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『リーダーシップに出会う瞬間』(著 有冬典子)を読んで

コラム72『リーダーシップに出会う瞬間 成人発達理論による自己成長のプロセス』の表紙画像

『リーダーシップに出会う瞬間

 リーダーシップを学ぶにあたって、とてもよい本がありますので、ご紹介します。

 『リーダーシップに出会う瞬間 成人発達理論による自己成長のプロセス』(著:有冬 典子   監修・解説:加藤 洋平  日本能率協会マネジメントセンター)

 著者の有冬さんは、某企業でトップ営業マンとして活躍した後、独立。様々な活動を経て、2017年、自らのコアな願い(理念・志)から周りに影響力を発揮する、戦わないのに無敵のリーダーシップ「コアリーダー」育成の株式会社Corelead(コアリード)を立ち上げました。

 現在、講演や研修で全国を飛び回っています。

 著者の有冬さんが、豊かな社会人経験を持っていることもあり、『リーダーシップに出会う瞬間』の内容は、とてもリアルで文章表現も緻密で、読んでいると物語の世界に引き込まれていきます。

『リーダーシップに出会う瞬間』の内容

 『リーダーシップに出会う瞬間』はストーリー仕立てになっています。主人公は青木さんという女性です。

 青木さんは、ある日、係長への昇進を打診されます。昇格するから喜ぶのかと思ったら、青木さんの反応は「困ったな!」でした。

 二つ返事で、「ありがとうございます」と、喜ぶのではなく、

「私なんかが管理職なんて無理だわ」

という否定的な思いだったのです。そこから青木さんのちょっとした苦悩が始まります。

 組織の中で、女性管理職の比率を高めることは、時代の流れです。世界に比べて、日本はまだまだかなり遅れています。

 女性管理職を増やそうとする社会的な「追い風」がありつつも、女性がいざ管理職になろうとすると、「自分に管理職が務まるかしら。責任も重くなるし、断ったほうがいいのではないか」と、二の足を踏みたくなるのも現実です。

 青木さんは、管理職になることに悩みながら、メンター森尾さんや社内の様々な人とぶつかりあい、学びあい、ひとりの人間として成長していきます。

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まっつん

 この本がとても秀逸だと思うのは、心理描写がとても細やかなことです。組織のなかで「人の上に立つ」「リーダーになる」…そのあたりの、思い悩みの真相が、とてもリアルに描かれています。会社で働く女性だからこその悩みは、著者の有冬さんが同じ女性だからこそ、深く理解されて描いていると感じます。

 さて、物語も終盤にさしかかろうとする時です。青木さんは、様々な葛藤を乗り越えて、成長を遂げてきました。その時、こんな「ふりかえり」をしています。

 かつての私は、何の方針もなく生きていた。他の人からの評価や世間の常識に合わせ、平穏無事に日々を生き延びることがすべてだった。ある日、それでは人生が立ち行かなくなりはじめた。いや、自分がそれに耐えられなくなった。自分の心に正直にならないではいられなくなった。

 つまり、心が成長してしまったあえてそれを目指したわけではなかったのに。

『リーダーシップに出会う瞬間』(著 有冬典子)p250

心が成長してしまったあえてそれを目指したわけではなかったのに

 この最後の一文は、人間の「心の成長」について、その本質をとらえています。そこで、この言葉を「心が成長してしまった「あえてそれを目指したわけではなかったのに」のふたつに切り分けて、論を進めていきます。


成長するから訪れる苦悩がある。

「心が成長してしまった」

 この言葉を読むと、その前段で、青木さんが言っていることと、一瞬、ロジックがくい違っている印象を受けます。

 なぜなら、心が成長したのならば、「人生が立ち行かなくなりはじめた」
という否定的な状況にならないのでは、と考えてしまうからです。

 でも、心が成長したからこそ苦悩が訪れるのもまた真実ですね。

 ひとつの悩みを克服して心が成長したら、また、次の高いステージへ進むための、新たな悩みが生まれてきます。それは、さらに人として成長するために必要な「よりレベルの高い悩み」といえます。

 心理学では、私たちの心の無意識のレベルには、常に成長しようとする「成長衝動」があると考えます。「まあこんなもんで、いいでしょっ」と自分で思っていても、自分では気づけない心の領域「無意識」は、そう思わないのです。今より高いレベルを常に求めているのが、人間の心です。

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まっつん

 ある悩みを克服すると、あたかも、「さらに成長しないさい」と諭されるかのように、次の悩みが訪れてきます。ですので、人生の様々なステージで、何らかの苦悩があるものなのです。

