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エンカウンター・グループとは

エンカウンター・グループの定義と目的

 「エンカウンター・グループ」(Encounter group)の創始者は、アメリカ心理学会の会長も務めた米国の臨床心理学者カール・ロジャーズです。日本では「カウンセリングの神様」とも呼ばれる人物です。「エンカウンターグループ」は、正式には「ベーシック・エンカウンター・グループ」(Basic encounter group)といいます。

 ロジャーズは、著書『エンカウンター・グループ』(ダイヤモンド社 1973)の中で、「エンカウンター・グループ」について、こう記述しています。 

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ロジャーズ

エンカウンター・グループ(あるいは基本的出会いグループ)(Basic encounter group)ーこれは経験の過程を通して、個人の成長、個人間のコミュニケーションおよび対人関係の発展と改善の促進を強調する。」

【旧版】『エンカウンター・グループ』(ダイヤモンド社 1973)p7

 この記述ですと、「グループでの対話を通した経験」という観点が弱く、実際にどんな風に取り組むのかの描写が不十分です。よりわかりりやすい定義が『傾聴の心理学: PCAをまなぶ』(坂中 正義ほか 創元社) にありましたので、ご紹介いたします。

エンカウンター・グループの定義

エンカウンター・グループとは
自己理解や他者理解を深めるという個人の心理的成長を目的として、パーソンセンタード・アプローチの基本的視座を持つ1〜2人のファシリテーターと10人前後のメンバーが、集中的な時間の中で各人が自発的・創造的に相互作用を重ねつつ、安全・信頼の雰囲気を形成し、そこで起こる関係を体験しながら、率直に語り合い聴きあうことを中心に展開するグループ経験である。

『傾聴の心理学: PCAをまなぶ』(坂中 正義ほか 創元社)

 いかがでしょうか。グループでの対話を促進する「ファシリテーター」がいて、10人ほどのメンバーで集中的に話し合うことがわかります。多くのケースで、参加したメンバーたちは「輪」になって椅子や床に座り、話しあいをします。

 上の記述ですと「エンカウンター・グループ」の目的や具体的に何をするのかが明確になっています。

エンカウンター・グループの目的

 「エンカウンター・グループ」の目的は、「個人の心理的成長」です。

 ロジャーズの本に「個人の成長」とあり、上の一文にも「個人の心理的成長」とある様に、健常者を対象に「人としての成長」を目的にしているのが「エンカウンター・グループ」です。

 ロジャーズは「心の病」を治療するカウンセラーですが、「エンカウンター・グループ」は、精神疾患の患者を対象とした「集団療法」のひとつではありません。あくまで健常者の「自己成長」に焦点をあてています。

 では、「エンカウンター・グループ」は、何をきっかけに始まったのでしょうか。つづいて、「エンカウンター・グループ」のはじまりについて、お話ししていきます。


エンカウンター・グループのはじまり

カール・ロジャーズ(Carl Rogers)の自画像
カール・ロジャーズ
(Carl Rogers)

 カール・ロジャーズが「エンカウンター・グループ」を始めた頃のアメリカは、「集中的グループ経験」トレーニングの勃興期にあたります。「集的的グループ経験」とは、3日〜1週間など合宿形式で、10人前後の人が集まり話し合いをすることです。

米国のグループ・トレーニングの原点

 この原点は、「社会心理学の父」と呼ばれるクルト・レヴィンが始めた「Tグループ」です。「Tグループ」は「トレーニング・グループ」(Training Group)の略です。

 1946年、コネティカット州人種関係委員会は、社会心理学者として名を馳せていたレヴィンに助言を求めました。人種差別や宗教的偏見に対処するための「効果的手段」や「指導者の訓練」(リーダーシップ・トレーニング)についてです。

 これに応えてレヴィンは、合宿形式の研究会かつ人材研修のプログラムを企画し、それを実施しました。これが「Tグループ」の始まりです。

 この研究会は大成功をおさめ、「Tグループ」を本格的に研究・普及するためのNTL(National Training Laboratories for Group Development:国民訓練研究所)が、首都ワシントンに創設されます。

