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マインドフルネス認知療法の8週間プログラム

コラム135マインドフルネス認知療法(MBCT)の8週間プログラム

 マインドフルネス認知療法(Mindfulness-based cognitive therapy:MBCT)は、「うつ病再発防止」を目的にイギリスの心理学者たちが開発した心理療法プログラムである。アメリカの心理学者ジョン・カバットジンが開発したMBSR(Mindfulness-based stress reduction:マインドフルネスストレス低減法)の考え方を取り入れている。マインドフルネス瞑想を軸とし、8週間のプログラムで構成されている。

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)を参考文献として、セッション1からセッション8までのプログラム内容について基本の部分を解説していく。

まっつん
まっつん

 コロナウイルスで大変な時です。本コラムの「転載・引用」に許可はいりません。お役に立ちそうであれば、どうぞ自由に使ってください。みんなで力をあわせて、乗り越えていきましょう!

セッション1:「思考の自動操縦」に気づく

SESSION1 テーマ

 マインドフルネスは、自動操縦状態に入っていると気づき、自動操縦状態から抜け出して瞬間瞬間に気付くようになるための最もよい方法を学びたい、と思った時に始まる。意図的に身体のさまざまな部分に注意を向けるようにする練習は、この方法がいかに単純で、そしてむずかしいことであるかということを教えてくれる。

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)p80

 セッション1での大きなテーマは、「思考の自動操縦に気づくこと」です。私たちは、何かをしているのに、今していることから意識がそれて、自動的に、頭のなかで別のことを考えてしまいます。

 車の運転してる時、よく「思考の自動操縦」状態になりますね。

 高速道路を運転している時など、意識が「頭のなかで考えていること」に奪われて、自分が運転をしていることを忘れているかのような状態になります。ふと「運転している自分」に意識が戻ると、目の前の車を見ていなかったような感覚になり、ちょっと怖くなります。

思考の自動操縦のスイッチを切る

 「考えごと」(思考の自動操縦)による「前方不注意」です。前方不注意は、大きな事故の原因です。ですので、「考えごと」(思考の自動操縦)より「運転していること」(今、自分がしているコト)に意識を集中させることが大切です。

 「思考の自動操縦」があるために、人は苦悩することになります。

 よい思い出や未来の嬉しい出来事にひたるポジティブな「思考の自動操縦」ならいいですが、ネガティブなものになると、やっかいです。なぜなら、過去の嫌な出来事を後悔し、未来のまだ起きていないことで強い不安感を覚え、ストレスにさらされ続けるからです。

まっつん
まっつん

 思考が自動操縦状態になり、同じことを何度も何度も考えてしまうことを「反すう」と呼びます。ネガティブな「反すう」が起きると、気分が沈んだりイライラしたりして、感情が不安定になりがちです。そんな日が多くなれば、夜、眠れなくなったり、朝、早く目が覚めてしまったり、何らかのうつ症状が出てきやすくなります。

 ネガティブな「思考の自動操縦」状態になった時に、そのスイッチを自分で切れるようになれば、感情が不安定になる確率を下げることができます。スイッチを自分で切るための第1歩が、「思考の自動操縦」がどのようなものかを知り、それが「メンタル不調を導く犯人になる」と理解することです。そのことを通して、自分の「思考、感情、身体感覚」への「気づき」の感度が高まっていきます。

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)に、こう書かれてあります。

 瞬間瞬間の思考、感情、身体感覚に気づくようになることによって、自分自身により多くの自由や選択の可能性を与えることができます。以前に問題を引き起こしたものと同じ古い「心の溝」にはまり込む必要はないのです。

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)p80

 セッション1では、「瞬間瞬間の思考、感情、身体感覚に気づくようになる」ために、思考の自動操縦を体感してもらう「レーズンエクササイズ」や「ボディスキャン瞑想」に取り組んでもらいます。 

レーズンエクササイズ

レーズンのイメージ画像

「レーズン・エクササイズ」では、ひと粒のレーズンをあたかも初めて見た時のような感覚で、まず観察し、匂いをかぎ、その後、口に入れ、ゆっくりと味わいます。このプロセスをひとつひとつステップを踏んで、区切りながら行っていきます。

