う自分がいる」と感じたことはないでしょうか。あるいは、「どっちが本当の自分がわからない」と悩んだ経験はないでしょうか。

 ちなみに「欲求5段階説」で有名な心理学者マズローは、こう言っているそうです。

マズロー
マズロー

 優秀で精神的にも健康な人や、自己実現している人を評定すると、ある点では非常に利他的で、ある点では非常に利己的という極端な結果が出る

『「逆境に負けない人」の条件』(アル・シーバート フォレスト出版)p86

 マズローが言うように、逆境に負けない「レジリエンスの高い人」たちは、「矛盾する自分」を認め、上手に活用しているのです。

シーバート博士
シーバート博士

相反する性質を自分の中に多く持つことは、その人の精神的な不安定さの表れではないかと言う人がいる。だが、それはまったく逆だ。自分の中でうまく処理された心の多様性は、心理的な安定と、あらゆる状況に対応する柔軟性をもたらしてくれる。

『凹まない人の秘密』(アル・シーバート ディスカヴァー21)p108-109

 矛盾する自分は「心のしなやかさ」をもたらしてくれます。自然界は、種類の違う様々な生物が共に生きてこそ、環境が安定し進化していきます。それと同じように、人の心も「矛盾するいろいろな自分」=「多様性」があることで「しなやかな強さ」が生み出され、さらに成長していくのです。

逆境に負けない人も、落ち込むよ!

まっつん
まっつん

 よくある誤解は、「レジリエンスの高い人」はまったくメンタル的に問題を起こさないという点です。そんなことはありません。「レジリエンスの高い人」も悲観的になり落ち込みます。疲れ果てメンタル的にダウンすることもあります。ものすごくネガティブになって、「もうダメかも」と考え、夜、眠れなくなることもあります。でも、そうした状況から立ち直ることができれば、「レジリエンスがある」といえるのです。

 辛い時ほど、矛盾する自分が役に立ちます。

 例えば、仕事で失敗し、とても悲観的になって、気分がふさぎ込み体はだるく、何もやる気がしない状況になったとします。そんな時に、心の奥底の方から、「今は辛いけど、まあ、なんとかなるよ」と語る、悲観とは矛盾する楽観的な自分の存在を感じることがあります。この「矛盾する自分」を感じられるのが、レジリエンスの高い人たちです。

 これは「いろいろな自分がいていい」と「矛盾する自分」を認め、OKを出しているからできることですね。

深層心理学者ユングの性格タイプ論は矛盾の組み合わせ

 矛盾する性格要素は、誰もが持っているものです。ですので、誰もがレジリエンスを高めることができます。

 「世界三大心理学者」のひとりC・G・ユングは、性格タイプ(類型)論を提唱した心理学者です。性格タイプは二律背反する6の要素から成り立ちます。

ユングの性格タイプ論

「外向」←→「内向」
(Extraversion)←→(Introversion)
「感覚」←→「直観」
(Sensing)←→(Intuition)
「思考」←→「感情」
(Thinking)←→(Feeling)

 各要素の詳しい説明は別の機会にして、わかりやすいのは、「外向」と「内向」ですね。心のエネルギーが外に向きやすい人(外向)と内に向きやすい人(内向)がいます。

 このタイプは、生まれもって決まったものです。生まれてくる時に、「外向タイプ」か「内向タイプ」かは決まっているのです。

 矛盾する2つの要素を誰もが持っています。「外向タイプ」の人も「内向」することはあり、内向タイプの人も「外向」することあります。

 「外向タイプ」の人が、目をつむり過去の経験に照らし合わせて黙って何かを考えている時は、内面に「心の目」が向けられ内面に心のエネルギーが注がれています。これが「内向」していることです。

 反対に、「内向タイプ」の人が、会議で参加者の反応を見ながらプレゼンしている時には、外の世界に「心の目」が向けられ、外に心のエネルギーが注がれているので、これは「外向」していることになります。

まっつん
まっつん

このように人は、矛盾する性格要素を持ち、日頃から使い分けて現実に適応しているのです。ですから、「矛盾する自分を感じたことはないから、私はレジリエンスは高くならない」と悲観的になることは、一切ありません。

 矛盾する自分に不安を感じて、そのことを人に言えず、悩むことがあります。思春期や「中年の危機」の時は、特にそうでしょう。「いったい本当の自分は何だろうか」と…

 シーバート博士は、数々の講演で、「心の多様性は、心理的な安定と、あらゆる状況に対応する柔軟性をもたらしてくれる」点を話すと、多くの人が、とても安心するといいます。つまり、「矛盾する自分」に、それだけ多くの人が不安を感じているということです。

