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心理学者フランクルは、20世紀最大の悲劇と言われたナチスの強制収容所を生き延びた人です。収容所での様子を冷静な文体で記した『夜と霧』(みすず書房)は、世界的ベストセラーとなり、今も、世界中で読み継がれています。
フランクルは「ロゴ・セラピー」という独自の心理学を打ち立て、「生きる意味」の尊さを人々に伝え続けました。下に記した言葉は、『夜と霧』にならぶ名著『それでも人生イエスと言う』(春秋社)からです。
生きることは、困難になればなるほど、意味あるものになる可能性がある
どんな困難な時にも「生きる意味」があり、自分の人生にイエスと言える。
フランクルが伝えたかったメッセージです。
日本で圧倒的人気を誇る『嵐』のメンバー二宮和也さんは、ハリウッド映画にも出演している俳優ですね。テレビのバラエティ番組で、お笑い芸人と絡んで、楽しそうにふざけている姿を見ると、ついハリウッド俳優でもあった事実を忘れてしまいます。
クリント・イーストウッド監督『硫黄島からの手紙』での演技は高く評価されました。上の写真を見るとわかる通り、ベルリン国際映画祭の舞台で、クリント・イーストウッド監督と一緒に写っています。
「否定からは何も生まれないと思っていて。意味のないことが嫌いだからね。
だから、意味のない否定をしないってということなんだろうね」
『+act(プラスアクト)vol.29 2010年』より
新しいこと始めようとしたり、難しい仕事をなんとかやり遂げようと話している時に、「できない理由」を並べたてる人がいます。「絶対無理、無理、だって・・・」と、語気を強めてロジカルに否定してくれます。
でも、「できない理由」ばかり口にする「否定癖」がつくと、結局、何もやらないことになってしまいます。周りの人のモチベーションも下がってしまいます。それでは現状維持ばかりで、いつの間にか時代に取り残されていることになりかねません。
「できない理由」という「否定からは何も生まれない」わけであり、アイデアを出している段階で、否定ばかりするのは、「意味のない否定」ですね。
意味のない否定をできるだけおさえて、「できない理由」ではなく「できる理由」を探して、新しいことにチャレンジしていくことを忘れたくないものです。
五郎丸歩は、2015年、イギリス開催の「ラグビーワールドカップ」で大活躍したラグビー日本代表の選手でした。その大会で、日本チームは世界の強豪南アフリカに勝利し、「スポーツ史上最大の番狂わせ」と海外メディアからも絶賛されました。ゴールキックを蹴る時のポーズは『五郎丸ポーズ』と呼ばれ、当時、日本で大流行しましたね。
人生で何かを得ようとするなら、何かを犠牲にしなければならない
長らく、ラグビー日本代表は「世界では勝てない」と言われ続け、選手たちもそう思い込んでいました。このマインドを変えたのがエディ・ジョーンズ監督です。「ハードワーク」と呼ばれた長期の合宿を何度も組み、世界に通用するマインドセットを選手に育みました。選手たちは多くの犠牲をはらい、合宿に参加し続けたのです。
そして「世界で勝てない」と言われていたチームが、「スポーツ史上最大の番狂わせ」を成し遂げました。
痛みのあることで、成長できることがあります。手放すことで、手にできるものがあります。
何かを犠牲にすることで、得るものがあるのです。
ハワード・シュルツ(Howard Schultz)は、「スターバックス」 をグローバル企業に育てあげた人物です。シュルツはシアトルの小さなコーヒショップだった「スターバックス 」を買収して、急成長させました。
シュルツは、貧民街の出身で、父親が仕事に恵まれませんでした。
「私は、スターバックスを、父に働いてほしかったと思えるような会社にしようと努力してきた。」
『スターバックス成功物語』(日経BP社) p183
このビジョンの通り、シュルツは、全パートタイマーを対象に正社員と同レベルの健康保険を適用しました。これは、アメリカ企業として初となる功績でした。
不運があきらめから生じることは間違いないが、幸運はそれを目指した者がつかむのだ。
『スターバックス成功物語』(日経BP社)
パートタイマーに健康保険を適用することには、多くの反対がありました。何より多大なるコストがかかり、経営を圧迫します。しかし、シュルツは社員を家族のように大事にする経営者であり、その理念を貫き通しました。
夢を目指したからといって実現するわけではないですが、目指さなければ実現しないのも事実です。あきらめることなく、堂々と幸運を目指し、それをつかみ取りましょう。
鍵山秀三郎氏は、「イエローハット」の創業者です。一代で1部上場企業を育てあげました。「トイレの神様」「掃除の神様」とも呼ばれます。
「トイレの神様」を呼ばれるのは、創業期から「トイレ掃除」を徹底的に行い、その活動を学びに多くの人々が鍵山氏のもとを訪れるようになったからです。地域の掃除活動を行う「日本を美しくする会」を立ち上げ、その組織は世界に広がっていきました。
「特別なことをするより、当たり前の平凡なことを非凡にするという考えから少し前向きないい思想がわいてくるんです。」
「凡事徹底」は、今や、鍵山氏の代名詞のようになっていますね。
掃除は、誰にでもできるものです。誰にでもできる平凡な事です。でも、掃除という凡事を徹底的にやっていくことで、その活動は世界に広がっていきました。
凡事も徹底すれば非凡な成果となる。
このことを鍵山氏は、掃除を通して証明したのです。どんな事でも徹底することを忘れたくないものです。
(文:松山 淳)