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『鬼滅の刃』煉獄杏寿郎の名言に学ぶリーダーシップ

『鬼滅の刃』煉獄杏寿郎の名言に学ぶリーダーシップ

 映画『鬼滅の刃 無限列車編』に登場し、多くの人が知るところとなった煉獄杏寿郎(れんごくきょうじろう)。映画でもセリフとなった彼の言葉には、リーダーとしての心構え(マインド・セット)が凝縮されている。煉獄杏寿郎のセリフをひも解きながら、「インスパイア」(inspire)「サーバント」(servant)「ジェネラティヴィティ」(generavity)、この3つのキーワードを軸にして、リーダーシップについて考える。

煉獄杏寿郎「3つリーダーシップ」

 『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴 集英社)の主人公は、竈門炭治郎(かまどたんじろう)です。会社の組織でいえば、竈門炭治郎が平社員で、煉獄杏寿郎(れんごくきょうじろう)は、役員クラスといえます。ファンの間では「煉獄さん」と呼ばれ、親しまれているキャラクターです。

 今回、取りあげたい「煉獄さん」の名言は次のものです。

煉獄杏寿郎の名言

 胸を張って生きろ。己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと、心を燃やせ。歯を食いしばって前を向け。君が足を止めて蹲(うずくま)っても時間の流れは止まってくれない。共に寄り添って悲しんではくれない。

 俺がここで死ぬことは気にするな。柱ならば後輩の盾となるのは当然だ。柱ならば誰であっても同じことをする。

 若い芽は摘ませない。竈門少年、猪頭少年、黄色い少年、もっともっと成長しろ。そして今度は君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ。俺は信じる。君たちを信じる。」

 この名言は、大きく3つのパートに分かれていて、リーダーシップの3つの型が表現されています。

インスパイア・リーダーシップ(Inspire Leadership)

 「胸を張って生きろ。」から始まるセリフは、人を勇気づけ励まし鼓舞する言葉です。人を勇気づけることは、リーダーにとって大切な仕事ですね。他者を鼓舞することは、英語で「インスパイア」(inspire)。煉獄さんの言葉には「インスパイア・リーダーシップ」(Inspire Leadership) の要素が、含まれます。

サーバント・リーダーシップ(Servant Leadership)

 次に、「俺がここで死ぬことは気にするな。」からの部分には、「私(自分)」にとらわれない「奉仕の精神」が満ちています。「奉仕の精神」に基づくリーダーシップ は「サーバント・リーダーシップ」(Servant Leadership)として、日本でも広く知られるようになりました。

 「サーバント・リーダーシップ」は「奉仕型リーダーシップ」「支援型リーダーシップ」と訳されることがあります。

ジェネラティヴィティ・リーダーシップ(generavity Leadership)

 最後、「若い芽は摘ませない。」から最後までの言葉は、次の世代に深く関心をもつ「ジェネラティヴィティ」(generavity)の精神にあふれています。「ジェネラティヴィティ」は、発達心理学者エリク・H・エリクソンが作り出した造語です。日本では「世代継承性」と訳されます。

まっつん
まっつん

 次世代の主役である部下を育てるには、リーダーに「ジェネラティヴィティ」(世代継承性)が求められます。人の意識発達がゆるやかになり「成人30歳説、40歳説」が唱えられる現代において、部下の育成に深く関心をもつ「ジェネラティヴィティ・リーダーシップ」の発揮は、組織の大きな課題です。

 「煉獄さん」のセリフには、以上、3つのリーダーシップ要素が包み込まれています。それは「こんなことを言ってもらいたい」と、多くの人が求めている理想的な「リーダーの言葉」です。

 では、「インスパイア」「サーバント」「ジェネラティヴィティ」をキーワードとする3つのリーダーシップにふれながら、ここから、さら詳しくお話していきます。


インスパイア・リーダーシップ

 「インスパイア」(inspire)は、辞書にこうあります。

 「鼓舞する、激励する、発奮させる、鼓舞して(…を)させる、鼓舞して〈…する〉気にさせる、(…を)示唆する」(『新英和中辞典』研究社)

