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「悔しい」は人を成長させる原動力

コラム71「悔しい」は人を成長させる原動力

世界的ソムリエ田崎真也の悔しい経験

 日本を代表するソムリエといえば田崎真也さんですね。「世界最優秀ソムリエコンクール」で優勝している人物です。

 ソムリエというと、レストランで優雅な雰囲気をかもしだす存在であり、セレブなイメージがあります。田崎さんは若い頃から一直線にソムリエを目指していたわけではなく、そのキャリアにはセレブとは言い難い紆余曲折がありました。

 『日本経済新聞「学びのふるさと」』(2011.11/18付け夕刊)に掲載されていた内容を参考にし、ソムリエになるまでの田崎さんのキャリアをさっと眺めてみます。

田崎真也の若かりし頃の迷い

 田崎さんは、小さい頃から魚が大好きでした。水産高校への進学を考えたほどです。でも、先生に「普通に進学しなさい」と言われ、ではと、工業高等専門学校を希望します。

 すると「君の学力では無理だ」と言われてしまいます。

 悔しくて悔しくて、それから田崎さんは猛勉強をします。すると、先生に無理だと言われた学校にみごと合格するのです。まさに悔しさをバネにする成功経験ですね。

 ところが、「やはり海の仕事がしたい」と、せっかく合格した高校を中退してしまいます。そして、船員を育てる海員学校に通い始めます。ですが、ここでもしっくりこない。

 夏休みに、海辺のスナックでアルバイトをしていました。ある日、お客さんが、お金を払うときに「ありがとう」と言ってくれました。この経験が転機になります。青年である田崎さんは気づきます。

「自分が本当に好きだったのは、魚そのものでも釣ることでもなく、捕ってきた魚を料理し、家族に食べて「おいしい」と言ってもらうことだった」

『日本経済新聞「学びのふるさと」』(2011.11/18付け夕刊)

 田崎さんは海員学校をやめて、銀座のフランス料理店で働きだします。ここで、ソムリエの道を選択する決定的な瞬間が訪れるのです。

 銀座のフランス料理店ですからソムリエがいます。田崎さんは、そのソムリエに聞いてみました。「私もなれますか?」と。すると、「おまえには無理だ」と言われてしまうのです。高校受験の時と同じですね。

 銀座のレストランで働くソムリエに「おまには無理だ」と言われたら、普通は「そうですか、残念ですけど、ではあきらめす」と、断念しそうなものですが、田崎さんは、あきらめませんでした。

 悔しい思いをした田崎さんは、逆に、「おまえには無理だ」のひと言で、ソムリエを目指すのです。そこから世界の頂点にのぼりつめるソムリエ田崎真也の人生が始まります。

ソムリエのイメージ・イラスト
イラスト:DB07

 自身の半生を振り返り、田崎さんはこう言っています。

田崎真也の名言

「私のこれまでの原動力は、「悔しい、見返してやる」という負けん気。
「無理」という言葉や、悔しさからそれを覆そうと頑張る経験がなかったら、今の私はなかったかも」

『日本経済新聞「学びのふるさと」』(2011.11/18付け夕刊)


悔しいから人は成長する。

 悔しい。

 決していい響きのする言葉ではありません。悔しがっている人は、感情が乱れているので、みっともないなと感じて、見ているほうが困ることもあります。

まっつん
まっつん

 子どもがまだ幼稚園生だった頃、娘が、お兄ちゃんたちにからかわれてワンワン泣きながら、大きな声で「くやしい、くやしい」と言っていたのを記憶しています。娘は、負けん気の強いタイプなので、ちょっとからかわれるだけで、「くやしい、くやしい」と、よく泣いていました。なだめるのが、とても大変でした(笑)

 泣きじゃくる娘をみて、親として子育てをしてきて、しみじみと思いました。悔しいという感情があるから、「人は成長をとげていくのだな〜」と。

 悔しさをバネに、人は成長していく。

 そう考えると、「みっともない」と思われがちな「悔しい」という感情は、私たち大人も、もっと感じていいものです。


悔しさが人をよりよく変えていく。

 組織のリーダー層から、こんな言葉をよく聞きます。

リーダー
リーダー

「うちのメンバーは、みんなクールなんです。なんかこう、熱くなることが、かっこ悪いみたいな雰囲気があって、それで、人と人、部署間の壁が、どんどん厚くなっている気がするんです」

 「熱いコトはみっともないコト」

 そんな組織風土が、できあがってしまった会社で、「くっそ〜、悔しい」なんて、職場で叫んでいたら、浮いた存在になってしまうでしょう。

  でも、どうなのでしょう?

