非常識な若手社員に対処する考え方

第5章-4 非常識な新人を抱えてストレスがたまる

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まっつん

 実務教育出版社のご厚意で、拙著『上司という仕事のつとめ方』の一部を公開いたします!

第5章-4 非常識な新人を抱えてストレスがたまる

 入社三年目のH君は、自己啓発本が大好きです。「毎月五冊」とノルマを決めて読んでいます。夢は、MBAを取得し、起業して社長になることです。

 成功するための知識で、このH君にかなう人は職場にいません。仕事が終わると、異業種交流会や起業して成功するためのセミナーに積極的に参加しています。交流会に参加した翌日などは、もらった名刺を職場の皆に見せびらかし「これが僕の人脈です」と鼻をふくらましています。

成功者への道を自分で壊す「成功本好きの若者」!

 ところが、H君は、いまだに電話一本ろく対応できません。取引先へ打合せに行くときは、先輩社員が必ず同行しています。お客様をひどく怒らせた経験があったからです。

「だから御社はダメなんです」と、自慢の「成功法則」を披露してしまたっのです。部長が謝罪に行き、ことなきを得ましたが、「一人前になるまで、必ず誰か上司を同行させるように」と条件をつけられてしまいました。

 H君は、敬語がしっかりと使えません。挨拶ができません。人と目を見て話せません。いつでも相手を見下し、「自分は成功する」と言ってはばかりません。

非常識Hくん

「僕が、仕事ができないのは、上司の力の引き出し方がだめんだよ。コーチングが下手なんだよね。会社のビジョンも明確じゃないし、もっと大きな仕事を任せてもらえれば、潜在意識が動き出して絶対に成功するんだけどな。そうこの本に書いてあるんだ」

 おもむろにカバンから本を取り出し、目の前で電話が鳴っていても反応せず、自分が「なぜ、できないのか」を、隣に座り耳をとざす後輩に熱く語っています。

 「後輩ができたら変わるだろう」と思った上司たちの期待は、見事に裏切られ、H君は、成功への階段を今日もコツコツと自分で壊し続けています。


非常識な新人は上司にとってストレスの原因である

 すごい若手社員です。ここまでいくと、逆に褒めてあげたくなります。

 でも、上司はたまりませんね。

 成果主義が導入されていれば、先輩社員たちも数字を残さなくてはいけません。「上司は選べない」ですが、「部下も選べない」が、人手不足の慢性化している今の実情です。「運が悪かった」と、あきらめるしかないのでしょうか。

 若者の「自己愛の肥大化」は、ますます進行しています。だからか、「自分本位」にしか物事を考えられない若手社員が増えているようです。話として聞くだけならいいのですが、実際に非常識な新人を持ったときのストレスは、尋常ではありません。夢に出てきてうなされることもあれば、髪の毛が抜けたり、白髪になったりすることさえあります。

 そんな状況を危惧して、各企業では具体的な対策が始まっています。新入社員研修の期間を大幅に増やしています。以前一ヶ月だったものを、六ヶ月にまで伸ばした企業も出てきています。これまでは、社会人としてのマナーと業務に必要な最低限の知識を身につけることが研修の目的でした。現在は、社会人としてというより「人としてのマナー」を徹底的に叩き込むことが主眼なのです。

「コストもかかるし新人研修は一週間程度にして後は、OJTで鍛えよう」

という発想は、過去のものになりつつあります。

 若者たちにすれば「馬鹿にするな」と怒りたくなる気持ちもわかりますが、それだけのコストと期間をかけてじっくり育ててもらえることを考えると、とても恵まれた環境だともいえます。

非常識な新人に対する考え方

 さて、上司は、非常識な新人をどう解釈すればいいのでしょうか。

 彼ら彼女らは「自分が傷つけられる」ことを最も恐れています。

POINT
 自分が傷つくことを回避するために、相手を見下したり、傲慢な態度をとったり、やけに打たれ弱かったり、空気が読めない行動をしたり、メールでばかりコミュニケーションをしたりするのです。

 大人であるあなたから見て不可解な行動は、本人がまったく自覚できずに無意識でそうしています。といよりも、自分を守るために、そうすることでしか生きられないのです。

だから、OJTがすぐに始まってしまうのであれば、小さな成功体験を積めるようお膳立てし、結果が出たらその度に必ずほめ、しっかりと自己承認できるように、時間をかけて心を育てていくしかありません。

 ただし、我慢の限界を越えたら辞めてしまうことを覚悟の上で「思いきって叱る」という選択肢は、常に用意しておいてください。これは大事です。潜在的に「叱ってほしい」という願望を抱いているケースは珍しくありません。「叱ってくれなかった」と辞めていく新人もいるのです。

 「そこまでしなくてはいけないのでしょうか」と聞かれたら、「おつらいですね。でも、そこまでしなくちゃいけないのでしょうね」と、私はあなたに共感し顔をしかめるしかありません。

 あまりにも非常識な部下をなんとかしたいのであれば、マナーや仕事のレベルアップが主眼の研修ではなく、無意識の領域を扱えるカウンセラーの出番であることを書き記しておきます。

 そんな非常識な新人のために職場が混乱し、あなた自身も過度のストレスにさらされ大変な毎日を送っているかもしれませんね。

 ただ、彼ら彼女たちも「時代の犠牲者」なのです。そうなりたくて、なったわけではないのです。この難しい時代を生きて抜いていくために、心をそう変容させて生きてくるしかなかったのです。一概に若者を責めることはできません。これは私からのわがままなお願いになりますが、ですので、誰かがしっかりと育ててあげなくてはいけないと思うのです。

 「非常識な新人」がすぐに会社を辞めてしまうと、次から次へと転職を繰り返す「ジョブ.ホッパー」になりがちです。生活は安定せずワーキング・プア状態に陥り、世の中を恨んでばかりいるような人間になってしまいます。

 そういった若者が増えていくことは、やがてこの日本を暗い国にしてしまうことでしょう。

 上司であるあなたにとっては、しばらくつらい時期が続くかもしれませんが、若者の未来を救うつもりで、なんとか気長に根気よく取り組んでみてください。

(著:松山 淳)

上司の自問自答
1. 私は、非常識な新人はすぐにクビにすべきだと考えてはいないだろうか。

2. 私は、非常識な新人にも同情すべき点があることを理解できているだろうか。

3. 私は、非常識な新人を思い切って叱る覚悟があるだろうか。


『「上司」という仕事のつとめ方』
(著:松山淳 実務教育出版)
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