あなたの「生まれ持った性格」がわかるMBTI®自己分析メソッドとは

自信をつける心理学

自信をつける心理学

 「自信」とは、自分のこれから取り組むことに対して「できる」「できそうだ」と思える感覚のことです。この「自信」を構築する3要素として「自己評価」「行動」「自己主張」があります。3つの要素を説明した後に、「5月病」などの自信喪失状態を回復させる考え方についてお話しします。最後に、スポーツ心理学での自信をつける手法「イメージ・トレーニング」について解説します。読めば「自信をつける」コツがわかります。

自信を失った営業部長

 世界的に有名な経営コンサルタントにブライアン・トレーシー氏がいます。IBM,クライスラー、コカコーラなど、米国の有力企業200社以上をクライアントにもつ凄腕の人です。

 さぞ恵まれた華やかなキャリアを歩んできたのかと思ったら、そうではなく、貧困から身を起こし、様々なキャリアを重ね成功した人物です。

まっつん
まっつん

トレーシー氏は「営業の神様」として名を知られていますが、営業部長時代には、リーダーとして「大きな挫折」を経験していました。そのエピソードが、『人を動かせるマネジャーになれ!』(かんき出版)に書かれてあります。

 ある時、トレーシー氏は、トップ営業マンとして活躍し、その功績が認められ30人の部下をもつ営業部長になりました。

部下に鼻をへし折られ自信喪失したリーダー

 トレシー氏のリーダーシップ・スタイルは、高圧的なものでした。成果をあげるため、部下を叱咤し「クビにするぞ」と脅したこともあります。

 営業部長に就任して1週間がたち、会社に出社すると職場から部下の姿が消えていました。ひどいリーダーシップに耐え切れず、部下たちは他社に転職しようとしていたのです。顧客も引き連れていくという事態でした。

 トレーシー部長は、部下の代表者に会い、自分の行動を謝罪し「社に復帰してもらいたい」と懇願します。部下からは「副部長を任命すること」、さらに「敬意をもって部下に接すること」などの条件が提示されました。

 天狗になったリーダーが、部下たちに鼻をへし折られる典型例ですね。上司として自信喪失状態になったこの苦い経験から、トレーシー氏は、その「最大の教訓」を記しています。

ブライアン・トレーシーの教訓

「人の能力を最大限に引き出すには、学歴や知識、経験よりも、感情的な影響を与える接し方や言動のほうが重要だ」

『人を動かせるマネジャーになれ!』(ブライアン・トレーシー かんき出版)

 ポジションの高さを武器に高圧的なリーダーシップを発揮し、トレーシー営業部長は、部下の能力を引き出すことができませんでした。それどろか、チームを崩壊させてしまったのです。

 部下の能力を引き出しチームをまとめるために何より重要なのは、「感情的な影響を与える接し方や言動」であることに気づいたわけですね。

自信の源泉

 さらにトレーシー氏は、著書の中で「セルフイメージが行動を決める」という項を設定し、「自己像」「自尊心」の重要性について述べています。

 心理学でも「セルフイメージ」は「自信」の源泉とされ、行動力、そしてリーダーシップの力と深い関係があるとされています。

 それでは、次に「自信」を構成する3要素について心理学の観点から詳しく見ていきます。


褒めることは、脳の「報酬」になっていた

 心理学の立場から「自信」の概念を深く掘り下げた本に『自信をもてない人のための心理学』(フレデリック・ファンジェ 紀伊國屋書店)があります。

 精神科医フレデリック・ファンジェは、この著で「自信」をつける3つの要素の分解しています。

「自信」をつける3要素
  1. 自己評価:自分を価値のある人間存在として考えられているかどうか、つまり自分を大切にできているかどうか。
  2. 行動:行動して成功することで「自信」はつく。行動と結果の好循環サイクルで自信は高まっていく。
  3. 自己主張:上手に〈自己主張〉することができるれば、「自分は他人から認められている」「敬意を払われている」「愛されている」「人間として尊重されている」と実感することができ〈自己評価〉が高くなり、「自信」がつく。