クルト・レヴィンの功績 クルト・レヴィンの功績

エンカウンター・グループの起源

 「エンカウンター・グループ」の始まりは、「Tグループ」と、ほぼ同時期です。ロジャーズは、1946年と1947年に、シカゴ大学カウンセリングセンターにてカウンセラー養成の仕事に関わっていました。

 1946年といえば、第二次世界大戦が1945年に終わった直後のアメリカです。ヨーロッパやアジアなど、戦地から帰国する多数の軍人を社会復帰させることが、国の大きな課題になっていました。シカゴ大学では、この問題に対処するため、復員軍人をクライエントとするカウンセラーの育成を急ぎました。

 カウンセラー養成に関わっていたロジャーズに依頼がきます。そこでロジャーズは、短期間の訓練コースを考え出したのです。これが、「エンカウンター・グループ」の原点です。ロジャーズは自著『エンカウンター・グループ』(ダイヤモンド社 1973)に、こう書いています。

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ロジャーズ

「そこで受講者が自己をよりよく理解し、カウンセリング関係で自己敗北になりかねない自己の態度に気づき、カウンセリングの場面で役立て利用しうる方法で相互関係をもてるように、一日数時間にわたる集中的グループ経験を試みてみた。」

【旧版】『エンカウンター・グループ』(ダイヤモンド社 1973)p6

 この養成コースは、カウンセラーであるロジャーズが立案したからこそ、グループを通した「治療的な効果」も認められ、成功をおさめることになります。

 ロジャーズは、このコースのエッセンスを取り入れ「エンカウンター・グループ」を発展させ、広めていくことになります。

 ちなみに、この「治療的な効果」という観点が「Tグループ」との違いです。

エンカウンター・グループとTグループの違い

 エンカウンター・グループは、「個人の成長、個人間のコミュニケーションおよび対人関係の発展と改善を第一の目的」としています。これに至るプロセスにおいて、ロジャーズはより治療的なものを志向していました。

 「Tグループ」は、「トレーニング・グループ」という名前からも連想される通り、その趣旨は、対人関係技法を習得したりリーダーシップ能力を高めたりする訓練(トレーニング)にありました。

 ロジャーズは、カウンセラーのためか、訓練(トレーニング)という言葉に嫌悪感があったようで、こう述べています。

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ロジャーズ

「〈訓練〉は、職業的に使用することができるような何かの商売か、芸術か、仕事に熟達させることを意味している。しかし、人はけっして個人を人間に〈訓練〉することはできない。(中略)多くのグループ促進者がトレーナー(訓練者)と呼ばれることはもっとも不幸なことだと思う。」

【旧版】『エンカウンター・グループ』(ダイヤモンド社 1973)p211

 上の言葉に「グループ促進者」とありますが、これは「ファシリテーター」(facilitator)のことです。現代の日本でも、ビジネス用語として一般的に使われている「ファシリテーター」(facilitator)という言葉は、実は、カール・ロジャーズが始まりなのです。

 「エンカウンター・グループ」と「Tグループ」に代表される「その他もの」との違いは、「訓練」という言葉の使用を批判し、「ファシリテーター」という言葉をあえて使う、ロジャーズの哲学的側面がより大きいといえます。

 「エンカウンター・グループ」「Tグループ」も、10人前後の人がグループとなり集中的に話し合い、自分を変えたり、人間関係を改善したり、何らかのポジティブな結果を求める点では同じものです。

 二つは、アメリカで広まるにつれて、「感受性訓練」(ST:センシティビティ・トレーニング:Sensitivity training)という言葉で表現されるようにもなり、参加者からすれば、ほぼ同じものと認識されるようになっていきます。


エンカウンター・グループの発展

 グループでの対話によって、人がよりよく変化し、成長していく。この魅力にとりつかれたロジャーズは、個人の治療を目的としたカウンセリングからエンカウンター・グループの研究と活動へと軸足を移し没頭するようになります。

 1963年、ウィスコンシン大学を辞め、「西部行動科学研究所」(Western behavior Sciences Institute)を共同設立しました。ここで「エンカウンター・グループ」が大ブレイクします。ロジャーズは「エンカウンター・グループ」に専念するため、1968年人間研究センター(Center for Studies of the person)を創設します。