「まあ、だいたい、こんな感じでいいんじゃないの、そんな熱くなるよ」
「どれだけがんばってもさ、給料も会社も変わらないんだから、適当にやっていこうよ」

 そんな、しらけた組織風土が定着してしまうと、「前例主義・現状維持の怪物」があちこちに発生し、何かを変えて新たものを生み出していこうとするエネルギーが、組織から吸いとられていきます。

変化を避ける理由

 基本的に人は変化を嫌います。「それまでのやり方」(前例)が通用するなら、「それまでのやり方」(前例)を続けようとする存在です。なぜなら、答えはとても簡単で、「変えることは、面倒くさいし、嫌な思いもするし、労力もかかって、ひどく疲れる」からです。

 人のやる気を奪う人を昨今、「エナジーバンパイア」と呼びます。停滞する組織には、「前例主義・現状維持の怪物」である「エナジーバンパイア」が多く生息しています。

 特に、ミドルマネジャー(中間管理職)層に「エナジーバンパイア」が多くなると、若い人たちが、犠牲になっていきます。次世代を担う20代、30代の人材のもつ創造性のエネルギーが奪われ、「変革の牙」が抜かれていくのです。

まっつん
まっつん

 「町起こし」に必要な人材として、古くから「よそ者、若者、バカ者」といわれます。若者が必要なのは、常識や前例にとらわれない新たな視点で物事を見ることができ、「若さ」が変革のエネルギーになるからです。若い人は、「悔しさ」を感じる「感受性」もみずみずしく、「悔しさ」が現状を変える力になっていきます。

 田崎さんが若い頃に、「悔しさ」をバネにして、「お前には無理だ」といわれたことを、あきらめず、成し遂げたように…。

 そう考えると、こういえますね。

「悔しい」と感じられることは、才能のひとつ。

世界が絶賛した佐藤初女さんの生きる姿勢

 青森県の山の奥深くで「森のイスキア」を運営し、心あたたまる手料理で、人生に疲れ果てた人を救いつづけた人物といえば、佐藤初女さんです。自殺しようとしていた人が、佐藤さんのおにぎりを食べて、自殺を思いとどまった、というエピソードもあります。

 佐藤さんの活動は、龍村仁監督のドキュメンタリー映画『地球交響曲第二番』にも取り上げられました。多くの著名人が「森のイスキア」を訪れています。ダライ・ラマとも会い、世界が佐藤さんの「奉仕の精神」を高く評価しました。 

 高齢になっても不屈の精神で奉仕活動を継続しました。そんな佐藤初女さんが執筆した本に、こんな言葉をみつけました。

『いまを生きる言葉 「森のイスキア」より』(佐藤初女 講談社)の表紙画像
いまを生きる言葉 「森のイスキア」より』
(佐藤初女 講談社)

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佐藤初女の名言

「今日と明日と同じ日というのは嫌い。
 どんな些細なことでもいいから、今日と明日は違わないとダメ。
 だから今の年齢でできることを精一杯やるのです」

『いまを生きる言葉「森のイスキア」より』(著 佐藤初女 講談社)

 『いまを生きる言葉 「森のイスキア」より』の「あとがき」は2002年に書かれています。佐藤さんは1921年生まれですので、81歳になる年です。

 81歳という高齢ですが、佐藤さんの言葉には、今日と明日が同じであったのなら「悔しい」という気持ちが感じられます。その「悔しさ」が、昨日より今日、今日より明日と、少しでも何かをよりよく変えていく原動力になっているようです。

 私たちの精神を鼓舞し「成長の力」になるのは、「志」や「夢」や「目標」などのきれいに化粧された言葉だけではないでしょう。

 時にはみっともないと思える「悔しい」という感情が起爆剤となって、人は何かを成し遂げ、大きく成長していくものです。

 子どものように「悔しい」と思える力が、人生を生き抜く力になります。

(文:松山 淳 イラスト:なのなのな

ソムリエ田崎 真也の名言

「何が自分を成長させるのか、分からないものですね」 

『日本経済新聞「学びのふるさと」』(2011.11/18付け夕刊)より

 

(文:松山 淳


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