 「強さ」とはしなやかさです。「しなやか」であるためには、いろんな自分を持つことです。ですから矛盾していていいのです。笑ったり泣いたり、怒ったり喜んだり、いろんな自分がいて、それをしっかり自分で認めて、人は、逆境に負けない「レジリエンスの高い人」になっていくのです。 

シーバート博士の名言
もしあなたが自分はこうである、という固定的なイメージを持っているとしたら、あなたは自分の選択肢を自ら狭めていることになる。自分も、人も、さまざまな面を持っていることを認めたときに、あなたは多様な考えを自由に駆使する人間になれるし、また自分の思ってもいないことを他人がしても、落ち着いていられるのだ。
『凹まない人の秘密』(アル・シーバート ディスカヴァー21)p109

❸ 運命は自分で決める

 逆境に負けない「レジリエンスの高い人」たちは、「自分の人生は、自分の力でなんとかすることができる」「自分でコントロールできる」と考えています。

「自己統制感」とは。

 自分の行動が何かよってコントロールされていると感じる度合いのことを「自己統制感」といいます。

 「自己統制感」は、「内的統制」と「外的統制」の2つに分類できます。

2つの自己統制感
  1. 内的統制:自分の行動は自分がコントロールしている
  2. 外的統制:自分の行動は自分以外によってコントロールされている

『「逆境に負けない人」の条件』(アル・シーバート フォレスト出版)p150

 逆境を乗り越えていく「レジリエンスの高い人」は、「内的統制」の持ち主たちです。シーバート博士の著では、「内的統制型」の人たちを「自分コントロール型」とし、「外的統制型」の人たちを「他人コントロール型」ともしています。

シーバート博士
シーバート博士

 今までのいくつもの研究で、自分コントロール型の人が、困難な状況にもうまく対応できるということが明らかになっている。彼らは、自分の人生の舵を握っているのは自分自身だと感じていて、自分が状況に影響を与えることができると思っている。

 それに対して他人コントロール型の人は、被害者意識が強く、人のせいにすることが多いとわかっている。自分が置かれた状況は自分のせいではなく、他人や外的な要因のせいだと考えてしまうのだ。

『凹まない人の秘密』(アル・シーバート ディスカヴァー21)p43

 シーバート博士は、セミナーを開催して、いろいろな質問を受けてきました。

「どうしたら同僚の愚痴をやめさせることができますか?愚痴を聞いていると気がめいるんです」

 そう質問する人に、愚痴を聞いてもストレスならない方法を伝えても、耳を貸さないそうです。その人は、問題はいつでも他人や世の中にあると考えがちな「他人コントロール型」(外的統制型)の人ですね。

 「他人コントロール型」の人は、「他人が変わる」ことを望んでばかりいて、「自分がいかに問題に対処するか」を考えようとしないそうです。 

 「自己コントロール型」の人であれば、人間関係の原則「他人を変えたいのであれば、自分を変えること」を守り、「他人」にフォーカスせず「自分にできること」に焦点をあてて行動していくことでしょう。

 以前、私がインタビューした某企業をリストラされたビジネスマンも、「自己コントロール型」の人でした。そのことについて、次、お話しします。

「リストラ部屋」での出来事。

 経営状態の悪化から会社が社員を解雇することは、アメリカでは頻繁にあることです。日本でもバブル崩壊後「リストラ」という言葉が一般化しました。1990年代、「失われた10年」の不況期には、多くの企業で希望退職者の募集が行われ、実質的に会社都合での解雇が行われました。

 ある大企業では「リストラ部屋」「追い出し部屋」と呼ばれる、「雇用されているが仕事のない社員」の集まる部屋が用意されました。インタビューしたのは、その「リストラ部屋」を経験した人でした。ここではAさんといたします。

 Aさんは、こんな話しをしてくれました。

元某大手社員
Aさん
元某大手社員 Aさん

 「リストラ部屋にいる人たちは、毎日、出社してきては、来る日も来る日も、会社の文句を言っていました。怒り嘆き無気力になり、自分たちがこうなったのは会社のせいだ、会社が悪いと、愚痴りつづけていました。私も、最初はそうでした。ですが、文句ばかり言う人たちの姿を見て、やがて疑問を持つようになり、このままでは自分がダメになると思い、希望退職を願い出て、転職に成功することができたのです」

 この大手企業は現在、ある会社に吸収合併され、その名を残していません。リストラ部屋で文句を言い、くすぶり続けた人たちは、その事実だけを切り取れば「他人コントロール型」の人だったといえるでしょう。

 それまでAさんは、懸命に働き業績もあげ、ビジネスマンとして会社に貢献しているという自負がありました。ですからリストラの対象となった事実は、心に強いダメージを与えるトラウマとなるような出来事でした。