エンカウンター・グループが映画化

 エンカウンター・グループは、米国で社会的なムーブメントとなり『自分自身への旅(Journey Into Self)』という映画になっています。邦題は『出会いへの道』です。この映画は、1968年アカデミー賞長編記録映画部門の最優秀作品賞に選ばれています。

 「YouTube」に映像があるので、リンクをはっておきます。映像の中で、坊主頭でメガネをかけスーツ姿でネクタイをしめている人が、カウンセリングの神様カール・ロジャーズです。

 エンカウンター・グループは、当初、「個人の成長」を目的としていました。ですが、ロジャーズは、視野を広げ「組織の成長」にも取り組むようになります。学校や職場にエンカウンター・グループを導入し、人間関係が悪化しネガティブな状態に陥っていた組織を再生することに成功していくのです。

ノーベル平和賞の候補になったロジャーズ

 「組織」から、さらに視野を広げ「政治的問題」にも取り組んでいきます。彼は対話を軸とする大規模なワークショップを各国で開催するようになります。

 『カール・ロジャーズ入門―自分が“自分”になるということ』(諸富 祥彦 コスモスライブラリー)を参考にすると、次の事例をあげられます。

  • 1973年、北アイルランドでのプロテスタントとカトリックの葛藤緩和。
  • 1985年、オーストリアにて副大統領クラスの人間を招待し、中央アメリカ諸国の緊張緩和を論じるワークショップを開催。
  • 1986年、南アフリカの人種差別における黒人と白人の対話。
  • 『カール・ロジャーズ入門―自分が“自分”になるということ』(諸富 祥彦 コスモスライブラリー)p123

 ロジャーズは、その国際的な活動が認められ、1987年、ノーベル平和賞にもノミーネトされています。

 ですが、1987年4月に永眠し、自分がノーベル平和賞の候補になっていることを知らずのまま、この世を旅立ちます。

日本での悲しい事実

 日本でも、1970年代から「エンカウンター・グループ」は、広く普及していきました。ですが一部の団体で誤った使われ方がされました。怒鳴り声をあげ変化を強要し、心に傷を負うような弊害だらけのプログラムが実施されたのです。その結果、「エンカウンター・グループ」は社会的問題になり、実施されないようになっていきます。これはロジャーズの精神を無視した愚かで悲しい事実です。

 とはいいながら、ロジャーズの哲学を守り、正しい知識と技能を備えた人々によって「エンカウンター・グループ」は、今も、実践され続けています。南山大学の取り組みが有名です。


ロジャーズの哲学 ありのままの自分へ

 ロジャーズがカウンセリングを通した「個人の治療」から「エンカウンター・グループ」へと軸足を移していったのは、ロジャーズ自身がその効果を強く実感していたからです。

つくった自分(ペルソナ)

 エンカウンター・グループは「個人の心理的成長」を目指します。これをロジャーズ理論で具体的に言うと「ありのままの自分」(真実の自己)になることです。

 人は社会に適応するために、「つくった自分」(ペルソナ)で現実に対処することがあります。「ベルソナ」の語源は「仮面」です。「本当はこんな自分じゃない」と思っていても、周囲の人との関係性やイメージが固定されてしまうと、仮面をつけたまま職場で働いたり、家庭で生活をすることになります。

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まっつん

 高校に入学したり、大学生活を始めたりして、新たな人間関係に入っていく時、学生が「キャラをつくる」と言いますね。このキャラがベルソナです。「つくったキャラ」が「ありのままの自分」であればいいのですが、無理につくった「キャラ」だと、自分に嘘をついている感覚が強くなり、やがて辛くなっていきます。自分で「つくった自分」(ペルソナ)に自分が耐えられなくなるのです。

 もちろん、必ずしも「ペルソナ」が悪いわけではありません。ペルソナあるからこそ、人は人間関係を上手にやりくりし、現実に対処していけるのです。ただ、「つくった自分」が長期に渡って続けば、つくった自分が本当の自分だと思い込み、「ありのままの自分」(真実の自己)がわからなくなって、窮屈な思いをしながら生きることになります。

 なんとなく感じる「生きづらさ」は、ベルソナが原因のケースもあります。

エンカウンター・グループの効果

 「エンカウンター・グループ」は、知らない人同士が集まるので、ペルソナではない「ありのままの自分」(真実の自己)を出しやすい環境が整います。ファシリテーターが「ありのままの自分」を出しやすいように支援し、参加者も互いにそのことをサポートしあいます。