 部下を鼓舞しやる気にさせるのは、上司(リーダー)の役割ですので、「インスパイア」は、リーダーシップと相性のよい概念です。

まっつん
まっつん

 私は、2014年に出版した『「機動戦士ガンダム」が教えてくれた新世代リーダーシップ』(SBクリエイティブ)で、5つのリーダーシップ・スタイルを提示し、その中に「インスパイア・リーダーシップ」を含めました。

 改めて、煉獄さんのセリフを読んでみましょう。

煉獄杏寿郎の名言

 胸を張って生きろ。己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと、心を燃やせ。歯を食いしばって前を向け。
 
 君が足を止めて蹲(うずくま)っても時間の流れは止まってくれない。共に寄り添って悲しんではくれない。

 主人公竈門丹次郎に向けた言葉で、①「ストレートさ」②「リアリスティック(現実的)」な、2つの要素が融合している力強い部下へのメッセージですね。

①ストレートな言葉が胸をうつ

 前半「胸を張って生きろ」から「心を燃やせ。歯を食いしばって前を向けが、ストレートな部分です。直球勝負のセリフは、アニメ・漫画では定番中の定番です。

 『ONE PIECE』(尾田栄一郎 集英社)の主人公ルフィが放つセリフ「俺は海賊王になる」なども「ど直球」です。こうした「潔いまでのストレートな言葉」を、心の奥底で人は求めているので、臭いとわかりながら、グッとくるものがあります。

②厳しいリアリスティックな言葉が励ましになる

 後半、「君が足を止めて蹲(うずくま)っても時間の流れは止まってくれない。共に寄り添って悲しんではくれない。」が、リアリスティック(現実的)な部分です。

まっつん
まっつん

 現実は、なかなか厳しいものです。時間は止まりませんし、寄り添ってもくれません。どれだけ泣き叫んだところで、時は無情に流れ、今のコロナ禍のように、時代に翻弄されることもあります。

 スポーツや武道など、弱ければ「負け」を突きつけられます。運が味方して、弱いチームも勝つことがあります。格上を打ち負かす「ジャイアント・キリング」は、確かに起きますが、決して数は多くありません。

厳しくも率直な言葉が励ましになる。

 でも、そんな現実の厳しさを率直を諭してくれることが、「励まし」になることもあります。生半可な優しさで嘘をつかれるより、正直に言ってくれることで、心に届く言葉もあります。

 煉獄さんのセリフには「厳しさ」もありますが、「共に寄り添って悲しんではくれない。」と言われても、彼のキャラクターと相まって、その厳しさが「正直さ」「誠実さ」として感じられるのです。

 現実の厳しさをストレートに表現しつつも、多くの人の心をとらえたテレビCMがあります。自動車メーカー「HONDA」のものです。下にある言葉が、CMのナレーションの一部です。

負けるもんか

がんばっていれば、いつか報われる。
持ち続ければ、夢はかなう。
そんなのは幻想だ。
たいてい、努力は報われない。
たいてい、正義は勝てやしない。
たいてい、夢はかなわない。
そんなこと、現実の世の中ではよくあることだ。
けれど、それがどうした?
スタートはそこからだ。

2012 企業「HONDA」TVコマーシャルより
コピーライター:藤本宗将

 このTVCMは、東日本大震災が起きた翌年2012年に放映されました。大きな混乱がまだまだ続いている時です。未曾有の大災害という厳しい現実を突きつけられ、東北を中心に多くの人が苦しんでいました。

 大きな混乱から立ち直ろうと、みんなが懸命に努力をしている時に、「努力は報われない」「正義は勝てやしない」というメッセージは、非常にリスキーでした。リスキーでしたが、このホンダのCMは震災で苦しむ人たちにも「励まし」のメッセージとして受け入れられ、高い評価を得ました。

 私たちは、現実を生きています。「努力は報われない」「正義は勝てやしない」ことをすでに知っています。「時間は止まってくれない」「共に寄り添って悲しんでくれない」こともわかっています。

まっつん
まっつん

 わかっているので、厳しい現実を率直に表現してくれた言葉に対しても、好意を抱くことができます。また、それを「励まし」として受け取ることができ、勇気づけられるのです。