 しかしAさんは、リストラという逆境に置かれながら、「誰が悪い」「誰のせいだ」と、他の誰か何かを「断罪」することに心のエネルギーを注ぐのではなく、「自分のできること」にフォーカスをして「次の行動」を起こしました。

 「次善の策」(セカンド・ベスト)を頼りに、「次の行動」をしていくのが「レジリエンスの高い人たち」に見られる特徴です。

 「次善の策」とは、「最善策ではないがまずまず良い策。次によいと思われる方策」Web版「実用日本語表現辞典」)のことです。

 ちなみにAさんは、その後、個人起業もして、現在では、ある会社に所属しつつ、自分でも事業を運営するという活躍ぶりを見せています。

まっつん
まっつん

 長い人生、失敗はつきものです。不意に逆境に放り込まれることもあります。世の中は不条理で、不運に見舞われることが、自分のせいでも、自分の責任でもないことは、いくらでもあります。その時、世を恨む「他人コントロール型」の人間になるのか、それとも、状況を「引き受けて」、「ではどうするか」と自分にできることを考え、行動していく「自己コントロール型」の人間になるかで、人生は変わってきます。

「誰が悪い」「何が悪い」ではなく、「自分に今、できること」にフォーカスし、次の行動である「次善の策」(セカンド・ベスト)をとっていくのが、逆境に負けないレジリエンスの高い人たちです。
シーバート博士の名言
 人は苦痛を感じることで「今までのやり方ではダメだ」ということを知り、時には身近な人たちの力を借りて、自分ができることを探して当てていく。いくつかの選択肢を見つけ出し、希望を持って、新しい人生に出帆していく。
 自分の無力さを嘆くことからは、何も始まらない。とにかく動き出すことが良い結果をもたらすのだ。

『凹まない人の秘密』(アル・シーバート ディスカヴァー21)p148

まとめ 〜自分の力を信じる!〜

 3つにポイントを絞って「レジリエンスの高い人の特性」についてお話ししてきました。

逆境を乗り越える人たちに共通する3つのこと
  1. 全ては学びだと考える
     どんな辛い経験から学ぶことができ、自分を成長させてくれると信じている
  2. 矛盾する性格をもつ
     「楽観的でありながら悲観的である」といった矛盾する性格をあわせもっている
  3. 運命は自分で決める
     自分の置かれた環境に働きかけて自分の力で自分の運命を変えられると考えている

『「逆境に負けない人」の条件』(フォレスト出版)『凹まない人の秘密』(ディスカヴァー21)を元に整理

 3つのどれもが、レジリエンスを高めるために重要だと思いますが、「あえてひとつに絞れ」と言われたら、私は「自己コントロール型」の観点をあげます。

 それは「自己コントロール型」の人の方が、「レジリエンスが高い」ばかりでなく、結果的に、自分の理想とする姿に近づいている人が多いからです。

 宮崎駿監督の『もののけ姫』に「タタリ神」というキャラクターが登場します。元は獣の神様だったのに、人間への怒りや憎しみに囚われ凶暴になり、自分を見失ってしまう存在です。「スターウォーズ」でいえば「ダークサイドに堕ちた」ということですね。ダークサイドに堕ちた行く末で待っているのは、不幸な人生でしかありません。

 「他人コントロール型」の人は、世を恨み人を憎む「ダークサイド」に落ちやすい傾向があります。

 反対に「自己コントロール型」の人は、「ジェダイの騎士」のように、今の混沌とした世界を、よりよく変えていこうとする強い意志をもつ傾向があります。その「強い意志」が「使命感」となって逆境にめげないメンタルを創り上げていくのです。

 シーバート博士は、こう言っています。

失敗がその人の人生を決めるわけではない。いかにその失敗と向き合ったかが人生を決めるのだ
『凹まない人の秘密』(アル・シーバート ディスカヴァー21)p95

 人生、山あり谷あり。失敗は誰にも訪れます。

 失敗が人の運命を決めるのではありません。

 その失敗を、どう受けとめ、どう理解し、どう考え、どんな態度をとるのかによって、運命は決まるのです。

 3つのポイントを心がけていけば、逆境に負けない「レジリエンスの高い人」になることができます。

 自分の力を信じて、できると信じて、一度しかない人生を、実り多いものにしていきましょう。

シーバート博士の名言
私が思う最高の知恵とは、一見不幸と見えることを、幸運へと導いていける知恵だ。ただなんとか不幸をやり過ごすのではない。それによって、自分が前よりもさらによくなる、ということなのだ。不幸に見える出来事の向こうに広がる道を見つける知恵を持とう。
『凹まない人の秘密』(アル・シーバート ディスカヴァー21)p149

(文:松山 淳)


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