『自信をもてない人のための心理学』(紀伊國屋書店)を参考に作成

 「自己評価」「行動」「自己主張」の3要素は関連していて、相互に影響を与えています。ひとつの要素が強化されば、他の要素に影響を与え、「自信」はさらに強化されると考えます。

まっつん
まっつん

 3要素を三角形で考え、「自己主張」を頂点にします。これを「シャンパンタワー効果」が働くと考えれば、【自己主張】のスキルが少しでも高まれば、注がれたシャンパンが、タワーを下へ下へと流れていくように、下の要素である【行動】【自己評価】に及び、総合的に「自信」は高まっていきます。

 トレーシー営業部長がとった「クビにするぞ!」と、部下を脅すリーダーシップ・スタイルは、部下の「自信」を形成するどころか、部下の安定した「自己評価」(セルフイメージ)を壊し、「自信」を失わせるものでした。

 また、トレーシー部長も部下との衝突で、自信を失いました。部下が職場から消えるという「痛い経験」をして、初めてリーダーとして何が大事なのかに気づきました。その教訓を今、全世界のリーダーたちに伝えています。この事実から、次のことも自信にまつわる教訓といえます。

自信とは、自信を失う経験からも培われていく

 痛みをともなう失敗経験ほど学びは大きいものです。失敗して学び、その時、得た教訓を実践していくことで、さらに大きな自信をつけていくことができます。失敗も自信をつけるチャンスといえます。


自信をつけさせるには「共感」

 「自信喪失」状態には、様々な例がありますが、新入生・新社会人に多い「5月病」はその代表例です。「5月病」とは、学校や会社という新たな環境に慣れることができず、不安が大きくなって自信がなくなる心理状態です。

 「5月病」になった人の【自己評価】は、著しく低下しています。

 学校にいても居場所がないようだ。
 職場の人に受け入れられていないみたいだ。
 みんなから嫌われているらしい。

 そんな風にセルフイメージは悪化し、現実を正確に認識するセンサーが故障してしまいます。

憶測の判断は自信を喪失させる

 「~ようだ」「〜みたいだ」「〜らしい」

 こうした憶測にもとづく「自己評価」が繰り返されると、それがその人にとっての「真実」となってしまいます。憶測によって自己評価は急降下していくのです。会社に慣れない不安感の強い新入社員なら、なおさらそうです。

 そして、忙しそうにしている先輩たちを見ていると、なんだか申し訳なくて、自分の不安について相談できなくなり、そして、会社に行けなくなってしまうのです。

 精神科医クリストフ・アンドレが書いた『自己評価メソッド』(紀伊國屋書店)に、こんな一文があります。

 私たちは「人から受け入れられない」事態を恐れるあまり、「火のないところに煙を立ててしまう」場合があるのだ。
 別の言い方をすれば〈警報シスムテムの故障〉によって、「本当は煙が出ていないのに、火災報知機を鳴らしてしまう」のである。

『自己評価メソッド』(クリストフ・アンドレ 紀伊國屋書店)

 ここでいう「火災報知機を鳴らす」ことが、自己評価を下げる思考パターンです。「煙が出てないのに火災報知機を鳴らす」とは、例えば、本当はまわりの人から全然、嫌われていないのに、「自分は嫌われているらしい」と、思い込んでしまうことです。

 嫌われていないのに、火災報知機を自分で鳴らして、自己評価を下げ、自信喪失状態を招いているわけです。

自信をつけるには正確な事実を知る

 正確に現実を認識できていない「憶測」の自己評価から自信喪失になるなら、それをひっくり返して、正確な現実を認識すれば自信をつけることができます。

まっつん
まっつん

 「自己評価」は「行動」「自己主張」と相互作用してつくられるものでした。ですから、正確な現実認識をするための「行動」を起こすのです。ここで「自己主張」とは、周りの人とコミュニケーションをとることです。自分について自ら他人に働きかけ、自分について「聞く」のです。

