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受動的攻撃性(パッシブ・アグレッシブ)とは?

反抗の心理-受動的攻撃性とは-

「受動的攻撃性」とは、本人が感じている「怒り」「不平不満」などに代表される否定的な感情を相手にぶつけず、消極的かつ否定的な態度・行動を取ることで、相手を攻撃しようとする心理。

 「受動的攻撃性」は、英語でパッシブ・アグレッシブ(passive aggressive)と言います。「パッシブ」(passive)は「受動的」で、「アグレッシブ」は「攻撃的」です。攻撃的ではない「受け身」の状態だけど、相手を攻撃をしている心理状態です。

まっつん
まっつん

 受動的攻撃性を伴った行動を「受動的攻撃行動」(パッシブ・アグレッシブ・ビヘイビア:passive aggressive behavior)と呼びます。「受動的攻撃行動」は、意識して、あるいは無意識のうちに取られる行動です。

 「受動的攻撃行動」の代表例は、「緘黙(かんもく)/無視」「サボタージュ」「抑うつ状態」です。

受動的攻撃行動の代表例
  1. 「緘黙/無視」「緘黙」とは黙り喋らないこと。黙り、相手を無視することで攻撃する
  2. 「サボタージュ」仕事を意図的に遅らせたり、怠けたりして攻撃する
  3. 「抑うつ状態」気分的に落ち込んだ状態になることで攻撃する

 皇后雅子様の主治医として有名な精神科医大野裕氏は、「受動的攻撃性」に関して、日経新聞にこう書いていました。

 「もともとは米国の軍隊で使われた言葉で、腹立たしさや怒りを相手にぶつけるのではなく、間接的に表現する態度を指す。
 軍隊では、上司から命令されると、イヤでも従わなくてはならない。仕方がないので仕事をわざと遅らせたり真剣に取り組まなかったりして、反抗の気持ちを間接的に表わそうとする。本人が意識していることもあるし、意識しないままの場合もある」

出典:日経新聞(2003.7/15)「こころの健康学」

「受動的攻撃性」は、心を守る「防衛機制」。

 「受動的攻撃性」という言葉は、アカデミックな専門用語で、聞き慣れないかもしれませんが、自分自身の行動に当てはめてみれば、思い当たることが、ひとつやふたつはあるでしょう。

まっつん
まっつん

 例えば子どもの頃、悪いことをして親に怒鳴られた時、すねて親と口をきかなかった経験はないでしょうか。作ってくれたご飯を食べなかったり、自分の部屋に引きこもって出てこなかったり…。「自分のことを何もわかってくれない、それなら…」と親を困らせようとして、とった否定的・消極的行動があれば、それが「受動的攻撃行動」(パッシブ・アグレッシブ)です。

 怒鳴られれば誰だって嫌なものですね。その時感じた怒りを親にぶつけられればいいのですが、それができないと、心は自分を守ろうとして自然と働き出します。現実との折り合いをつけるために、心が自分を守ろうとする心の仕組みを「防衛機制」と言います。

「防衛機制」とは。

フロイトの自画像写真
フロイト

 「防衛機制」は、精神分析学の開祖ジークムント・フロイトが提唱した考え方です。「機制」とは、「仕組み」「メカニズム」のことです。「防衛機制」には、「抑圧」「否認」「合理化」「投影」「反動形成」「退行」「逃避」など、その他まだまだあるのですが、「受動的攻撃性」とは、この「防衛機制」がいくつか組み合わさった結果、発揮されるものだと考えられます。

 特に「退行」「逃避」です。 

「退行」と「逃避」
「退行」
 子どもの「赤ちゃん返り」が代表例。思い通りにならない現実にぶつかった時に、精神的に未熟な状態に逆戻りすること。大人であれば、大人らしくない態度・行動をとること。
「逃避」
 文字通り現実から「逃げる」こと。辛い現実から逃げるために「病気」になるのも「逃避」のひとつ。登校拒否児が朝、腹痛を発症するのも「逃避」と考えられる。

 大人が働く職場でも「受動的攻撃行動」は、あちこちで起きています。特に、上司と部下との関係では、部下が受動的攻撃性を発揮して、上司を困らせようとすることは珍しいことではありません。