 その結果、ペルソナを手放し、心の奥底に隠れていた「ありのままの自分」(真実の自己)に気づき、肯定できるようになっていくのです。これにはとても強い解放感があり、「生きるのが楽になる」という感覚を生み出します。

 「エンカウンター」とは「出会い」という意味ですが、知らない人と出会い、グループで対話をして、そこで「ありのままの自分」(真実の自己)に出会うということでもあるのです。

 「エンカウンター・グループ」でファシリテーターは、リーダーやトレーナーではありません。あくまで「対等の参加者」という意識をもって臨みます。ですので、ファシリテーターも参加を重ねていくことで、「ありのままの自分」(真実の自己)を自然に出せるようになっていくのです。それが「心の成長」です。

 ロジャーズは、多くのエンカウンター・グループにファシリテーターとして参加し、どんどん「ありのままの自分」(真実の自己)になっていきました。これが「個人の心理的成長」であり、その「成長感」が、ロジャーズを「エンカウンター・グループ」にのめり込ませていったのです。

ありのままの自分でいるほうが成果が高くなる

 ロジャーズは、ファシリテーターが「ありのままの自分」(真実の自己)でいればいるほど、より実りの多いグループ・ワークになるといいます。自分を偽っていたり、ペルソナで対処していると、グループが活性化せず、乏しい成果になるというのです。

 これはファシリテーターをする人だけなく、チーム(グループ)を率いる現代のビジネス・リーダーたちが耳を傾けるべき金言ですね。

 ロジャーズは、こういっています。

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ロジャーズ

「私が武装しないで出て行くことができ、私のありのままと違った見せかけをしようとしない時、私ははるかに多くのことを学びとれる──皮肉や敵意からさえも。そしてはるかにくつろげるし、人々とも非常に近い関係になることができる。その他にも、私が傷つきやすいということを受け容れることは、私との関係で他の人々からも真実の感情をはるかに多く引き出す結果となり、これは非常に価値のあることである。」

【旧版】『エンカウンター・グループ』(ダイヤモンド社 1973)p161

なぜ、オーセンティック・リーダーシップなのか?

 今、米国では、「サーバント・リーダーシップ」にならび「オーセンティック・リーダーシップ」が注目されています。

 「オーセンティック(Authentic)」とは、「本物である」「信頼できる」という意味です。「偽りの自分」(False self)」ではなく「本物の自分」(Authentic Self)に基づいて発揮されるのが「オーセンティック・リーダーシップ」です。

 「本物の自分」(Authentic Self)をロジャーズの言葉を用いるなら、リーダーが「ありのままの自分」(真実の自己)でいる、ということですね。

 「オーセンティック・リーダーシップ」が、注目される理由は、約50年前にロージャーズが述べていました。

なぜ、オーセンティック・リーダーシップ?
「ありのままの自分」(真実の自己)でいたほうが、「人々とも非常に近い関係になる」ことができるし、「人々からも真実の感情をはるかに多く引き出す」ことができ、結果的にそのことは、リーダーの信頼感を高めチームの成果を向上することにつながるからです。

 「エンカウンター・グループ」でロジャーズが体験して導き出したマインドセットは、今を生きるリーダーたちの心構えとして学ぶべきものがあります。

 リーダーとして「どうあるべきか」?

 このシンプルな問いに対して、「ありのままの自分」(真実の自己)と答えることができます。それは、世界レベルで人々の自己成長を成し遂げたカール・ロジャーズから50年の時を越えて届けられたプレゼントであり、リーダーなら胸に秘めておきたい言葉です。

 「真実の自己」が「人生の真実」を見せてくれる。どんな時代も、「真実の自己」で生きることが、私たちの心をどこまでも強くしてくれるのです。

(文:松山 淳)

カール・ロジャーズの名言
私が防衛的でなく、仮面の背後に隠れず、ただ真実の自分であろうとし、またそれを表明する時、私は人生をより享受するのである。

【旧版】『エンカウンター・グループ』(ダイヤモンド社 1973)p161


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