 だからリーダーは、現実の厳しさを折込ずみにして、人が心の奥底で求めている言葉を発することで、人を勇気づけることができます。

 人を勇気づけることは、心理学者アドラーも重視していました。

アドラー心理学が重視する「勇気づけ」

 フロイト、ユングに並ぶ世界三大心理学者のひとりアルフレッド・アドラー(Alfred Adler)が提唱した「個人心理学」では、「勇気づけ」を重視します。

 「勇気づけ」は英語で「エンカレッジメント」(encouragement)。「encouragement」を辞書で引くと「激励、励まし、勇気づけること」とあります。

 『生きる勇気』(興陽館)で、アドラーは「成功するかどうかは、「勇気」があるかどうかで決まります」(p234)と書いています。また、次のような一文もあります。

『生きる勇気』(アドラー 興陽館)
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 そういう人たちへの正しい対処法は「勇気づけること」。彼らを落ち込ませるのは厳禁です。彼らが問題に立ち向かい解決できることを理解してもらいましょう。それが彼らに自信を植えつける唯一の方法です。そして「自信を植えつける」が、劣等感を取り除く唯一の方法なのです。

『生きる勇気』(アルフレッド・アドラー 興陽館)p61

 冒頭の「そういう人たち」とは、「大きな劣等感」を抱えている人のことです。大なり小なり「劣等感」は誰もが持っているものです。だからこそ、どんな人にも「勇気づけ」は意味のあることです。

まっつん
まっつん

 アドラー心理学での「勇気づけ」を正確にやろうとすると、「褒めること」はNGなので、少々、混乱します。でも、アドラー心理学が絶対的な正解ではないのですから、日常の場面では、もっとシンプルに柔軟に考えて「言葉や行動で、他者にポジティブなエネルギーを与えること」が「勇気づけ」と解釈してよいと思います。そちらの方が、リーダーシップを発揮する時には、現実的ですし、より実践的です。

リーダーはポジティブなエネルギーを与える

 「インスパイア・リーダーシップ」とは、「勇気づけ」を実際に行うことです。怒鳴り散らしたり、嫌味をいったりして、人の「勇気をくじく」のではなく、「言葉や行動で、他者にポジティブなエネルギーを与えること」を日々、実践することに他なりません。

胸を張って生きろ。己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと、心を燃やせ。歯を食いしばって前を向け。

 人をインスパイアするポジティブなエネルギーに満ちた言葉です。 

 東日本大震災での混沌が続いていた2012年。「HONDA」のCMが大きな反響を呼びました。コロナ禍で時代が急変した2020年。『鬼滅の刃』の記録的な大ヒットしています。

 時代が混乱すればするほど、ストレートに「勇気づけられる言葉」を、私たちは求めるのです。

 リーダーは、人をインスパすることを強く意識しましょう。


サーバント・リーダーシップ

 経営の神様と呼ばれる松下幸之助さんや稲盛和夫さんは、私心を戒め、「無私の精神」の大切さを説きます。「私心」とは、「自分だけよければいい」という私欲にまみれた心持ちであり、「無私の精神」はその反対です。

近江商人の「三方よし」

 「無私の精神」のリーダーは、自分だけではなく「他人もよくなるよう」に、「みんなもよくなるよう」にと考え、行動していきます。「無私の精神」を心がけると、自然に「利他の精神」を兼ね備えるようになります。

 「利他の精神」といえば、近江商人の「三方よし」が、それですね。

近江商人の「三方よし」

売り手よし、買い手よし、世間よし

 売り手(自社)だけでなく、買い手(お客様・取引先)も、世間(社会)もよくなるようにと考えて、商い(ビジネス)を行っていく。自分だけでなく他人にも「利」(よいこと)をもたらそうと考える「利他の精神」があればこそ、「三方よし」は可能となります。

 「三方よし」の現代版は、企業の「社会貢献活動」です。

 大企業であれば、利益を上げたら、その一部を「社会貢献活動」にあてるのが常識になっています。無償で様々なモノやサービスを提供します。社員が学校に出かけて小学生に授業をしたり、災害が発生した時には、被災地・被災者を助けようと、無料で様々な支援物資を提供したりします。