 レーズンを改めて、マジマジと眺めて見ると、いくつかの色、光沢、表面にはデコボコがあることを知ります。「レーズンって、こんな形してたのか」「レーズンってこんな味だっけ」と、新鮮な発見があります。私たちは、食べることに関しても、日頃、自動操縦になっています。テレビを見ながら、スマホをいじりながら、食べ物を口に入れ、噛んで、飲み込み、「味わう」ことをしていません。

 小さな食べ物(レーズン)に、意識的に注意を向けることで、日頃、いかにいろいろなことが「自動操縦」で行っているのかを体感します。

ボディスキャン瞑想

「レーズン・エクササイズ」では、注意を向ける対象が「レーズン」でしたが、今度は、自分自身の「身体」です。体をゆっくりと「スキャン」するような心理作業をするので「ボディスキャン瞑想」といいます。

 インストラクターの指示に従い、体の各部位に意識を向けていきます。足から始まり、膝、太もも、腰、お腹などと、上へ上へと意識を移していきます。意識を身体に向け続けられればいいのですが、多くのケースで、「これは何をしているんだ」「どんな効果があるんだ」「うまくいかないな」などと頭の中で「おしゃべり」が始まってしまいます。思考の自動操が始まり、意識が思考に奪われます。

まっつん
まっつん

意識が「頭の中にそれた」「考えごとをしていた」と気づいたら、否定も肯定もせず、穏やかに身体に意識を戻します。意識が身体からそれては戻し、またそれては戻します。この作業を繰り返すいくことで、「思考の自動操縦」が確かに存在すること、それがどのような状態にあるかを理解します。 

ホームワーク

 プログラムへの参加者は、セミナー終了後、家に帰ってから行う「宿題」(ホームワーク)を与えれます。宿題は、毎週、違うものです。瞑想をしたりボディスキャンをしたりします。「宿題をやったか、やらなかったか」「やったならどう感じたか」などを記録用紙に記入し、1週間後のセミナーに備えます。マインドフルネス認知療法では、ホームワークを重視します。最初の個人面接で「ホームワークができなければ、プログラムには参加しない方がよい」と言われるほどです。


セッション2:思考と感情のつながりに気づく

SESSION2 テーマ

 身体に注意を向け続けると、心のざわめきがより明確になり、それがどのように毎日の出来事に対する反応を決定しているのかがわかりはじめる。

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)p80

 セッション2では、3つの大きな柱があります。①「ボディスキャン」、②「思考と感情」、③「うれしい出来事日誌」です。これらの体験を通して、うつ病で苦しんできた参加者の感情的・思考的な問題に対処できるように導いていきます。

①ボディスキャン瞑想

 参加者たちは、セッション1で実践した「ボディスキャン瞑想」が、ホームワークになっていました。改めて、クラスでもボディスキャンを実践し、ホームワークの体験と合わせて「ふりかえり」をします。

 瞑想のポイントは、頭の中で浮かんでは消える「思考」(雑念)を前提条件として、それを受け流すことです。前提条件にするとは、「それはあって当たり前」と受け入れている状態です。

まっつん
まっつん

 雑念をゼロとする無念無想を理想として美化すると、思考(雑念)のある状態を評価し、「うまくいっていない」と否定しがちです。否定すると感情が乱れます。感情が乱れると、余計に「考えごと」をしてしまいます。

 ですので、雑念のある自分に気づいたら、「思考(雑念)はあって当たり前」と考え、静かに穏やかに身体感覚や呼吸に意識を戻すのです。

思考のスイッチをいかに切るかということではなく、さまざまな思考とかかわる方法をどのくらい変えらるかなのである。つまり、思考の流れや心の中の出来事に見失うことなく、ただ淡々と、それらをありのままにながめる、ということである。したがって著者らは、心がさまよったときには心がさまようことを認め、心がどこに向かったのかに注意を向け、それから穏やかに呼吸や身体に注意を戻しましょう、と教示する。

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)p96

②思考と感情のエクササイズ

 インスタラクターは、参加者に目を閉じてもらい、次の情景を想像してもらいます。これを今、読んでいるあなたも、どう考え、どう感じるか、想像してみてください。

 あなたは今通りを歩いています。そして通りの向こう側には、あなたの知り合いが見えます。あなたは笑って手を振ります。その人は全然気付かないようで歩いて去っていきます。