 自信喪失状態になると、自分の殻に閉じこもって他人とコミュニケーションをとらない傾向が強まります。そうなる前に、周りの人と会話をし情報を収集し、正確な現実を認識するように心がけるのです。

 そうすれば、「私は嫌われているらしい」といった、自分でつくりあげた世界で、自分を追い込むことが少なくなりますし、他人から励まされる機会も増えて、「自信をつける」チャンスに恵まれるようになります。

自信喪失の人をサポートするのは「共感」

 「5月病」など、自信喪失状態にある人が立ち直るには、周りの理解と支援が必要です。自分で火災報知機をボタンを押して手を離さない状態は、「〜らしい」と、歪んだ現実を真実だと固く思い込んでしまっている状況です。

 現実の認知がゆがむ時は、心に壁をつくって、その中にひとりで閉じこもり、誤った判断をしています。氷のように心が固くなり認知の柔軟性を失っています。『アナと雪の女王』でいうと、氷の城に閉じこもった「エルサ」状態ですね。

 周囲の人は、とかく「それはお前の思い込みだよ」と、すぐに間違いを指摘しがちですが、その前に話をじっくり聞いてあげるのが効果的です。

上司
上司

 「まだ会社に慣れてないから、そう思う気持ちもわかるよ」

 そんな風に「共感」してあげるのが自信を取り戻す近道です。

 「北風と太陽」の物語でいえば、「指摘」は「北風」であり、「共感」が「太陽」の役割を果たします。

 「指摘」をすれば、「それは違いますよ」と 反発心が動き、余計に壁の向こう側にひっこんでしまいます。でも、「共感」すれば、壁は低くなり、凍った氷は溶け出して、現実の認知を受け入れる心の余裕が生まれます。

まっつん
まっつん

 「共感」とは「共に感じること」です。「共に感じてくれる人がいる」という事実が、その学校・職場に「受け入れられた」というポジティブな感覚を生み出し、歪んだ「自己評価」を元に戻すのです。

 そうなれば、自分で押し続けていた火災報知機のボタンから手を離すことにないります。自信をつけることは、他人との共同作業であることも大きなポイントです。 


自信をつけるにはイメージ・トレーニングが有効

 精神科医ファンジェ氏による、自信を形成する3要素は以下のものでした。

 【自己評価】【行動】【自己主張】

 これら3つが相互作用し「自信」は高まります。これらの3つを眺めた時、かつての私は、最も重要なのは【行動】であり、【行動】によって「自信」はつくられると考えていました。

まっつん
まっつん

 会社員を辞めて独立し、様々な企業で講演・研修を重ねて、今では、人前で話す時にそれほど緊張しなくなっています。ですが、20代の頃の私は、人前で話そうとしたら、足はガタガタ、手はプルプル、頭はフラフラで、自信のかけらもない人間だったのです。

 そんな私が「自信」をもって人前に立てるようになったのは、「人前で話す」という【行動】を取り続けたからです。だから、「自信」を形成するのは、【行動】あるのみ、と考えていました。

 ですが、オリンピック選手などトップ・アスリートたちが行うメンタル・トレーニングの理論(スポーツ心理学)では、「行動だけが自信を形成するのではない」という考え方が常識になっています。

 日本のメンタル・トレーニングの第一人者に福島大学の教授だった白石豊氏がいます。オリンピック選手やプロスポーツ選手など、数多くのトップアスリートたちのメンタル面を支えてきた人です。2010年、岡田武史監督が率いるサッカー日本代表のチームづくりもサポートしています。

 その白石氏が書いた 『実践メンタル強化法』(著 白石豊 大修館書店)の中に、こんな一文を見つけます。

自信について誤った考え方をしている指導者や選手が意外に多いのも事実である。つまり自信の大きさは、それまでの実績に比例するという考え方である。
 確かに過去の成績がすばらしい選手は自信にあふれているように見える。しかし、過去の実績がなければ本当に自信は持てないのだろうか。