「奉仕」とは私心を捨てること

 「社会貢献活動」は「三方よし」の発想であり、それを実践する心持ちを「奉仕の精神」と表現することもできます。「奉仕」とは「私心を捨てて最善を尽くすこと」

 キリスト教国では「神への奉仕」という考えに基づき「奉仕活動」(ボランティア)が盛んです。ですが、無宗教といわわれる日本でも、災害現場などで見られるボランティア活動は目を見張るものがあり、世界的に高い評価を受けています。

まっつん
まっつん

 サッカーW杯で、ゴミを拾う日本人サポーターの姿は、世界でニュースになりました。2019年ラグビーW杯でも、地方で合宿をした世界各国の選手たちは、日本人の素晴らしい「おもてなし」にふれ、深く感動をしていました。

 「無私の精神」「利他の精神」「奉仕の精神」。

 これらのマインドセット(心構え・信条)をもつことは、リーダーの理想です。理想ですから、必ずしもそうなりません。職権を乱用して私腹を肥やし、晩節を汚すリーダーは、後を断ちません。

 企業を大きく成長させたり、難しい経営再建を成し遂げたりして、社会的に高い評価を得ていたリーダーが「悪いニュース」として取り上げられてしまうのを、私たちは何度も目にしてきました。

 人は私欲にとらわれます。私欲とは人間の本能的な欲求が源になっているからです。「無私の精神」「利他の精神」「奉仕の精神」などといっても、それは机上の空論であり、「利他の精神」にあふれた行いを「何か裏があるずだ」などと懐疑的になるのは、人間の性(さが)です。

私心なき煉獄杏寿郎の言葉

 だからこそ、現実的にはかなり難しい「無私の精神」「利他の精神」「奉仕の精神」をもつ人に接したり、そうした人の話しを聞いたりすると、人は自然と胸を打たれるのです。

 煉獄杏寿郎の次の言葉は、「無私の精神」「利他の精神」「奉仕の精神」を感じさせるものでした。

煉獄杏寿郎の名言

「俺がここで死ぬことは気にするな。柱ならば後輩の盾となるのは当然だ。柱ならば誰であっても同じことをする。」

 「柱ならば後輩の盾となるのは当然だ。」と「煉獄さん」は言い切ります。この言葉に「無私の精神」「利他の精神」「奉仕の精神」を強く感じます。

 「柱」(はしら)とは、主人公竈門丹次郎が所属する組織「鬼殺隊」の最高位に立つ剣士のことです。「柱」は全員で9人います。煉獄杏寿郎は9人の内のひとりです。「柱」を、ここでは会社組織の「経営陣」「上層部」「リーダー層」と考えてみてください。

 「部下の盾になるのは当然だ」

 そう考えているリーダーと、そうでないリーダーであれば、どちらについていこうと思いますか。

まっつん
まっつん

 現実には、自分の失敗を部下に押し付け、部下の成功を自分の成功とするリーダーが存在しています。その原因の多くは、「私欲」「私心」にあります。「自分かわいさ」ですね。
 反対に、部下の失敗を自分の失敗とし、部下の成功は、そのまま部下の成功と花を持たせるリーダーがいますね。

 後者のリーダーは、「無私の精神」「利他の精神」「奉仕の精神」を、意識せずとも、すでに持っている人です。「奉仕の精神」に焦点をあてれば、そのリーダーは、「サーバント・リーダーシップ」を発揮している人物と言えます。

サーバント・リーダーシップとは

 「サーバント・リーダーシップ」は、1970年代にアメリカで提唱された考え方です。提唱者は元AT&T(米国の大手通信会社)マネジメントセンター所長のロバート・K・グリーンリーフ(Robert・K・Greenleaf)です。1990年に天に召されました。

 グリーンリーフは、自著『サーバント・リーダーシップ』(英治出版)で、こう書いています。

 私の経験からすると、真に優れた組織のまさにトップはサーバント・リーダーだ。こうした人々は、謙虚で腰が低く、オープンで人の話を素直に聞き、丁寧で面倒見がよく、その上、決断力がある。