 上司を無視したり、仕事をわざと遅らせたり、抑うつ状態から出社拒否になったり…。そうした態度・行動が「怒り」「不平不満」を表現することが原因であれば、これは大人らしくない行動「退行」であり、それで病気になれば「逃避」と考えることができます。


事例:受動攻撃行動を取っていたAさん

 私の知人に、某企業で営業をしていたAさんがいます。当時、20代後半でした。Aさんのほうが私より年上ですが、年齢も近く、年に数回ほど会って飲む人でした。彼はある地方都市の支店に勤務していました。上司(Z課長)と“そり”があわず、会う度に愚痴をもらしていました。

Aさん
Aさん

「いや〜もう駄目だよ!あの人とは生理的にあわないよ」
「あの課長、異動してくんないかな!」
「俺が転勤になればいいんだ!顔見るのも無理!」

 そうボヤくAさんのとっていた行動は、今思い起こすと、典型的な「受動的攻撃行動」でした。Z課長は、とてもロジカルで弁の立つタイプだと言います。議論しても必ず負かされてしまいます。それが理由で、Aさんは段々とZ課長と距離を取るようになり、自分の怒りや不平不満を直接、表現できないようになっていったのです。

 その結果、職場でAさんは、Z課長とは仕事に必要な最低限の話しかしなくなり、デスクはすぐそばなのに、何日も口をきかないこともありました。飲みに誘われても、全て断り、Z課長の存在をシャットアウトしようとしていたのです。

 上司と部下のギスギスした関係の典型例です。

 それから時は流れ、Aさんは転勤となります。Z課長の顔を見なくてよくなりました。転勤後、会って居酒屋で話を聞くと、意外な本音が出てきました。

Aさん
Aさん

「本当は、俺は、あの人を尊敬してたんだよ!でも、どうしても合わなくて、なんか感情的になってたのかな。今も好きかと言われたら、嫌いだって答えるけど、尊敬してる気持ちは変わらないよ!仕事、めちゃめちゃできる人だったしね、俺が未熟だったのかな…」

 人の感情とは複雑なものですね。Aさんの話しを総合的に聞くと、Z課長というのは、Aさんの真逆の性格タイプの人です。

劣等感が、人を嫌いにさせる。

 Z課長はロジカルで弁が立ち、外向的な性格でした。一方、Aさんは、人に優しく情熱を心のエネルギーする感情的で内向的なタイプの人間でした。ユング心理学でいえば、AさんにとってZ課長は「影(シャドー)」だったのです。

 「影(シャドー)」とは、「その人の生きられなかった反面」です。Aさんはその性格タイプから、Z課長のように生きられませんでした。「影(シャドー)」は「劣等感」と深く関わりますので、AさんはZ課長を見る度に、自分の中にある「劣等感」を刺激されていたと考えられます。

 「嫌い」になるのも無理はありません。劣等感とは、「自分の見たくない自分」から生まれます。自分の見たくないものを見せられるのですから、強い嫌悪感が湧いてきて、取り乱し、うまく自分を表現できなくなります。

まっつん
まっつん

 結果、「怒り」「不平不満」を心の内に溜め込んで、「受動攻撃行動」を取っていたのでしょう。「取っていた」というより、心の健康を守るために「防衛機制」が働いて、「取らざるを得なかった」のだと言えます。

 劣等感は、相手に対する「あこがれ」も生み出す心理ですので、それが「尊敬」という感情にもつながっていたと考えられます。

 「受動攻撃行動」は、チームの生産性を間違いなく落とします。無視やわざと仕事を遅らせるような行動が組織にはびこったら、ギスギスした職場の出来上がりです。

 では、どうしたらいいのでしょうか。Aさんは、どうして欲しかったのでしょうか。


「受動的攻撃性」を消す王道は、本音の話しを聴くこと。

まっつん
まっつん

 Aさん、今はZ課長のことを、尊敬してるって言ってますけど、じゃあ、当時、Z課長にどう接して欲しかったんですか?どうすれば、そんな変な反抗をせずにすんだのでしょう?