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)p104

いかがですか…どう考え、どう感じましたか。

Aさん
Aさん

なんで無視するんだ(思考)、ムカつくな(感情)

Aさん
Aさん

通りの向こうだし、ただ気づかなかっただけかな(思考)、無理もない(感情)

 上のAさんとBさんでは、同じ出来事なのに、反応に違いがあります。ある出来事が起きた時に、人はそれを解釈します。「解釈」とは「思考」です。その「思考」によって「感情」が決まってきます。「気づかないで去っていく」ことを「無視された」と解釈するか、「ただ気づかなかっただけ」と考えるのでは、抱く感情がまったく違ってくるのです。

 このエクササイズを通して、いかに「思考」と「感情」がつながっているかを理解してもらいます。

学び

感情は状況に解釈を加えた結果である。

③うれしい出来事日誌

 「②思考と感情のエクササイズ」での教訓のひとつは、「いかに、私たちが日々の出来事を評価し解釈しては、快や不快の感情を抱いているか」に気づくことです。でも、思考と感情のつながりに、私たちは無自覚で、ほぼ自動的に無意識の内にそうしてしまっています。

まっつん
まっつん

その人にはその人ならではの、それまでの人生で築いてきた「思考パターン」「心の習慣」があり、その「思考パターン」「心の習慣」に従って自動的に考えが展開し、感情がわき起こるのです。無意識のまま自動的では、それを扱うことができません。しかし、意識できれば、それを扱うことが可能となります。

 ある出来事があって、それに対して「思考」と「感情」がわいたら、「あっ、今、うれしいと感じたな」「今、嫌だと思った」などと、「思考」と「感情」のつながりに対して、より自覚的・意識的になろうとします。

 ホームワークとして「うれしい出来事日誌」という記入用紙が渡されます。次のクラスが開催されまでの間に、どんな出来事があり、どう考え(思考)、どう感じたか(感情)を用紙に記録することになります。


セッション3:呼吸に気づき「反すう」を手放す

瞑想する人のイメージ画像
SESSION3 テーマ

 いかに忙しく心がさまようのかに気づきながら、意図的に呼吸へ気づきを向けることを学ぶことで、より集中してい落ちつけるようになる。

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)p136

 セッションのキーワードは「呼吸」であり、「座って行う瞑想」「歩く瞑想」「ストレッチしながらの瞑想」などに取り組みます。座ったり歩いたり体を動かしたり、様々な瞑想がありますが、ポイントは「呼吸」に意識を向け続けることです。

 『マインドフルネス認知療法』(p121-122)に、「呼吸の意義」について5つの観点が述べられています。それを参考に、私の考えを交えて、まとめてみます。

SANGOへようこそ!
  1. 呼吸は「今」されているものであるため、呼吸を意識すると「過去」と「未来」を手放せる。
  2. 呼吸は必ず存在しているので、思考がさまよった時に「戻るべき場所」として活用できる。
  3. 呼吸を意識し続けることで、否定的な「反すう」にブレーキをかけられる。
  4. 呼吸は自然とされるものなので、特別の努力を必要とせず、目標志向を手放せる。
  5. 呼吸と思考(雑念)を行ったり来たりすることで、「反すう」から離れるタイミングを体感できる

メンタル不調を引き起こす「反すう」

 うつ病を誘発する原因のひとつが、過去や未来へと思考がさまよいネガティブなことを繰り返し考えてしまう思考パターンです。これ「反すう」と呼びます。過去の不快な出来事やこれから未来に起きる不安なことを、頭の中で、何度も何度も考えることで、気持ちは乱れ気分が沈むはめになります。

まっつん
まっつん

 ですので、否定的な「反すう」が起きた時に、意識的に自分でスイッチを切れることできれば、メンタル不調に陥る「思考パターン」「心の習慣」を改善することができます。そのためには「反すう」が、「どのようなものなのか」「どのように起きているのか」を、自分の頭の中をのぞくような感覚で、体感してみるにつきます。

 そこで瞑想の登場です。瞑想は「反すう」を体感するのにうってつけのメソッドです。

 瞑想では、自分の「呼吸」に意識を向け続けます。でも、意識は呼吸からそれて、何かを考え出してしまいます。いわゆる「雑念」がわく状態ですね。初心者であれば、ほぼ間違いなく「雑念」が出てきます。