『サーバント・リーダーシップ』(R・K・グリーンリーフ 英治出版)p31

 1970年代の米国において、リーダーのイメージといえば「強さ」(パワフルさ)が象徴でした。上司の権限をフル活用して部下を支配し、コントロールしようとします。

 これは「強権型リーダーシップ」と表現できます。その結果、部下を「組織の歯車」とみなす人間性の欠如する倫理観の欠いたリーダーが増殖していたのです。

 ただ、当時でも、もちろん高潔で謙虚なリーダーもいました。「強権型のリーダーシップ」に疑問を抱き、それとは違う優れたリーダーシップに着目し、グリーンリーフは、「サーバント・リーダーシップ」を提唱したのです。1970年代から長い歳月を経て全世界に広がり、日本でも知られるようになっています。

 私は、サーバント・リーダーシップをこう定義しています。

サーバント・リーダーシップ

 サーバント・リーダーシップとは、リーダーがフォロワーに奉仕することで「信頼」を獲得し、その「信頼」を源泉として発揮されるリーダーシップ。

 リーダーシップとは、「対人影響力」のことです。よい影響を与えられれば、他者から「信頼」されるようになります。信頼されるようになれば、リーダーシップは高い効果を発揮します。

まっつん
まっつん

 他者を「勇気づける」ことで「信頼感」が高まるように、私心を捨て「奉仕の精神」で人や仕事に尽くすとでも、それは可能です。

 映画『鬼滅の刃 無限列車』に登場する「煉獄さん」は、部下である竈門丹次郎を前にして、決して偉ぶるようなことはなく、「無私の精神」「利他の精神」「奉仕の精神」をベースとする清々しい高潔さを最後まで見せてくれました。

 「柱ならば後輩の盾となるのは当然だ。」と断言するところに、煉獄さんの「サーバント・リーダー」としての真髄が現れています。


ジェネラティヴィティ・リーダーシップ

 「ジェネラティヴィティ」(generavity)は、発達心理学者エリク・H・エリクソン(Erik Homburger Erikson)が提唱した概念です。「generation」(世代、生成)と「creativity」(創造性)を組み合わせた造語です。日本語では「世代継承性」と訳されます。余談ですが、アイデンティティ(identity)という概念を作り上げたのもエリクソンです。

 「ジェネラティヴィティ」(世代継承性)について、エリクソンは、『アイデンティティとライフサイクル』(誠信書房)の中でこう書いています。

ジェネラティヴィティとは

 ジェネラティヴィティは、主として次の世代を確立し、導くことへの関心である。

 しかし何らかの不運のため、あるいは他の方向に特別で真正の才能があるために、この欲動を子孫に向けるのではなく、利他的な関心や創造性のような他の形式に向ける人もいる。

『アイデンティティとライフサイクル』(エリク・H・エリクソン 誠信書房)p105

 発達心理学とは、人間の一生涯のプロセスにおいて、人間の心(精神)が発達していくつれて、どのような特性を見せるのかを研究する分野です。10代と50代では、「心の発達」に差があることは想像できます。では、実際に、何が異なるのか、その主な傾向をまとめたものです。

ミドルになったら次の世代に関心が向く

 発達段階の一特性として「ジェネラティヴィティ」(世代継承性)があります。これは成人期の半ばから後期にかけて生まれてくる特性です。エリクソンの成人期は、18歳から40歳頃まで。「成人期の半ばから後期」というと中年期(ミドル)と呼ばれる「アラサー」「アラフォー」ですね。

 ミドルの年代になって心が発達してくると、「自然と次世代を気にかけ、関心を持つようになる」。そう考えたのがエリクソンです。

 組織の中で、プレイヤーとして成果を上げてきた優れた人材が、ミドルとなり上司になったとします。これまで自分の成果だけに集中できてきましたが、数名の部下をもち、彼ら彼女らの成果にも意識を向け、育成していかなければなりません。

まっつん
まっつん

 この時、ちょっとした、人によってはかなりの「抵抗感」「違和感」を持つケースがあります。だとすると、この上司(リーダー)は、まだ「ジェネラティヴィティ」(世代継承性)が、未成熟のままだと考えられます。

