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上手に人を褒める3つのポイント

 褒める時に大切なことは、「褒めることが人の力になる」と信じていることです。「褒める力」を信じて褒める場合とそうでない場合には明らかに差が出ます。そこで「褒める力」を理解するために、まず「心理学」と「脳科学」の観点から「褒める論」を展開します。その後に、人を褒める際に心がけたい3つのポイント(「全員を褒める」「客観的な事実を示して褒める」「間接的に褒める」)についてお話ししていきます。

褒めると承認欲求が満たされる

 なぜ、人は褒められると嬉しいのでしょうか。
 なぜ、人は褒められると、心に力がわくのでしょうか。

 なぜなら「承認欲求」が満たされるからです。

A・H・マズローの「承認欲求」

 「承認欲求」は、おなじみのA・H・マズロー欲求階層説に出てきます。下の図では、上から2番目に位置されていますね。「欲求階層説」はモチベーション理論として有名なものです。

 「欲求階層説」はマズローが書いた『人間性の心理学』(産業能率大学出版)に出てくる概念です。「承認の欲求」について、こう書かれています。

「承認欲求」マズローの定義

我々の社会では、すべての人々(病理的例外は少し見られる)が、安定したしっかりした根拠をもつ自己に対する高い評価、自己尊敬、あるいは自尊心、他者からの承認などに対する欲求・願望をもっている。

『人間性の心理学』(A・H・マズロー 産能大出版)p70

 人は、自分の「欲求」を満たそうとして行動します。例えば、代表的な「欲求」は「食欲」です。お腹が空くと人は、何かを食べて「食欲」を満たそうとします。

 料理を作ったり、レストランに出かけたり、グルメの人は美食を求めて海外まで行きます。食欲は生命の維持にも関わるため、非常に強く人を突き動かす「欲求」になっています。

まっつん
まっつん

 これと同じ心の仕組みが「承認欲求」にもあるのです。人間には「承認されたい」という欲求があり、それを求めて、それを満たそうとして人は行動を起こすのです。誰だって「お前、ダメだな」とバカにされるより、「お前、すごいな!」と認められたい(承認されたい)ものですね。

 マズローは、「承認欲求」を2つに分けています。

2つの「承認欲求」
  1. 自分で満たす承認欲求
     強さ、達成、適切さ、熟達と能力、世の中を前にしての自分、独立と自由などに対する願望。
  2. 他人によって満たされる承認欲求
     (他者から受ける尊敬とか承認を意味する)評判とか信望、地位、名声と栄光、優越、承認、注意、重視、威信、評価などに対する願望

『人間性の心理学』(A・H・マズロー 産能大出版)p70の記述を参考に作成

 上の❶と❷の違いは、❶が自分の判断で「自分が満たす承認欲求」であるの対して、❷は「他人によって満たされる承認欲求」である点です。

❶自分で満たす承認欲求

 ❶の場合、承認欲求が満たされているかどうかの判断は、自分によってなされます。他人からどれだけ「強い」「能力がある」と言われても、自分で「強い」「能力がある」と感じられなければ、承認欲求は満たされたことになりません。

 その反対もありますね。「お前はダメだ」どれだけ他人から能力の低さを指摘されても「自分には力がある」と、自分で自分の承認欲求を満たすことができ、揺るぎないメンタルの強さを見せる人もいます。

❷他人によって満たされる承認欲求

 ❷の場合は、他人から働きかけがキーになります。「他人から褒められて嬉しい」というケースが、まさにそれです。会社の人事考課で高く評価されボナースが倍になって嬉しいのは、「他人が認めたくれた」ことも関係します。。

 「承認欲求」に他人の存在は、大きく影響されます。例えば、現代人の欠かせないツールとなったSNSは、❷「他人によって満たされる承認欲求」によって動いている世界です。

まっつん
まっつん

 インスタやフェイスブックで、他人から「いいね!」をもらえるのは嬉しいことです。なぜ嬉しいのかといえば「承認欲求」が満たされるからです。

 だから人は、写真を撮ったり動画を作成したりして、SNSにアップします。そしてひとつでも「いいね!」がつけば、さらに多くの「いいね!」を求めて、次から次に行動を起こしていきます。