 答えは「ノー」である。

 メンタルトレーニングの面から言えば、試合に勝ったから自信がついたのではなく、何らかの手だてによって、試合にのぞむ前にあらかじめ自信をつけ、その結果として、勝利を得る可能性を少しでも高めるというのが正しい。

『実践メンタル強化法』(著 白石豊 大修館書店)

 上の文に「何らかの手だて」とあります。その「手だて」が「メンタル・トレーニング」であり、そのひとつが「イメージ・トーレニング」です。

 「イメージ・トレーニング」は、1970年代から行われてきた伝統あるメンタル・トレニング技法です。試合の前にトップアスリートたちは、「自信」を高めるために、それを行っているのです。

 自分が成功している試合の場面を目を瞑りイメージするだけでなく、その情景を文章化して、毎日、毎日、読み上げます。これは「メンタル・リハーサル」ですね。この考え方は、ビジネスの世界に応用されています。

 例えば、会社の命運をかけるプレゼンがある時、自分が自信をもって話している場面を、毎日、毎日、イメージし続けるのです。

まっつん
まっつん

 成功には様々なファクターが関係するため、うまくイメージしたからといって、必ずプレゼンが成功するわけではありません。でも、心のイメージは確実に自身の心に影響を与えます。その結果、プレゼン本番を前に「自信」を形成することができ、成功の確率を5%でも10%でもあげることができるのです

 これは「自己評価」をあらかじめ高めておく方法といえます。

 トップ・アスリートたちが熱心にメンタル・トレーニングに取り組むのは、それだけの実績があるからであり、それを応用し実践しているビジネスマンは多く存在しています。

 現代の「経営の神様」京セラ創業者稲盛和夫氏は、『生き方』(稲盛和夫 サンマーク出版)の中でこう言っています。

稲盛和夫
稲盛和夫

『すみずみまで明瞭にイメージできたことは間違いなく成就するのです。すなわち見えるものはできるし、見えないものはできない。したがって、こうありたいと願ったなら、あとはすさまじいばかりの強さでその思いを凝縮して、強烈な願望へと高め、成功のイメージが克明に目の前に「見える」ところまでもっていくことが大切になってきます。』

『生き方』(稲盛和夫 サンマーク出版) p53-54

 イメージすることで稲盛さんは数々の成功体験を積んできています。これは、イメージに大きな力があることの証明といえます。


「自信」は必ず後からついてくる

 自信をつけようと考えた時に、「行動や経験が大事だ」と、すぐに理解できます。小さな成功体験を積み重ねていくことで、自信は確かにつくられるものです。

まっつん
まっつん

でも、「卵が先か鶏が先か」で、「自信からあるから行動できるのであって、自信がなければ行動はできないじゃないか」と、堂々めぐりになるケースがあります。

「それができるんだったら、やってますよ」。そんな風に、かつての私も、よく愚痴ったものです。

この悪循環の問答に巻き込まれると、結局、答えを見出せず、、虚しくなるばかりで、さらに行動力は乏しくなり自信は失われていってしまいます。

 でも、メンタル・トレーニングでは、「イメージすることで自信がつく」ことは、常識なのです。

 だから、もし、行動や経験や実績に「自信がもてない」のであれば、自分が取り組もうとすることに対して、日々、イメージ・トレニングをしてみることです。

 イメージ・トレニングは自分ひとりでできます。誰かの助けもいりません。難しい本を読むこともありません。稲盛さんの言葉どおりです。ひたすらひとりで、自分の家やカフェや会社のトイレや寝る前など、ことあるごとに「自信をもっている自分」「自信をもって行動している自分」をイメージし続ければいいのです。

 イメージトレニングで自己評価(セルフイメージ)が高まっていけば、「行動」「自己主張」は掛け算で、相互作用しますので、自然と「自信」も高まっていきます。

 自信は後からついてくる。

 古くからいわれるこの言葉はイメージトレニングにも当てはまります。「自信」をつけて、自分らしく人生を楽しみましょう。

 (文:松山淳)