 自分のことだけでなく、「次の世代」のことに関心を持ち、そこに自己の創造性を発揮しようとするのは、成熟したミドルの自然な特性です。

 エリクソンは、「ジェネラティヴィティ」(世代継承性)の課題に向き合い取り組むことで、人は心を成熟させ「真の大人」になっていくのと考えました。でなければ発達が「停滞」することになると、エリクソンはいいます。

 エリクソンは、こうも書いています。

ジェネラティヴィティを発達させていない人は、自分自身をたった一人の子どもであるかのように甘やかし始めることが多い。

『アイデンティティとライフサイクル』(エリク・H・エリクソン 誠信書房)p106

 そう考えると、部下を育てようと懸命に努力する、時には相性の合わない部下に苦悩することもありますが、それを自分に与えられた「人生の課題」(ライフタスク)と認識し、逃げずに取り組んでいけば、「ジェネラティヴィティ」(世代継承性)が、育まれていきます。

 「煉獄さん」の年齢設定は20歳です。エリクソンの成人期に含まれますが、ミドルにはほど遠い年代です。それにしても、彼の言葉は「ジェネラティヴィティ」(世代継承性)を強く感じさせるものです。

煉獄杏寿郎の名言

「若い芽は摘ませない。竈門少年、猪頭少年、黄色い少年、もっともっと成長しろ。そして今度は君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ。俺は信じる。君たちを信じる。」

 「猪頭少年」「黄色い少年」は、主人公竈門丹次郎の同期です。この2人も煉獄さんの部下と考えてください。

 上のセリフは、次世代の部下たちに強い関心を持っているからこそ、生まれる言葉ですね。「若い芽は摘ませない」「もっともっと成長しろ。」は、「ジェネラティヴィティ」(世代継承性)をストレートに表現した言葉です。

 現実には、「ジェネラティヴィティ」(世代継承性)が未熟で、「成果」「結果」を重視するけど、部下(人材)の育成に関心がもてず、若い芽を摘んでしまうリーダーがいます。次世代が潰されている現状があります。

 その渦中にある若者や、ブラックな組織風土に嫌気がさしている若手が、次世代の部下を思いやる煉獄さんの熱い言葉を聞くと、自然と涙が流れてくるのではないでしょうか。

煉獄さんの言葉にイライラさせられたら…

まっつん
まっつん

 もし、ミドルリーダーの人が、煉獄さんのセリフを聞いて、腹が立ったりイライラしたり、「所詮、漫画の中の話だ」と、無性に否定したくなったら、ちょっと冷静になって、自分に問いかけてみてください。「何でこんなに、否定したくなるのだろうか?」と。

 否定したくなった人にとって、「煉獄さん」は、ユング心理学でいう「影(シャドー)」の存在かもしれません。「影(シャドー)」とは、生きられなかった自分の要素で、コンプレックスと深く関わります。

影(シャドー)」について、詳しく知りたい方は、コラム024「ドラえもん」に学ぶユング心理学「影」(シャドー)を参考になさってください。

 煉獄さんの特性を自己に「統合」できれば、「コンプレックスの解消」が実現されます。それは「心の発達」を意味します。「統合する」とは「認め、受け入れていく」「否定せず肯定的に取り入れていく」ということです。

 

 もちろん「これは漫画だし、作り物だし、現実ではない」と言えば、それまでです。ただ、コロナ禍という厳しい現実の中で、記録的大ヒットとなっているのは事実ですし、その事実を考えると、『鬼滅の刃』には、私たちが失いかけていて、取り戻したい大切な何かがメッセージとして含まれているはずです。

 その「メッセージ」をどう受け取るかは、人それぞれですね。ただ、もし、そのメッセージを深く考え、現実に生かしていこうとするなら、その人たちが、心をよりよく成熟させていくことは、共通する事実となるでしょう。

「インスパイア」(inspire)
「サーバント」(servant)
「ジェネラティヴィティ」(generavity)

 「鬼滅の刃」に登場する優れたリーダー「煉獄杏寿郎」から、受け取るメッセージを考える上で、ヒントにしてみてください。

(文:まっつん)