 「雑念」とは「思考」であり「反すう」の材料です。この材料が、過去にあった嫌なことであった場合、その時の場面を思い出し、「あの時、もっとこうすればよかった」「何でうつ病になんかなってしまったんだ」などと否定的な思考がエスカレートしていきます。

 でも、瞑想では、「あっ、そうだ呼吸に意識を向けるんだった」と、気づく瞬間が必ず訪れます。この「雑念に気づく瞬間」が、自分で自分の「反すう」にブレーキかけた瞬間です。

「呼吸」➡︎「雑念」➡︎「気づく」(ブレーキ)➡︎「呼吸」➡︎

 上の図のように、瞑想をしていると「呼吸」「雑念」「気づく」の3つが、何度もループします。このループを意識的に行うので、瞑想をやればやるほど、「雑念」(反すう)から、上手に抜け出せるようになります。その結果として、うつ病に陥った「思考パターン」「心の習慣」を改善することができ、メンタル不調に陥る確率を下げることができるわけです。

雑念は友だち

 瞑想をしていると、どうしても「雑念」が出てきて、「邪魔されるな、うざい」「雑念がなければうまくいくのに」「こんなの無理」と、思考(雑念)にとらわれ、感情が乱れることがあります。これは初心者の陥る罠ですね。

 瞑想は確かに雑念のない「無」の状態を理想とします。でも、「無」を理想とし、「無になろう、無になろう」と目標志向が強くなると、それが「執着」となり、自我の働きを活発化させ、瞑想の上達をさまたげてしまいます。

まっつん
まっつん

 5年、10年と瞑想を続けた人でも、雑念は出てくるのです。初心者と何が違うかというと、雑念の「取り扱い方」「いなし方」「受け流し方」が違うのです。雑念が出てきても「あ〜また出てきたね、こんにちは」といった感じで、雑念の存在を否定しないのです。初心者は「何で、また考えごとしてるんだ、まったく、ダメだな」と、雑念を否定し、喧嘩してしまいがちです。

 つまり、瞑想の上達者は、雑念を肯定しますが、初心者は否定してしまいます。

 雑念はあってよいのです。雑念は「喧嘩相手」ではなく「友だち」なのです。

 そこで、「瞑想とは無になること」ではなく、「雑念はあってもよい」とし、次のように定義してしまうのです。

瞑想とは

瞑想とは、自分の意識(注意)を、呼吸と雑念の間で行ったり来たさせるもの。

 うつ病再発予防のマインドフルネス認知療法ですので、大切なことは、自分の「反すう」に気づき、「思考パターン」「心の習慣」を変えることです。「無念無想」にならなくても、それは可能です。

 この練習の最も重要な特徴は、注意がさまよわないようにすることではなく、自分の注意がどのように動くかということに親しむことである。……(中略)

「もし注意が100回さまよったら、それを100回ただ戻すのです」

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)p125

セッション4:現在にとどまる

SESSION4 テーマ

 ある出来事にしがみつこうとする、もしくは避けよう、逃げようとすると、心はばらばらになってしまう。マインドフルネスは、ものごとを見る別の視点となる場所を与えることによって、現在にとどまる方法を提示する。すなわち、より広い見方をすることと、経験に対して別の方法でかかわることを手助けする。

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)p163

 「第4セッションの目的は、心地よいことを追い求め、嫌な出来事を避けてしまう傾向に対して「現在にとどまる」方法を探求すること」(p157)です。細かいプログラムは異なりますが、セッション3と同じようにセッション4でも瞑想にも取り組みます。

 この「現在にとどまる」が、「ものごとを見る別の視点となる場所を与えること」につながります。

 人は、何かをしながら「考えごと」をしてしまいます。「現在にとどまっていない」状態です。そして、その「考えごと」が、あたかも「現在の真実」であるかのように思い込んでしまいます。例えば、頭の中にある「自分はダメな人間だ」という「ただの思考」を真実と認識して、ダメージを受けてしまうのです。

 でも、思考はただの思考です。それは現実ではないですし、100%の真実ではありません。

 であれば、ネガティブな思考であっても、あることを認めて、それはそれとして、あるがままにしておき、今、自分のしていることに集中したほうが、人生では、よい結果がもたらされるはずです。考えごとをしながら、何かをするのは、今していることの質を悪くするものです。