 SNSは、どれだけ人が強く「承認欲求」によって突き動かされているかを証明している世界です。


 「褒められる」ことはこの「承認欲求」を満たし、そして「承認欲求」は誰もがもっているため、学校にしろ会社にしろ、人を育成する場面では欠かせない行為なのです。

 さて、ここまでマズロー心理学の観点から「褒めることの必要性」を述べました。次に「脳科学」の観点から考えてみたいと思います。


褒めることは、脳の「報酬」になっていた

 2008年4月に「自然科学研究機構・生理学研究所」が、「褒め言葉」は、脳にとって「報酬」である、という研究結果を発表しています。

褒め言葉は、脳の「報酬」

 褒められた時に脳がどんな状態になるのか、どの部位が活性化するのかを、実験して明らかにしたのです。その内容は「生理学研究所」HPで確認できます。

 「生理学研究所」HPには、こう書かれてあります。

 他人に褒められると反応する脳の部位は、お金のような報酬をもらえるときに反応する脳の「線条体」と同じ部位であることが明らかとなりました。褒められることが、実際に脳においては「喜び」となり、「報酬」としてお金などと共通に受け取られていることを明らかにした世界で初めての研究成果です。
 これまでの教育心理学によって、子育てなどでは「褒めると育つ」といわれています。今回の研究成果は、この「褒めると育つ」という言葉の裏づけとして、ほめられることが脳の中では「報酬」として喜びと感じられていることを明らかにしました。

褒められる」ことは報酬— 脳の”喜ぶ”様子を画像で捕らえた!—
「生理学研究所」HPより

 私たちは、お年玉をもらったり、ボーナスを受け取ったり、何らか形でお金を受け取ると「喜び」を感じます。この金銭に関する「喜び」と、人から褒められ時に感じる「喜び」が、脳内でほぼ同じ部位で反応していたのです。

 心理学では、欲求を満たす要因を「心理的報酬」といいます。「褒め言葉」は、心を満たす「心理的報酬」として理論化されていました。そのことが脳科学の観点から証明されたわけです。

「”褒められる”と”上手”になる」は本当だった!

 「自然科学研究機構・生理学研究所」は、褒める研究で、褒めることとスキルの上達の関係性についても実験を行っています。

 この実験結果も、「褒める力」を証明することになりました。48人の成人を対象に「指の動かし方」に関するトレーニング実験が行われました。被験者は、次の3つのグループに分けられました。

❶「自分が評価者から褒められる」グループ
❷「他人が評価者から褒められるのを見る」グループ
❸「自分の成績だけをグラフで見る」グループ

 実験の結果、❶「自分が評価者から褒められる」グループの成果が高かったのです。人から褒められることが、やっぱり効果があったのです。この結果を受けて、実験を主導した定藤教授はこう述べています。

「“褒められる”ということは、脳にとっては金銭的報酬にも匹敵する社会的報酬であると言えます。運動トレーニングをした後、この社会的報酬を得ることによって、運動技能の取得をより“上手”に促すことを科学的に証明できました。“褒めて伸ばす”という標語に科学的妥当性を提示するもので、教育やリハビリテーションにおいて、より簡便で効果的な“褒め”の方略につながる可能性があります」

「”褒められる”と”上手”になる」ことを科学的に証明
「生理学研究所」HPより

 いかがでしょうか。「褒めて伸ばす」と昔から言われますが、この教訓は、科学的にも証明されているのです。


褒め上手になる3つのポイント

「褒めることがいいと、わかってるんですけど、どうしても褒めるのが苦手なんです!」

 組織で働くリーダー層からよくお聞きする言葉です。本人の性格・個性が大きく影響していますが、「褒めるコト」が苦手なリーダーは多いものです。

 そこで、人を「褒める」時に心がけるポイントについて、「定番もの」を3つに整理してお話ししていきます。「褒めるコツ」3か条ですね。

「全員を褒める」

 「褒める」ことが苦手な人の中には、「そもそも部下と個人的に会話をするのが苦手だ」という人が多いです。これはコミュニケーション力の問題です。また、特定の個人を褒めることで「えこひいきをしている」と、部下から思われることを、心配し過ぎている場合もあります。 

 そんなリーダーの方々へのご提案が「全員を褒める」です。朝礼やミーティングの場で、部や課のメンバー全員を「褒める」のです。

 例えば、売上が落ちている部署であっても「こういった状況だけど部の雰囲気は決して悪くなっていない。みんながんばっていると思う」と、全員に語りかけ、全員の働きを認めます。

優れたリーダーの言葉づかい

 「みんなは…」「我が部は…」「うちの課のメンバーは…」と、全体を指す言葉を使うのもポイントです。優れたリーダーは「私…」ではなく「私たちは…」「我々は」という言葉をよく使います。全員に語りかけ、現在の全体状況を伝え、その中での良い点をピックアップし「褒める」のです。

 全員に語りかけていても部下は、自分が褒められているように感じるものです。これはメンバー同士の仲間意識を高めることにもなるので一石二鳥です。

「客観的な事実を示して褒める」

 「褒める」という行為が、部下の「下手に出る」ように感じられ「嫌だ!」と言う人がいます。「お世辞」「おべんちゃら」と同じで、「褒める」ことは「心にもないことを言うことだ」と思い込んでしまっているのです。 

 部下の性格が「いい」とか「悪い」とか、能力が「高い」とか「低い」とか…そんな定性的な評価には、人の「主観」が入ります。

 評価とは「主観」の産物で、どうしても判断はわかれるものです。営業課長が「A君はいまいちだな」と思っていても、総務課長は「A君はいつも元気でいいね」と意見がくい違うのは、日常茶飯事です。