Aさん
Aさん

「今、振り返ってみると、Z課長とは、まったく本音で話すことができなかった。それが辛かったな。ロジカルで早口で、すぐ「こうだろ」って、決めつけるようなタイプの人でさ、話しを聴いてもらえないんだよ。だから俺も最初から話すのをあきらめちゃってるところもあったし、俺が未熟だったといえば、それまでだけど、結局、もうちょっと本音を聴いてもらっていたら、少し違ってたと思うよ。

 Aさんの話しから結論を先に言ってしまえば、あまりにシンプルですが、「聴く力」が、職場から「受動攻撃性」を減らす具体策です。

 組織で日々、発生する「受動的攻撃性」の課題を考えていくには2つの側面があります。

受動的攻撃行動の2側面
  1. 「受動的攻撃性」を発揮するパーソナリティ
    その人、本人の課題。「受動的攻撃性」に陥りやすい人間的資質をもっている。
  2. 受動的攻撃性を生み出す人や環境
    職場が自身の本音を話せない環境となっている。

「自己表現」に意識的に取り組めば解決可能。

 ❶については、本人の課題です。「受動的攻撃行動」を取りやすい人とそうでない人がいます。「受動的攻撃性」は、「不平不満」「怒り」を表現できないところが始まりですから、ネガティブな感情をその都度、表現できていれば問題行動にはつながりにくいと考えられます。

 内向的で相手の感情に配慮して、いつも「いい人」でいようと、自分の感情を押し殺してしまう人は「受動的攻撃行動」に走りがちです。ですが、これは本人のコミュニケーション上の課題として意識的に取り組んでいけば解決できることです。

 コーチングを受けたり、カウンセラーに自分のドロドロとしたネガティブな感情、怒り、不平不満などを隠すことなく思い切ってに話すことで、自己表現ができるようになっていきます。もちろん、時間はある程度、必要となるでしょう。

「聴く」ことを日頃から心がける。

 ❷の課題は、部下の「受動的攻撃行動」を作り出してしまっている上司や組織に言えることです。

 Z課長のように、早口ですぐに「決めつける」ような物言いをする人。相手が話しをしているのに、それにかぶせて話しをしてくる人。そんな、話す気を見事に奪う人が確かに存在します。

 1ヶ月に1度か2度、会うお客様であればいいですが、それが社内にいて毎日、繰り返されるとしたら、立場の弱い部下は、段々とAさんのように表面的な話ししかしなくなります。しなくなるというより、できなくなるのですね。結果、不平不満をいつも抱えている状態で働き、「受動的攻撃行動」へとつながっていくのです。

 これを部下の「人間的未熟さ」を理由に「最近の若い奴らは、ホント、メンタル弱いんだよ、あいつはダメだよ」と一蹴して、組織課題の俎上に載せないのは、それこそ現実を無視する「逃避」行動です。

「本音トーク」がチームの生産性を高める。

 グーグルが生産性の高い効果的なチームを研究しました。生産性の高いチーム共通するくつかの特性の中で、特にメンバーの「心理的安全性」(psychological-safety)が重要だという結論に至りました。「心理的安全性」とは、チームメンバーが、安心して意見を言える心理状態のことです。

グーグル「心理的安全性」を記述したサイトの画像
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/introduction/

 簡単に言ってしまえば、「本音トーク」のできるチームほど生産性の高いチームになり得るということです。

 この結果は、「受動的攻撃性」の観点からも説明が可能ですね。本音トークができれば、「怒り」「不平不満」も適度に解消され、メンバがー「受動的攻撃行動」を取らなくなる可能性が高くなります。反対に、本音トークができなければ、「受動的攻撃行動」が生まれチームは混乱します。

 「本音トーク」のできる組織になるために、「聴く力」は、ほんの些細な手法に過ぎません。ただ、「たかが聴く力、されど聴く力」で、「受動的攻撃性」を少なくするのに効果的な行動であることに間違いはありません。

 メンバーの聴く力を高めれば、悲しき「受動的攻撃行動」ではなく、互いを高め合うような喜ばしい「積極的恩恵行動」が職場に着実に増えていくでしょう。

 「たかが聴く力、されど聴く力」です。

(文:松山 淳 イラスト:なのなのな


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