まっつん
まっつん

 つまり、「ものごとを見る別の視点となる場所」とは「現在」のことであり、「今、ここ、この瞬間」に意識を向けて、今していることに集中することが「現在のとどまる」ことになります。瞑想であれば「呼吸」に、ボディスキャンであれば「身体感覚」に、皿洗いしているのであれば「皿洗い」に、パワーポイントで企画書を作成しているのであれば「パワーポイント」に、意識を向け続けることが「現在にとどまる」ことです。

 日々の生活でも、「頭の中にとどまる」のではなく、今、自分のしていること=「現在にとどまる」ようになれば、ネガティブな「反すう」を減らすことができます。

3分間空間呼吸法

 「3分間空間呼吸法」は、セッション3で紹介されホームワークにもなっています。セッション4でも、ホームワークのふりかえりを兼ねて「3分間空間呼吸法」が行われます。

 瞑想が30分〜40分されるのに対して、「3分間空間呼吸法」は、文字通り3分です。ホームワークでは、これを決められた時間に1日3回行います。また、ストレスを感じた時にも行うように、すすめられます。これには3つのステップがあります。

3分間空間呼吸法の3ステップ

Step1:「考えごと」から抜け出すために「私はどこにいるのか」「何がおきているのか」と尋ねる
⬇️
Step2:呼吸に意識を向ける。
⬇️
Step3:呼吸に向けた意識を全身へと広げていく。

 「3分間空間呼吸法」は、日常的に行う「現在にとどまる」ためのエクササイズです。それは、今この瞬間に、価値判断することなく注意を向ける「マインドフルネス」の心理状態を体感することでもあるのです。


セッション5:そのままでいる

SESSION5 テーマ

 異なった関係づけは、経験を評価(判断)したり、異なったものにしようとすることなく、あるがままに「させておく」感覚を必要とする。このような受動的態度は、自己を扱うこと、変化する必要があるものをより明確にすること、において主要な位置を占める。」

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)p189

 セッション5では、ネガティブな思考・感情・身体感覚を「受容すること・させておくこと・そのままでいること」に焦点があてられます。これが「認知療法」に「マインドフルネス」を融合させているポイントです。

 「認知療法」では、ネガティブなものは別の考え方へ置きかえようとします。「マインドフルネス認知療法」では、「マインドフルネス」のエッセンスを重視し、「受容すること・させておくこと・そのままでいること」を優先します。

 例えば、うつ病の代表的な症状のひとつに「気分の落ち込み」「体のひどいだるさ」があります。気分も体は重くなり、何もする気になりません。そうなってしまった自分を「なんでこんなことになってしまったんだ」「なんてダメな私なんだと」と、繰り返し繰り返し否定しは責めてしまいます。

 これは自分を否定し拒絶しているネガティブな「反すう」状態です。

まっつん
まっつん

 否定し拒絶し続けることでは、状況はよくなりません。なぜなら、その思考パターンでうつ病へと導かれてしまったからです。認知療法では、自分を責めるネガティブな思考を、別の考え方へと置き換え、思考の「変容」を促します。マインドフルネス認知療法では、瞑想をしたりボディスキャンを通して、ネガティブな心理を「受容」しようとします。

 「変容」より「受容」です。

 受容について、『マインドフルネス認知療法』では、こう定義されています。

受容とは、感情を調整もしくは変化させようとする前に、させておく、またはそのままでいるという、感情への積極的な反応を意味している。

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)p174

 否定や拒絶が「感情への積極的な反応」であれば、受容すること・させておくこと・そのままでいることも、「感情への積極的な反応」といえます。

 なぜなら意識的に、「落ち込み」「体のだるさ」などを、否定せず拒絶せず回避せず、そのまま受け入れ、静かに見つめるような感覚で、正面から向き合おうとするからです。

 正面から向き合うと、それまで自分で自分を痛めつけてきた思考パターンが、どのようなものかが理解できます。すると、感情や身体感覚に微妙な変化を感じとれるようになります。

 自分の体を支配し、巨大な重い石のように決して自分の力では動かすことができないと思っていた「沈んだ気分」や「ひどいだるさ」が、実は、動いていて、流れている…つまり、不動の「巨大な石」というより「川の流れ」のような、移りゆくものとしての「よくなっていく可能性」を感じとることができるのです。