 そこで、客観的な「事実」をしっかり示してから褒めるのがポイントになります。

  • 取引先との待ち合わせ時間に遅れなかった。
  • 売上の数字が上がった。
  • 売上目標を達成した。
  • 書類が期日通りに仕上がった。
  • 企画書に誤字脱字がなかった。

 上のような、誰からも反論されない事実を提示して評価するのです。

 数値に置き換えられるような定量的な事実を見つけ出し褒めれば、それは「お世辞」や「おべんちゃら」にはなりません。事実に対して評価をしているだけです。

まっつん
まっつん

 部下の側にも、「根拠を示されず褒めらると、逆に腹が立つ」「バカにされているように感じる」という性格タイプが存在します。このタイプは、ユング心理学でいう「思考タイプ」に多いですね。物事を論理的に考えるロジカル・シンキングを自然とするタイプです。

 私はユング心理学をベースに開発された性格検査MBTI®を活用した研修を10年に渡って行ってきていますので、これは「思考タイプ」ご本人たちから繰り返し聞かされている事実です。

「〜である。なぜならば、〜だからだ」。そんな論理的思考プロセスがあることで納得感が増すタイプに、ただ「いいね」「すごね」と言うだけでは、褒め言葉が腑に落ちないのです。

上司
上司

今期は前期より売上が120%アップして目標に達成したね。君の努力のお陰で、部全体の売上目標も達成できたよ。ありがとう。

 上の言葉にある通り、120%アップという「褒める根拠」を示し「感謝」をすることで、相手も「認めてもらった」と感じます。

❸「間接的に褒める」

 「間接的に褒める」は、定番中の定番ですが、確かに効果があります。

 私のかつての上司がそうでした。間接的に褒めるのが上手なリーダーでした。

上司
上司

「松山、取引先のA部長が礼儀正しい新人さんだって褒めてたぞ!」
「松山、顧客のB社からメールが来て、お前にもよろしくって伝えておいてくれだってさ。お前、いいキャラしてるから、打ち合わせが楽しかったってさ…」

 若い頃の私は、褒められると、つい「本心で言っているのか?」と疑うひねくれ者でした。でも、こうした間接的な褒め方は、胸に刺さるものがありました。

まっつん
まっつん

 私の上司は、自分が体験した事実だけを話しています。本人の主観ではなありませんね。主観ではないので、私(部下)は反論できません。

 ですので、褒めるのが苦手な時には、間接的に部下を褒めることを心掛けてみてはいかがでしょう

 他人から部下の良い評判を聞いたら、可能であればすぐに伝えてあげるのがポイントです。部下を褒められれば上司自身もやはり嬉しいもので、その嬉しさの鮮度が高いうちに伝えると、部下に伝わり効果的です。

 感情は時間がたつと冷めます。これは感情の法則です。冷めると「褒めよう」という考え自体が変わってしまいます。会社に戻ったら褒めてやろうと思っていても、帰る途中でトラブルが発生し、その対応に追われ頭が一杯になってしまうかもしれません。

 褒めることが社員のモチベーションに良い影響を与えることは衆知の事実ですから、褒めることの「機会損失」を発生させないこともポイントです。


まとめ:「褒める」に迷ったら「感謝」する!

 アドラー心理学が日本で広がり「褒めることを否定」する論を、多くのリーダーがインプットしました。アドラーは褒めることは否定しましたが、「勇気づけ」をしましょうと言っています。

 この「勇気づけ」の概念は、私たちが広義の意味でいう「褒める」ことと同じことをいっています。

 ですので、もし、「褒める否定論」を聞いて、迷っている方がいたら、まずは「感謝すること」を徹底的にしてみてください。

 「ありがとう」を口癖にするのです。

ありがとう」と感謝することは、相手の存在、働きを認めることになり、それは「承認欲求」を満たすことにつながります。

 どうしても「褒めるのが苦手」な人も、ひと言「いつもありがとう」ということはできるはずです。

 リーダーシップ研究の第一人者ジェームズ・クーゼスの著『ほめ上手のリーダーになれ!』(著 J・クーゼス&B・ポズナー 翔泳社)に、印象的な言葉があります。

褒め上手になる名言

「私たちは相手がどんな人かによって、
 その人を愛するのではありません。
 その人があなたをどう感じさせてくれるかによって、
 その人を愛するのです』

『ほめ上手のリーダーになれ!』(著 J・クーゼス&B・ポズナー翔泳社)

  褒めることで、あなたへの感じ方をよりよく変えることができます。もし、褒めることが難しければ、感謝を忘れないでください。感謝をする人は、好感度が高いものです。

 「いつもありがとう」

 褒め言葉、感謝の言葉が響き合う職場は、部下のモチベーションが高く、チームの士気が高くなります。

 (文:松山淳)