 そこで、リーダーとして悩みがあれば、悩みがある自分を「ダメだ」と否定するのではなく、

「人として成長してきたらからこそ、自分には苦悩が訪れたのだ!」

と、ポジティブにとらえることが、悩みを克服するのに必要なマインドセット(心構え)になります。

 「苦悩とは、成長の証」なのです。


成長は追求するものではなく、生じるもの。

「あえてそれを目指したわけではなかった」

 ナチスの強制収容所を生き延びた心理学者V・E・フランクルに、こんな言葉があります。

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フランクル

幸福は「追求」して得られるものではなく、むしろ結果として生じるものなのです。人が幸福を目標にすればするほど、その目標を取り逃します。

『意味による癒し ロゴセラピー入門』(フランクル 春秋社)p159-160

 上の言葉にある「幸福」を「成長」に置き換えてみます。

 成長は「追求」して得られるものではなく、むしろ結果として生じるものなのです。人が成長を目標にすればするほど、その目標を取り逃します。

 こう考えると、主人公青木さんが語った「あえてそれを目指したわけではなかった」という言葉の深さが理解できます。

 青木さんは、「人としての成長」を目指して、それを常日頃から意識して「成長」してきたわけではないのです。

 青木さんの「成長」は、職場での様々な人間関係の葛藤に悩まされ、その苦悩と向き合い、逃げずに悩みぬいた…その結果として生じたものです。

 ですので、「あえてそれを目指した…」の前の言葉は、私が自分の力で心を成長させた」という「自力感」の強い言葉ではなく、「成長してしまった」という、結果としてそうなった「他力感」の濃厚な言葉になっているわけです。

 もちろん、自己成長を目標にすることが、NGだと言っているわけではありません。むしろ、それはとてもよいことです。でも、忘れてはならないのは次のことです。

自己成長のマインドセット

 自己成長を成し遂げる最も手近で、効果的な方法は、今、目の前にある仕事に、誠意をもって、全力で取り組むこと。


どんなリーダーも悩みながら成長していく。

 日本全国、いや世界中のビジネスリーダーたちが、職場で悩みを抱えています。

 「リーダーとしてこれでいいんだろうか」
 「あの部下、腹立つわ~、マジでむかつく」
 「うちの経営陣は、なんで理解してくれないんだ」

 そんなネガティブな感情を味わいつつ、顔をあわせ目をみて言葉を交わし、相手の感情をダイレクトに感じとって、その感情を推測しながらコミュニケーションをとり、頭を下げて、人に助けを求め、アドバイスをもらい、自分の思いが通じたり通じなかったり、成果が出たり出なかったり、成功したり失敗したり、時には、頭の中がぐちゃぐちゃになり…不平をもらし、愚痴をこぼし、涙をこぼし、それでも転がることをやめず、そうして時が過ぎ、ハタと立ちどって自分をふりかえり、ふと思う。

あるリーダー

「少しは成長したのかな……」

「幸せは求めるものではなくて、感じるもの。」

 そんな言葉があります。人の成長も同じですね。成長は求めるものではなく、感じるものです。心の成長は一朝一夕ではいきません。成長に必要な苦しい経験を飛ばすことはできません。

 ですので、目の前に仕事があるのであれば、それを何かの定めだと思って、日々、真摯に取り組むことが、心の成長、人格を高めるための最高の時間となるのです。

 京セラの創業者で「生きる経営の神様」と呼ばれる稲盛和夫氏に、こんな言葉があります。

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稲盛和夫

「自分の置かれた状況に不平不満の声をあげるばかりで、その可能性にたいして心を閉じていると、人生の本当の恵みを見極めることはできないのです。」

『成功への情熱』(稲盛和夫 PHP)p69

 あなたにとって「人生の本当の恵み」とはなんですか?

 答えは、もちろん、人それぞれでしょう。心理学の立場からの答えは、こうなります。

「心の成長」「人格の成長」「人間性の成長」

 人間にとって、「人生の本当の恵み」のひとつは、自分自身の「成長」なのです。

 『リーダーシップに出会う瞬間』を読むと、「心の成長」におけるプロセスの大切さと、それをどう考え、どう取り組めばよいのかが理解できます。ですので、オススメなのです。

 『リーダーシップに出会う瞬間』は、有冬さんの考える「コア・リーダー」というコセンプトが縦糸で、横糸は「成人発達理論」です。「成人発達理論」は、人材育成の新潮流として、今、注目されています。

 かのFBI(連邦捜査局)やCIA(中央情報局)が、「成人発達理論」を活用したリーダーシップ開発を行っているそうです。

『リーダーシップに出会う瞬間』では、「成人発達理論」の第一人者の加藤洋平さんが、各章ごとに解説を書いています。これが「人の成長」「成人発達理論」を理解するうえで、とても役に立ちます。

 「成人発達理論」については私も、コラム017『成人発達理論について』に書いていますので、もしご興味があれば、参考になさってください。

 それでは、最後に主人公青木さんの「いい言葉」を記して、コラム70を終えます。

メンター森尾さんの名言

「損得の壁、孤独の壁、アイデンティティの壁…言い換えると、『損してもいい、嫌われていもいい、無価値でいい』、それが壁を乗り越えるコツというかんじですね」

『リーダーシップに出会う瞬間』(著 有冬典子)p283

(文:松山 淳)