 『マインドフルネス認知療法』には、こう書かれてあります。

 望まない経験に対し、受容すること・させておくこと・そのままでいることといった関係づけを意図的に行うことは、多くの場面で効果的にはたらく。まず、より意識的に注意を向けることで、注意が過去の思考や気分に自動的に「ハイジャック」される傾向を弱めることができる。それによって、習慣的な反応の連鎖を最初の段階で切ることができるのである。

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)p175

 セッション5のクラスでは、上にある「受容すること、させておくこと・そのままでいること」を体感できる瞑想に取り組みます。意図的に内なるネガティブな存在に注意を向け、ふれようとするのです。これは瞑想の応用編です。

困難や問題に意図的に注意を向ける瞑想(応用編)

 瞑想の基本は、呼吸に注意を向け、意識がそれたら、それに気づき、穏やかに意識を呼吸に戻すことでした。頭の中で「私はダメだ」「価値がない」「なんであんな奴がいるんだ」と思考がめぐり出したら、「あっ、また考えていた、呼吸だ呼吸」と気づいて、呼吸に戻るのです。

瞑想の基本

「呼吸」➡︎「雑念」➡︎「気づく」➡︎「呼吸」➡︎

 応用編では、虚しさ、悲しみ、怒り、憎しみ、嫉妬、後悔など、何かネガティブな思考・感情が湧いてきてたら、それをそのままにして、体のどこに、そのネガティブなものがあるかを探り、確認し、意図的に自分の意志で注意を向け続けます。

まっつん
まっつん

 「怒り」を例にとれば、怒りがわいた時に、それを感じる「体の場所」は人それぞれです。ある人は「頭」で、ある人は「お腹」で、ある人は「背中」です。自分なりの場所を探り出し、「大丈夫、何があっても大丈夫だ、それを感じよう」(p178)と心の中でつぶやき、怒りを感じる場所に意識を向け続けます。

 そして、「息を吐くたびに、”ゆるんでいく”、”開いていく”、と言います」(p178)。その結果、違和感が消えたり、軽減したり、ゆるむような感覚があり、納得できたら、また、瞑想の基本に戻り、呼吸に意識を向けていきます。

瞑想(応用編)

「呼吸1」➡︎「ネガティブ」➡︎「体の場所」➡︎「呼吸2(”ゆるんでいく”、”開いていく”)」➡︎「納得感」➡︎「呼吸1」

 人によっては、恐れが先立って、ネガティブな「感情・思考・身体感覚」に正面から向き合い、ふれようとするのが難しいケースがあります。もちろん、それでもOKです。なぜなら、基本の瞑想の中で、自然とネガティブなものにふれているからです。

 ですので、困難や問題に意図的に注意を向ける瞑想(応用編)は、無理のない範囲で行いましょう。


セッション6:思考は事実ではない

SESSION6 テーマ

 ネガティブな気分やそれにともなう思考は、今までと違うやり方で体験とかかわるのをむずかしくする。思考はたんに思考に過ぎないのだと気づくことは、解放的なことである。

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)p212

 セッション6の大きなテーマは、「思考はただの思考であり、事実(真実)ではない」と気づくことです。頭の中で発生する「思考」は、人の感情・身体に大きな影響を与え、それがネガティブなものであれば、心身の健やかさを奪うことになります。

 例えば、自分に落ち度はないのに、上司(課長)の勘違いでひどく叱られ、言い返せなかったA君(20代・男性)がいたとします。A君は、叱られたことに腹を立て、帰りの電車でも家に帰ってお風呂に入っている時も、夕飯を食べている時も、ベットの中でも、ずっと叱られたことを考え続けています。

 頭の中で上司の悪口を言ったり、叱られた時に言い返したかった「僕は悪くありませんよ。それは課長の勘違いじゃないですか」という言葉を何度も再現し、まさにネガティブな「反すう」が、止まらない状態です。イライラし気分は最悪です。ご飯も美味しくありません。というか、頭の中で発生している出来事に意識をハイジャックされて、何を食べているのかわからない状態でした。

 A君の「思考」に対する認識は次の通りになっています。

頭の中で起きていること(思考)=実際の出来事(事実)

認知療法は「思考の力」を活用する

 こんな時、認知療法であれば、自分の思考を書き出して、その内容を落ち着いて論理的・合理的に検討しようとします。上司の勘違いなのです。A君は悪くありません。それは当事者のA君が一番わかっています。

 であれば、腹を立て続け、貴重なプライベートの時間を台無しにするのは損です。損するのではなく得する思考パターンはどのようなものでしょう。「損する」から「得する」考え方に変えていくのが認知療法の基本です。

 認知療法は思考の変容に焦点を当てますが、「思考には影響力がある」ことが前提条件になっています。思考には力があるので、よい思考に変えれば、心身もよい状態になるはずです。実際に「認知療法」はうつ病に対して、効果をあげている療法です。

マインドフルネスは「思考はただの思考」と考える

 マインドフルネスでは、思考そのものに影響されない心身をつくりあげようします。そのために「思考はただの思考に過ぎない」と、冷めた目で思考をとらえようとします。

まっつん
まっつん

 A君のケースでは、会社で上司に叱られた時のことを、家でも自分で再現し続けている状態です。家には上司がいないのに、上司が目の前にいる心理状態を自分でつくってしまっています。その結果、頭の中での出来事なのに、それはただの思考なのに、あたかも「今、実際に上司に叱られている」かのように、A君は感じてしまっています。

 これではA君は、「加害者」であると同時に「被害者」です。

 であれば、「思考はただの思考に過ぎない」と、思考そのものの認識を根底から変えて、思考にそれほど影響されない心身になれたら、家にいる時間を、イライラからリラックスできる時間に変えることができます。

頭の中で起きていること(思考)=実際の出来事ではない(非事実)

 上の等式のように、思考は事実ではないと認識できたら、認知療法でする「思考を検討し変容させる時間」も必要なくなります。

思考を待ち眺める瞑想

「思考はただの思考に過ぎない」と体感できるのが、やはり瞑想です。

 瞑想の基本は、呼吸と思考(雑念)の行ったり来たりでした。瞑想中に考えごと(思考)をしている自分に気づいたら、穏やかに呼吸に意識を戻します。セッション6では、意識的に思考が現れてくるのを待ち眺め消えていく様子を、体感しようとします。

 『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)には、「思考を待ち眺める瞑想」と書いていませんが、ここでは、わかりやすく、思考を待ち眺める瞑想」と呼びます。

まっつん
まっつん

 心の中に映画館のスクリーンをイメージしてください。そのスクリーンに、何かが映し出されます。それを、あなたの思考(雑念)とします。瞑想を始めたら、スクリーンに何が出てくるだろうと待ちます。この待つ姿勢を維持し、思考が現れてきたら、それを認識します。認識はしますが、巻き込まれません。

 あなたは、映画館の観客席に座っていて、離れたところからスクリーンを眺めているような感じです。実際の映画がそうであるように、現れてきた思考(雑念)は、どんどん変化していくでしょう。スクリーンが「空」(から)になったかと思ったら、次の瞬間には、他の何かが出てきています。でも、その出てきた思考も、やがて必ず、他のものにとってかわられます。

 思考は、いずれ必ず、滅びるものなのです。

思考とは、とても「脆(もろ)く」「儚(はかな)い」ものです。

 ですが、マインドフルネスや心理学の知識がないと、人はA君のように、何度も思考にしがみつき、反すうし、その結果、脆く儚い思考を自分で強固なものにしてしまいます。過去や未来を現在にし、終わったことや先のことを、あたかも今、起きているかのように感じて、感情を乱しストレスを受け続けてしまうのです。

 でも、瞑想を通して、思考の「脆さ」「儚さ」を何度も体感し、それが腹落ちすると、ネガティブ思考がループし出しも、自分でブレーキをかけられます。

 「へ〜私って、あの事をこんなネガティブに考えるんだ」「なるほどね、ここで私の“ネガティブちゃん”がきましたか。こんにちは」などと、穏やかで軽い感覚で「ネガティブ思考」をとらえられ、それほど強く「思考」に影響されないようになります。

ネガティブな思考に名前をつける

 「私の“ネガティブちゃん”がきましたか。」と書きましたが、“ネガティブちゃん”のように、自分のネガティブ思考に名前を付けるのは、「思考はただの思考」と腹落ちさせるための、ちょっとしたコツです。ユーモアを交えて、ネガティブ思考を笑い飛ばせるようなネーミングがおすすめです。 


セッション7:自分を大切にする

SESSION7 テーマ

 うつの恐れがあるときにできることがいくつかある。まず呼吸空間法をしてから、とるべき行動があれば、どの行動をとるかを決める。人にはそれぞれ再発を警告する前兆があるのだが、それらの前兆にどう反応するのが一番よいのかについての計画を参加者同士で助け合ってたてることができる。

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)p233

 セッション7では、うつ再発の予兆を明確にし、自分を大切にするための日々の行動計画を立てることが主眼になります。日常での行動計画を立て、それができたか、できなかったのを、チェックしていくのは、認知療法の基本です。

 次の2つの行動を分類し、リストを作成してみます。

行動のリスト

①気分を高揚させたりエネルギーや栄養を与えてくれるもの↗️(増やす)

②気分を落ち込ませたりエネルギーを消耗させるもの↘️(減らす)

 上のリストが出てきたら、①のポジティブな行動を増やし、②のネガティブな行動を減らすには、具体的にどうすればいいかを、考えます。

まっつん
まっつん

 例えば、仕事がうまくいっていなくて、会社に行くことそのものが「②気分を落ち込ませる行動」だったとします。であれば、できるだけ残業をしないようにして、会社にいる時間を減らします。そして「学生時代の仲のよい友達に会う」とか「好きな趣味に没頭する」とか、「①気分を高揚させてくれる行動」を意識的に増やしていくのです。

 以上のことは、自分を大切にすることであり、罪悪感をもつ必要はありません。

 自分を大切にするための行動計画を、クラスの参加者と話し合って決めていきます。他人と決めることのメリットは、それが「約束」になるからです。最後の「セッション8」の時に、「立てた計画を実践できたか否か」について報告することになります。ですので、計画を実行にうつすモチベーションになります。

リスト出しする時に役立つ問い

「今、自分を最も大切にするにはどうしたらよいのか。この瞬間自分にあげられる最高の贈り物は何か」
「この気分がどれくらい続くのかわからない。それが過ぎるまで、どうしたら自分を最も大切にすることができるだろうか」

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)p233


セッション8:これからに活かす

SESSION8 テーマ

 生活のなかでバランスを維持するには毎日のマインドフルネスの実践が役に立つ。実践は、自分が大切にすることになる前向きな理由と結びつけておくよことによって続けることができる。

『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)p254

 最後のセッション8では、プログラム全体をふりかえり、うつを再発させないための行動計画を立てます。セッション8まで来た人は、うつ病になった過去の「思考パターン」「心の習慣」とは、明らかに異なる「思考パターン」「心の習慣」があることを理解しています。

うつに負けない、いくつもの「新たな選択肢」「新たな武器」を手にしている状態です。

 でも、クラスが終わった後、それをひとりで維持できるかの不安があります。独り立ちの不安です。その不安に対処するために、今後のマインドセットや実際の行動について話し合い、決めていきます。

 プログラムで体験しホームワークで取り組んできた瞑想を日々、実践することは、その不安を取りのぞいてくれます。瞑想するたびに、8週間を通して、学んできたことが「思考」(雑念)として、よみがえるからです。

 脳に可塑性があります。可塑性とは、一度、ある状態になったものが、ある程度、維持されることの意味します。8週間の瞑想体験を通して腹落ちしたことは、脳が覚えていて、簡単には消え去るものではありません。

 日々、3分でも5分でも、瞑想をすれば、体が覚えていて味方になってくれます。


まとめ

 『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)を参考文献として、8週間プログラムの1部を紹介してきました。ここまでの内容は、あくまで、プログラムの1部に過ぎません。ですので、ご興味のある方は、『マインドフルネス認知療法』(北大路書房)を実際に手にとって読んでみてください。

 「マインドフルネス認知療法」については、コラム134「マインドフルネス認知療法(MBCT)とは」でも説明していますので、参考になさってください。

 この本がきっかけで「マインドフルネス認知療法」が広く知られ、「マインドフルネス」そのもの考え方も世界に広まったといわれています。うつ病は世界中の人を悩ます問題として以前と存在しています。薬物療法を基本としつつも、「マインドフルネス」の考え方は、うつ病の問題を解決するための「新たな光」として注目され、進化し続けています。

 瞑想の実践を通して、健やかな日々を送りましょう。

(文:松山 淳)


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